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モニター商法・内職商法等の契約を取り消す際の不実告知の具体例

モニター商法や内職商法、在宅ワーク商法、求人広告商法に代表される「この仕事をするには〇〇を購入する必要があります」とか「この仕事の紹介を受けるには登録料(又は手数料・保証料など)の支払いが必要となります」などと告知して消費者に高額な商品を売りつけたり高額な登録料等の支払いを求める悪質商法があります。

このような態様での勧誘は”業務提供誘引販売取引”と呼ばれ、特定商取引法という法律によって業者の行為が厳しく制限されています。

具体的には、このように「この仕事をするには〇〇を購入する必要があります」とか「この仕事の紹介を受けるには登録料(又は手数料・保証料など)の支払いが必要となります」などと勧誘されて商品を購入したり登録料(その他保証料や手数料)を支払ったような場合には、その契約書を受け取ってから20日以内であればクーリングオフによって消費者の側から一方的に契約を解除することが可能とされています。

なお、どのような販売方法が業務提供誘引販売取引に該当するかという点について(モニター商法、内職商法、在宅ワーク商法、求人広告商法などの具体例)はこちらのページを
▶ モニター商法・内職商法など業務提供誘因販売取引の要件と具体例

また、上記のような業務提供誘引販売取引の契約をクーリングオフする場合の具体的な方法についてはこちらのページを参考にしてください。
▶ 仕事紹介の条件として購入させられた商品の契約を解除する方法
▶ 求人・内職に応募して登録料を取られた場合に契約を解除する方法
▶ モニター商法における商品の購入契約をクーリングオフする方法

しかし、このクーリングオフの手続きは一定の要件(たとえば20日以内など)が定められていますので、その要件を満たさない場合はクーリングオフとは別の方法で契約の取消ができないか考える必要があります。

この点、特定商取引法ではクーリングオフの制度とは別に、業者側の勧誘に”嘘”などがある場合などには契約を取り消すことができるとする制度が設けられていますから、業者側の説明に”嘘”などがないかチェックして契約の取消ができないか検討してみることは非常に有効といえるでしょう。

そこで今回は、内職商法や在宅ワーク商法、求人広告商法などといった”業務提供誘引販売取引”において業者側にどのような”嘘”があれば契約を取り消すことができるのかという点について考えてみることにいたしましょう。

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業務提供誘引販売取引における不実告知・事実不告知を原因とした取消制度とは?

モニター商法や内職商法、在宅ワーク商法、求人広告商法に代表される業務提供誘引販売取引においては、業者側が求人や仕事の紹介(あっせん)の申込みを行った応募者(消費者)に対して、契約の際に告知すべき事項について「故意に事実を告げ」なかったり「不実のことを告げ」たりした場合には、応募者(消費者)はその商品の購入や登録料(その他保証料や手数料)の支払いに関する契約を取り消すことができます(特定商取引法第58条の2)。

【特定商取引法第58条の2】

第1項 相手方は、業務提供誘引販売業を行う者がその業務提供誘引販売業に係る業務提供誘引販売契約の締結について勧誘をするに際し次の各号に掲げる行為をしたことにより、当該各号に定める誤認をし、それによって当該業務提供誘引販売契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一  第52条第1項の規定に違反して不実のことを告げる行為 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二  第52条第1項の規定に違反して故意に事実を告げない行為 当該事実が存在しないとの誤認
第2項 (省略)  

では、この「不実のことを告げる行為」や「故意に事実を告げない行為」とは具体的にどのような行為を言うのでしょうか。

以下にその具体的な事例を挙げてみましょう。

(1)業者が勧誘時に告知しなければならない事項

前述したように、業務提供誘引販売取引業者が契約の際に告知すべき事項について「故意に事実を告げ」なかったり「不実のことを告げる行為」があった場合には、応募者(消費者)はその契約を取り消すことができます。

では、この場合、業者はどのような事項について「故意に事実を告げないこと」や「不実のことを告げること」が禁じられているのでしょうか?

この点、その事項は特定商取引法の第52条1項と特定商取引法施行規則の第39条の3に列記されていますので、その列挙されている事項について「嘘」や「真実と異なる告知」があると契約取消が認められるということになります(特定商取引法第52条1項、特定商取引法施行規則第39条の3)。

なお、特定商取引法の第52条1項および特定商取引法施行規則の第39条の3に規定されている告知事項は次に挙げる16事項となります。

  1. 商品の種類
  2. 商品の性能
  3. 商品の品質
  4. 施設を利用する権利
  5. 役務の提供を受ける権利・種類
  6. 上記①~⑤の内容
  7. 商品の効能
  8. 商品の商標
  9. 商品の製造者名
  10. 商品の販売数量
  11. 商品の必要数量
  12. 役務または権利に係る役務の効果
  13. 業務提供誘引販売取引に伴う特定負担に関する事項
  14. 契約解除(クーリングオフなど)に関する事項
  15. 業務提供利益に関する事項
  16. その他消費者の判断に影響を及ぼす重要な事項

(2)「不実のことを告げる行為」の具体例

前述したように、内職商法やモニター商法などの業務提供誘引販売取引において業者側が”不実のこと”を告げた場合にはその契約は取り消すことができます。

この場合の「不実のことを告げる行為」というのは”真実とは異なることを告知すること”と言い換えることもできますが、業者側がその告知している事実について事実と異なることを認識している必要はなく、告知している内容が客観的に事実と異なっていれば「不実のことを告げ」たということになります。

たとえば、在宅ワーク商法で業者が資格取得のための教材を販売している場合に、実際にはその教材は教育訓練給付制度の対象にはならないにもかかわらず、その業者が「この教材は教育訓練給付制度の対象になっている」と信じている状態で「この教材は教育訓練給付制度の対象となるから申請すれば受講料の一部が支給されます」と告知して教材を販売したような場合は、業者側に”嘘”を告知している認識はありませんが、”教育訓練給付制度の対象とはならない”という客観的事実に反する告知をして勧誘していることになりますので「不実のことを告げ」たことになり、その契約は前述した特定商取引法第58条の2の規定によって取り消すことができることになります。

なお、この「不実のことを告げる行為」場合の具体例は次のようなものが代表的なものとして挙げられます。

「不実のことを告げる行為」に該当する具体的事例(1)の番号
(ア)例えば、羽毛布団のモニター商法で、”綿入り布団”を”羽毛布団”と告知して販売する場合①②③⑦
(イ)例えば、漢方薬のモニター商法で、科学的な検証が出ていないのに「この漢方薬は抗がん作用がある」と告知してモニター契約を迫る場合②③⑦
(ウ)例えば、「うちの事務所はファッション誌の〇〇と専属契約している」などと嘘の告知をしてモデルを募集する場合⑫⑯
(エ)例えば、実際は100個購入しなければ仕事を紹介しないにも関わらず「10個買えば仕事を紹介する」と告知する内職商法や在宅ワーク商法など⑩⑪
(オ)例えば、業務に必要な1万円の商品購入の他に、業務の提供を受けるためには事実上有料の講習を受講しなければならないにもかかわらず、「この在宅ワークに必要な負担は1万円の商品購入のみで、他には一切ない。」と告げること(通達)
(カ)内職商法やモニター商法などで「この取引はクーリングオフできません」と嘘の告知をして商品を販売したり登録料等を請求する場合
(キ)例えば、最低月収を保証するわけでもないのに「この仕事なら月〇万円は確実に稼げます」などと告知して内職や在宅ワーク参加者を募集する場合
(ク)例えば、有名人の写真や画像を無断で広告に使用している場合(消費者は「あの芸能人が広告に出ているなら大丈夫」と誤認してしまうから)
(ケ)例えば、「利用者の声」として架空の利用者の体験談を記載している場合(消費者は他の利用者が現実に利用していると誤認してしまうから)

※業務提供誘引販売取引に該当するためには上記のような態様に加えて商品を販売したり登録料(その他保証料や手数料)を請求していることが前提となります。

 

(3)「故意に事実を告げない行為」の具体例

前述したように、内職商法やモニター商法などの業務提供誘引販売取引において業者側「故意に事実を告げない行為」が遭った場合にもその契約は取り消すことができます。

この「故意に事実を告げない行為」としては、例えば以下のような場合が該当すると考えられます。

(イ)例えば、ゴルフ場の会員権のモニター商法で、18ホールのゴルフ場の会員権を販売する際に会員が1万人もいることを告げない場合
(ロ)例えば、リゾートクラブの会員権のモニター商法で、リゾートクラブ会員権について一室当たり換算会員数が100人もいることを告げない場合
(ハ)例えば施設の使用に関するモニター商法で、実質的には会員数が当該施設の利用を著しく困難にする程度に存在しているにもかかわらずこれを告げない場合
(二)例えば、床下換気扇のモニター商法で、家の広さ等から考えて3台で十分であることを告げずに、10台の床下換気扇を購入させる場合

※上記の具体例は経済産業省の通達の「第2章第2節(訪問販売)関係4(2)」を元に作成しています。

 

不実告知・事実不告知で取り消す場合の通知書の書き方

なお、上記のように業務提供誘引販売取引に関する契約を不実告知や事実不告知で取り消す場合の取消通知書の記載例はこちらのページを参考にしてください。

▶ 業務提供誘引販売取引契約の不実告知による取消通知書の記載例

▶ 業務提供誘引販売取引契約の事実不告知による取消通知書の記載例

 

不実告知または事実不告知以外の理由で契約を”取り消す”場合

このページでは業務提供誘引販売取引における「不実告知」と「事実不告知」を理由とした取り消しについて説明しましたが、これ以外の取り消し理由についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 内職商法やモニター商法による契約を”取り消す”方法とは?