不動産の購入をクーリングオフできない場合に契約を取消す方法


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土地や建物といった不動産を訪問販売もしくは電話勧誘販売で購入した場合、その説明書を受け取った日から8日が経過するまでの間であればその契約を無条件に一方的に解除(解約)することが可能です(宅地建物取引業法の第37条の2)。

▶ 詳細はこちら→ 不動産(土地や建物)の売買契約をクーリングオフする方法

しかし、この不動産のクーリングオフ制度は業者からクーリングオフに関して説明する内容が記載された書面(説明書)を受け取った日から8日が経過が経過するまでの間に契約解除通知書(クーリングオフ通知書)を発送することが求められますから、仮にその8日という期間を経過してしまった場合には、このクーリングオフ以外の方法を用いて対処する必要が生じます。

また、このクーリングオフによる契約の解除ができるのは、”訪問販売”または”電話勧誘販売”で不動産を購入した場合に限られますので、それ以外の態様で購入した場合(不動産業者の営業所で契約した場合など)にもこれ以外の方法で対処する必要が求められます。

そこで今回は、不動産(土地・建物・投資用マンション等も含む)の契約をクーリングオフ(契約解除)できない場合にはどのような方法を用いて契約を取消すことができるのか、という点について考えてみることにいたしましょう。

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手付金を放棄して契約を解除する場合

土地や建物(投資用マンション等も含む)の契約において、契約の際に業者に対して手付金を支払っている場合には、業者が契約の履行に着手するまでの間であれば、その手付金を放棄することによって契約を無条件に解除することが可能です(宅地建物取引業法の第39条)。

【宅地建物取引業法第39条】

第1項 宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二をこえる額の手附を受領することができない。
第2項 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
第3項 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

不動産の売主である業者が「履行に着手」したか否かの判断はケースバイケースで判断されるため一概には説明できませんが、例えば物件の改修工事に着手していたり、前所有者の抵当権の抹消登記手続きを行っているような場合は「履行に着手」したと考えられるため、そのような行為がなされる前であれば手付金を放棄することで自由に契約を解除することが可能と考えられます。

この場合、業者に支払っている手付金は戻ってこなくなりますが、損害を最小限に抑える形で不必要な物件を購入しなければならない義務から逃れることができることができますから、どうしても契約を白紙に戻したい場合にはこの”手付解除”を検討することも必要でしょう。

業者の勧誘(説明)に「不実告知」または「事実不告知」があったことを理由に契約を取消す場合

不動産を購入した場合に限らず、その契約の際の業者の説明に「不実告知」や「事実不告知」などウソや虚偽の説明があったためその事実があるものと(またはその事実がないものと)誤認して契約を結んでしまったような場合にはその契約を取消すことができます(消費者契約法第4条第1項1号及び同条第2項)。

【消費者契約法第4条】

第1項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
 1号 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
 2号 (省略)。
第2項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
第3項 (省略)
第4項 第1項第1号及び第2項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。
 1号 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容
 2号 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

「重要事項について事実と異なることを告げること」とは、簡単に言うと業者の説明に”嘘”がある場合を言います。

例えば、土地を購入する契約の際に、その購入の目的となっている土地が崖に接近しているため特別な工事を施さないと住宅の建設ができない状況にあるにもかかわらず、販売業者が「近くに崖がありますが、この土地なら大丈夫です」という説明を行うような場合は「重要事項について事実と異なることを告げること」に該当し、その契約を取消すこともできると考えられます(注1)。

(注1:逐条解説消費者契約法/補訂版(内閣府国民生活局消費者企画課編:商事法務)69頁)

また、「重要事項について消費者の利益となる旨を告げ、かつ、消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったこと」とは、簡単に言うと業者が意図的に不都合な事実を隠していた場合を言います。

例えば、投資用マンションの購入の際に、数年内に隣接する土地に高層マンションが建設され日当たりが悪くなり資産的な価値が実質的に目減りすることが確実であるにもかかわらず、「この物件は日当たりが良いから賃貸マンションとしての価値は高いです」などと投資物件として利益があるような説明で業者から勧誘を受けたような場合は「重要事項について消費者の利益となる旨を告げ、かつ、消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったこと」に該当し、その契約を取消すことができると考えられます。

以上のように、業者側の説明(勧誘)に不実告知や事実不告知があった場合には、クーリングオフによる契約の”解除”ができない場合でも契約を”取消す”ことができる場合がありますので、業者からの勧誘の際にそのような説明がなかったか確認してみることも必要でしょう。

※なお、不実告知や事実不告知を行った宅建業者(不動産業者)は営業停止など行政処分の対象となりますので、そのような悪質業者に対して行政処分を与えたい場合にはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

「断定的な判断の提供」があったことを理由に契約を取消す場合

業者側の説明に「断定的な判断の提供」があったときにも、その契約を取消すことが可能です(消費者契約法第4条第1項)。

【消費者契約法第4条】

第1項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
1号 (省略)
2号 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

「断定的な判断の提供」とは、本来は将来的に不確定な事実に関して「絶対に〇〇です」とか「必ず〇〇になります」など”絶対”や”必ず”といった断定的な言い回しで確定的な判断を与えるような説明をする場合が代表的です。

もっとも、必ずしも「絶対」とか「必ず」といった表現がある必要はなく、「絶対」「必ず」「100%」といった言葉を使用してなくても、業者側の言い回しが将来不確定な事実に関して一定の評価を断定するような表現で、かつ、消費者が誤解それによって誤解に陥っているような場合は全て「断定的な判断の提供」に該当することになります。

たとえば投資用マンションの販売で業者が「この物件なら年間〇%以上の利回りは確実に実現できます」などと将来的に不確定であるはず「利益」について断定する場合などが代表的です。

このような断定的な言い回しは、本来不確定な将来の事象について誤った判断を消費者に与えることとなるため、そのような断定的な判断の提供によって勧誘することが禁じられているのです。

そのため、仮に訪問販売や電話勧誘販売で不動産を購入した場合においてクーリングオフ期間の8日間が経過してしまった場合には、業者側の説明にこのような「断定的な判断の提供」がなかったかを今一度確認してみる必要があるでしょう。

※なお、不動産の取引に際して利益が生じることが確実であると誤解させるような勧誘を行った宅建業者(不動産業者)は営業停止など行政処分の対象となりますので、そのような悪質業者に対して行政処分を与えたい場合にはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

「帰ってください」と言ったのに業者が帰らなかったことを理由に契約を取消す場合

消費者が事業者との間で結ぶ契約においては、業者が消費者契約の勧誘する場面において、消費者側が退去するよう求めているにもかかわらず退去しないで勧誘を継続し契約させたような事実がある場合には、消費者はその契約を取り消すことが可能です(消費者契約法第4条第3項1号)。

【消費者契約法第4条】

第1項~2項(省略)
第3項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
1号 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
2号 (省略)

「退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しない」とは、例えば訪問販売に訪れた業者の販売員に「購入する気はないので帰ってください」と告知したにもかかわらず、業者がそのまま玄関先などに居座り続けて勧誘を継続する場合などをいいます。

このように消費者側の「帰ってほしい」という意思に反して勧誘を続けることは消費者を困惑させて(あるいは恐怖を感じさせて)契約を無理強いすることになることから消費者を保護するために契約の取消を認めているのです。

そのため、仮に不動産のクーリングオフに関する説明を受け、かつ、その契約の説明書を受領してから8日が経過したためクーリングオフできない場合には、このように業者の販売員が退去を求めても退去しなかった事実がなかったかという点をよく確認してみる必要があります。

仮に業者が勧誘の際に退去を求めても退去しなかったような事実がある場合には、この消費者契約法の規定に基づいて契約を取消すことも考えてみるべきでしょう。

※なお、退去を求めても退去しなかったり、購入しない旨を告げているにもかかわらず執拗に勧誘を継続した宅建業者(不動産業者)は営業停止など行政処分の対象となりますので、そのような悪質業者に対して行政処分を与えたい場合にはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

「詐欺」「脅迫」があった場合も契約を取消すことができる

民法では、詐欺による意思表示は取り消すことができると規定されています。

【民法第96条】

第1項 詐欺または強迫による意思表示は、取り消すことができる。
第2項~第3項(省略)

この点、訪問販売や電話勧誘販売の契約において消費者を騙すような説明がなされていた場合には”詐欺”と判断できる場合もありますから、業者の勧誘行為に消費者を騙すような説明がなされていなかったか確認してみるのも良いでしょう。

※なお、「威迫」に該当するような言動を用いて勧誘を行った宅建業者(不動産業者)は営業停止など行政処分の対象となりますので、そのような悪質業者に対して行政処分を与えたい場合にはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

※宅建業法にいう「威迫」と一般に言う「脅迫」は若干意味合いが異なります。

▶ 宅建業者の勧誘で禁止される”威迫”と一般的な脅迫の違い

また、民法上の錯誤によって契約の無効を主張できないかという点も検討する必要があります(民法第95条)。

【民法第95条】

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。(但書省略)

この”錯誤”と言う言葉についてはこのサイトで説明するのが難しいですが、簡単に言うと、契約を結ぶ重要部分について本人が気づかないような勘違いをし、その勘違いをもとに商品を購入してしまった場合などのことを言います。

錯誤はかなり難解な判断が必要になるので具体的にどのような場合が”錯誤”に当たるのか説明することはいたしませんが、前述した特定商取引法や消費者契約法、民法の規定で契約の解除や取消ができないような場合には、この錯誤ができないか検討する場合もあるかもしれません。


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