訪問販売等で禁止される「老人等の判断力不足に乗じて」の具体例


24e213cb8256d525a1d4da217ccdd73f_s

訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスにより、商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステやゴルフクラブの利用権など)の勧誘を行う業者は、老人や未成年者、精神疾患のある人などに対して、その判断力の不足に乗じて契約を締結させてはならず、これに違反した業者は主務官庁による行政処分の対象となります(訪問販売等の場合→特定商取引法施行規則第7条2号、電話勧誘販売の場合→特定商取引法施行規則第23条2号)。

【特定商取引法第7条】

主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が(省略)次に掲げる行為をした場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる
 1号~3号(省略)
 4号 前3号に掲げるもののほか、訪問販売に関する行為であって、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの

【特定商取引法施行規則第7条】

 法第7条第4号の主務省令で定める行為は、次の各号に掲げるものとする。
 1号(省略)
 2号 老人その他の者の判断力の不足に乗じ、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結させること
 3号~7号(省略)

このような判断力の不足する人に対して無制限に契約を結ぶことを認めてしまうと、契約の内容を正確に理解しないまま不必要な契約を結ばされる結果となり、その利益を著しく損なうことになるからです。

しかし、法律の条文上は「老人その他の者の判断力の不足に乗じ」としか規定されていませんので、具体的にどのような人が「老人その他の者」として保護の対象となるのか、また、業者の具体的にどのような言動がその老人その他の者の「判断力に乗じ」ることになるのか判然とせず、具体的にどのような業者の言動があればその業者に行政処分を求めることができるのか、という点を明確に判断することができません。

そこで今回は、訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールス含む)や電話勧誘販売の業者の勧誘等に具体的にどのような言動があれば「老人その他の者の判断力不足に乗じて契約をさせた」と判断できるのか、という点について考えてみることにいたしましょう。

スポンサーリンク

「老人その他の者の判断力不足に乗じて契約をさせる」場合の具体例

「老人その他の者」の具体例

この「老人その他の者」にどのような人が該当するかは一概には言えませんが、経済産業省の通達では、高齢者や未成年者、精神疾患のある人、認知症の人、知的障害のある人、財産管理能力に問題のある人(成年後見人・被保佐人・被補助人)などが老人その他の者」の具体例として挙げられていますので、このような人に対してその判断力の不足に乗じて契約をさせた場合には、その業者は法令違反として行政処分の対象となると考えられます(※経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日13~14頁)。

【特定商取引法施行規則第7条2号及び同23条第2号の「老人その他の者」の具体例】
高齢者(※年金受給年齢以上の人など)
未成年者
認知症の人(※若年性認知症も含む)
精神疾患のある人
知的障害のある人
財産管理能力に支障のある人(被成年後見人・被保佐人・被補助人)
①~⑥に準じるような判断力に支障のある人

なお、上記の①の高齢者については、具体的に何歳以上が「老人その他の者」に含まれるのかは判然としませんが、一般的な感覚からすれば年金受給年齢(60~65歳以上)は高齢者と考えて差し支えないのではないかと思います(※ただしケースバイケースで異なってくる可能性はあります)。

「判断力の不足に乗じて」の具体例

また、前述した経済産業省の通達では「判断力の不足に乗じて契約をさせる」行為とは、「通常の判断力があれば締結しないような、当該者にとって利益を害するおそれのある契約」をさせる行為であると解釈しています(※経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日13~14頁)。

そのため、例えば訪問販売業者等が、「認知症の人」や「知的障害のある人」に商品を売り付けた場合には、この「老人その他の者の判断力の不足に乗じ契約を締結させた場合」に該当し法律違反として行政処分の対象となります。

また、認知症や知的障害等がなくても、一人暮らし(又は老人だけの世帯)の老人の家に訪問し(又は電話を掛け)、高額で不必要な商品を売り付けたり、高額なリフォーム工事やシロアリ駆除の契約をさせるなどした場合には、その高齢者は契約の内容を理解していたとしても「通常の判断力があれば締結しないような当該者にとって利益を害するおそれのある契約」をしたと考えることができますから、この場合にもその勧誘を行った業者は法律違反として行政処分の対象になると思われます。

その他にも、例えば田舎の高校を卒業して上京してきたばかりの18歳の未成年者に路上で声をかけ(キャッチセールス)、高卒の初任給で買えないような高額な商品(エステの会員権など)を売り付ける行為は、「通常の判断力があれば締結しないような当該者にとって利益を害するおそれのある契約」と判断できますから、「老人その他の者の判断力の不足に乗じ契約を締結させた場合」に該当し、そのような勧誘を行ったキャッチセールスの業者は法律違反として行政処分の対象となると考えられます。

なお、この点の解釈方法や具体例については、経済産業省の通達に記載されていますので念のため引用しておきますので参考にしてください。

「老人その他の者」には、老人、未成年者、精神障害者、知的障害者及び認知障害が認められる者、成年被後見人、被保佐人、被補助人等が一般的には該当し得るが、これらの者に対し、通常の判断力があれば締結しないような、当該者にとって利益を害するおそれのある契約を締結させることは本号に当たる。
例えば、重度の認知障害が発生している者に対し、住宅リフォーム契約を強いる行為は、本号に該当する。また、一人暮らしの高齢者に対し、新築代金に匹敵するあるいはこれを上回るような高額のリフォーム契約を締結させることは、本号に該当する可能性が高い。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日13~14頁より引用)

老人その他の者の判断力不足に乗じて契約をさせられた場合の対処法

前述したように、老人その他の者の判断力不足に乗じて契約をさせる行為は法律違反となりますから、訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールス含む)や電話勧誘販売を行う業者からそのような契約を結ばされた場合には、監督官庁である行政機関に違法行為の申出をすることによってその業者に行政処分を与えてもらうことが可能です。

なお、この行政処分を与えてもらう場合には、申出書を提出して行うことが必要ですが、その場合の申出書の記載例はこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 老人等の判断力不足に乗じる業者の行政処分申出書の記載例


スポンサーリンク

フォローする