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税抜きだと3,000円未満になる商品はクーリングオフできる?

訪問販売や電話勧誘販売で商品や権利(エステの利用権など)、役務(工事等のサービスなど)を購入した場合には、契約書(又は申込書)を受け取ってから8日が経過するまでの間であればその契約を無条件に一方的に解除することが可能です(特定商取引法第9条、特定商取引法第24条)。

▶ 詳細は→ 訪問販売・電話勧誘販売による契約をクーリングオフする方法

いわゆるクーリングオフと呼ばれる制度ですが、これには例外があり、商品等の価格が3,000円に満たない場合は、たとえクーリングオフの要件を満たしていても、クーリングオフの制度を利用して契約を解除することができないことになっています(特定商取引法第26条第4項3号、特定商取引法施行令第7条)。

【特定商取引法第26条第4項】

第9条及び第24条の規定は、訪問販売又は電話勧誘販売に該当する販売又は役務の提供が次の場合に該当する場合における当該販売又は役務の提供については、適用しない。
 1号~2号 (省略)
 3号 第5条第2項又は第19条第2項に規定する場合において、当該売買契約に係る商品若しくは指定権利の代金又は当該役務提供契約に係る役務の対価の総額が政令で定める金額に満たないとき。

【特定商取引法施行令第7条】

法第26条第4項第3号の政令で定める金額は、三千円とする。

ところで、ここで問題となるのが、商品の価格自体は3,000円に満たないものの、消費税を含めれば3,000円を超えるような場合です。

例えば、税抜き価格が2,900円である商品を訪問販売で購入した場合には、一見するとこの特定商取引法第26条第4項の規定に該当することになり、クーリングオフの適用除外を受けてしまう(クーリングオフできなくなる)ように思えますが、消費税を含めた場合には3,132円となり、3,000円を超えることになるためクーリングオフの適用除外には当たらない(クーリングオフできる)と考えることも可能です。

このように、税抜きでは3,000円に満たないものの消費税を含めれば3,000円を超える価格の商品・権利・役務についてはクーリングオフの対象となるのでしょうか?

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消費税を含めた価格が3,000円を超えればクーリングオフの対象となる

前述したように、例えば税抜き価格が2,900円である商品を訪問販売で購入した場合には、価格が3,000円に満たないため特定商取引法第26条第4項で規定されたクーリングオフの適用除外に該当するのではないかと考えられます。

しかしこの場合であっても消費税を含めると3,132円となりますから、3,000円を超えることになるためクーリングオフの適用除外には当たらない(クーリングオフできる)と考える余地もあるので、クーリングオフの適用除外が消費税も含めた価格で判断されるのかという点が問題になります。

この点、消費税の納税義務者は商品を販売して代金を受け取る業者(この場合は訪問販売業者)であって、購入者はその商品等の価格に消費税分を含めた金額の金銭を事業主に交付していることになります。

そのため、購入者(消費者)が業者に支払っている商品等の「対価の総額」は消費税も含めた商品等の価格といえますから、消費税を含めた”税込み価格”が3,000円を超えている場合は、たとえ税抜き価格が3,000円に満たない場合であっても特定商取引法第26条第4項の適用除外には該当せず、クーリングオフを利用して契約を解除することができると考えられます(※特定商取引法の理論と実務/補訂版(圓山茂夫著:民事法研究会)202頁参照)。

 

このように、税抜き価格が3,000円に満たない場合でも消費税を含めれば3,000円を超える場合には有効にクーリングオフが可能と考えられていますので、仮に業者から「この商品は3,000円未満だからクーリングオフできないんですよ」と言われた場合には、消費税を含めて3,000円を超えないかという点をチェックする必要があるでしょう。