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アイドルに応募して登録料やレッスン料を請求された場合の対処法

空前のアイドルやモデルブームが到来している現在の日本では、テレビ等で活躍するアイドル(又はモデル)から小規模の劇場やライブ会場さらにはネット上等で活動する地下アイドル(読者モデル等)までさまざまな「アイドル」や「モデル」が存在しているようです。

そのため、潜在的にアイドルやモデルになりたいと考えている少女たちは数多く存在していると考えられますが、当然そのようなアイドルやモデルを希望する少女たちを狙った悪徳業者も増えてしまうことになります。

アイドルやモデルになりたいと思う少女(少年)達がプロダクションのオーディション等の募集に応募したところ、高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料などを請求されて高額な契約を半ば強制的に結ばされてしまうといった被害が後を絶たないのはそのような背景があるからといえますが、このようなアイドルやモデルに応募してきた人に高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料などを求める契約は、法律上「業務提供誘引販売取引」という契約に分類され、訪問販売などの悪質商法と同様にその契約を一方的にクーリングオフ(契約の解除・解約)することが可能です。

そこで今回は、アイドルやモデルのオーディション等に応募してプロダクションや芸能事務所との間で高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等の契約をしてしまった場合に、その契約を一方的に解除する方法について解説することにいたしましょう。

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アイドルやモデルの仕事を紹介してもらう契約の本質は「求人広告商法(内職商法)」と同じ

前述したように、アイドルやモデルになりたいと応募してきた人に高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料などを求める契約は法律上「業務提供誘引販売取引」としてその応募者の方から一方的にクーリングオフ(契約の解除・解約)することができますが、何故それが可能なのかというと、このような契約が悪徳商法などの一種として知られる「求人広告商法(内職商法)」などと同様の契約形態といえるからです。

「求人広告商法」は「内職商法」などが代表的なものとして有名ですが、たとえば「うちの会社に登録してくれれば内職を紹介しますよ」と内職を希望する人を募集し、その募集に応募してきた人に対して「内職の紹介を受けるには登録料を支払ってもらわないといけませんよ」とか「内職を紹介するためには〇〇を購入してもらう必要がありますよ」とか「内職を紹介してもらいたいなら当社が実施する有料講習を受講して試験に合格してもらわなければなりませんよ」などといって高額な商品等を売り付けるような商法のことをいいます。

このような契約では、内職に応募した内職希望者は「内職を紹介してもらえる」と思って応募しただけなのに、いわば不意打ち的に「商品」や「講習費用」「登録料」などを請求されることになりますので、その状況は自宅で不意打ち的に商品の購入を迫られる「訪問販売」などと同様に考えられますから、そのような「商品」や「講習費用」「登録料」などの契約を迫られた消費者(内職商法の場合は内職希望者)を保護する必要があるため、クーリングオフの制度を認めて消費者側を保護する必要があるのです。

この点、アイドルやモデルになりたいと希望する人を募集してプロダクションや芸能事務所が高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料などを求める場合も、アイドルやモデルになりたいと思って応募した人は単に「アイドルやモデルになれる」とか「アイドルやモデルの仕事を紹介してもらえる」と考えて応募しているにもかかわらず、いわば不意打ち的に高額な「登録料」や「レッスン料」、「プロフィール作成料」などの契約を求められることになるのですから、その本質は「求人広告商法(内職商法)」や「訪問販売」と同じであり、その不意打ち的に高額な契約を迫られたアイドルやモデル希望者を保護する必要があります。

そのため、アイドルやモデルになりたいと希望する人が応募したプロダクションや芸能事務所から高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料を請求されそれを承諾する契約をしたとしても、その契約は「業務提供誘引販売」としてクーリングオフの制度を利用して一方的に解約(解除)することができるということになるのです。

なお、この「業務提供誘引販売」の法律上の考え方等についてはこちらのページで詳しく解説していますので、その内容をより深く知りたいという方はこちらのページを参考にしてください。

▶ 求人・内職に応募して登録料を取られた場合に契約を解除する方法

▶ 仕事紹介の条件として購入させられた商品の契約を解除する方法

▶ モニター商法・内職商法など業務提供誘因販売取引の要件と具体例

 

アイドルやモデル希望者がプロダクションや芸能事務所から高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等を請求された場合の対処法

(1)そのようなプロダクションや芸能事務所とは契約しないのが一番安全

前述したように、アイドルやモデルになりたいと希望する人が応募したプロダクションや芸能事務所から高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等を請求された場合であってもその契約は「業務提供誘引販売」と判断されクーリングオフによって一方的に解除(解約)することが可能ですが、そのように登録料やレッスン料、プロフィール作成料等の名目で高額な金銭の支払いを要求するようなプロダクションや芸能事務所は100%悪質業者ということができますから、そのようなプロダクションや芸能事務所とは契約(登録)しないのが一番安全です。

そのようなプロダクションや芸能事務所と契約したとしても実際にアイドルやモデルの仕事を紹介してもらえない場合がほとんどですし、仮に仕事を紹介されたとしても、それは自分が希望しているアイドルやモデルの仕事ではなく、露出度の高いグラビアやいわゆる「着エロ」などのわいせつ性の高いものである可能性が高いと考えられますので、いわゆる「普通のアイドル・モデル」の仕事はできないと思った方が良いです。

また、そのプロダクションや芸能事務所が悪質な業者であった場合、最悪の場合はAVに強制的に出演させられたり、風俗店に派遣させられたりするなどの被害を受ける可能性も否定できませんから、そのようなプロダクションや芸能事務所とは契約をしないのが一番だと思います。

(2)契約をクーリングオフする場合

前述したように、アイドルやモデルになりたいと希望する人が応募したプロダクションや芸能事務所との間で高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等の契約をした場合、その契約は「業務提供誘引販売」としてクーリングオフの対象となります(特定商取引法第58条1項)。

具体的なクーリングの方法は単に「クーリングオフ通知書(契約解除通知書)」をプロダクションや芸能事務所に対して送付することにより「クーリングオフ(契約解除・解約)」の意思表示をするだけで足りますが、後で相手方から「通知書は届いていない」と反論されないように内容証明郵便を利用して通知する方が好ましいといえます。

なお、この場合に業者側に送付する通知書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 登録料やレッスン料等に関するクーリングオフ通知書の記載例

ただし、このクーリングオフは契約書などの「書面を受領した日」から20日以内に送付する必要がありますので注意してください(※プロダクションや芸能事務所から契約書を交付されていない場合には20日以上経過してもクーリングオフすることが出来ます)。

なお、このクーリングオフの細かい手順についてはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。

▶ 求人・内職に応募して登録料を取られた場合に契約を解除する方法

 

(3)未成年者が契約している場合

前述したように、アイドルやモデルになりたいと希望する人が応募したプロダクションや芸能事務所との間で高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等の契約をした場合、その契約は「業務提供誘引販売」としてクーリングオフの対象となりますので(特定商取引法第58条1項)、この特定商取引法の第58条の規定に基づいてクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付することにより一方的にその契約を解除(解約)することができます。

もっとも、その契約をしたアイドルやモデルになりたいと希望する人が「未成年者」であった場合には、そのクーリングオフで契約を解除(解約)する以外にも、「未成年者の法律行為の取消権」を利用して「契約を取消す」ことも可能です。

プロダクションや芸能事務所との間で高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等を支払るという契約を結ぶ行為は法律上は「法律行為」と呼ばれますが、この「法律行為」が自由にできるのは成人(20歳)になった後に限られており、未成年者が「法律行為」を行う場合には必ず保護者(親など※親がいない場合には親権者などの法定代理人)の「同意」が必要と法律で定められています(民法第5条)。

【民法第5条】

第1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
第2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
第3項(省略)

そして、仮に未成年者が親(法定代理人)の同意を得ずに「法律行為」を行った場合には、その「法律行為」は「法定代理人の同意を得ずに行われた法律行為」として後から一方的に「取り消す」ことが可能ですから、プロダクションや芸能事務所との間で高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等を支払うという契約をした当時、自分が「未成年者」であった場合に親の同意をもらっていなかった場合には、その契約はその後で一方的に取り消すことが可能となります。

この点、アイドルやモデルになりたいと希望してプロダクションや芸能事務所と契約しトラブルになるケースのほとんどは親の同意を得ていないものと思われますから、未成年者がそのような契約をしている場合にはほとんどの場合にこの「未成年者の契約の取消」の制度を利用して取消ができるものと考えられます。

なお、この場合の取消はその親などの法定代理人などだけでなく未成年者本人が行うことも可能ですが(民法120条)、その契約をした未成年者が成年になった後(20歳の誕生日を迎えた後)5年を経過するか、その契約をした日から20年を経過した場合には取り消すことが出来なくなりますので注意してください(民法126条)。

ちなみに、このように未成年者の法律行為を理由に取り消す場合には、相手方に取消通知書を内容証明郵便で送付して取消の意思表示をするのが一般的ですが、その場合の通知書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 登録料やレッスン料等の契約を未成年を理由に取り消す場合の通知書

 

(4)クーリングオフによる解除や未成年者の契約を根拠に契約を取り消した場合の効果

以上のように、アイドルやモデルになりたいと希望する人が応募したプロダクションや芸能事務所との間で高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等の契約をした場合であっても、その契約はクーリングオフを利用して解除(解約)することもできますし、契約者が未成年だった場合には未成年者の法律行為として契約を取消すことが可能です。

この点、このクーリングオフや未成年者の取消を行った場合に具体的にどのような効果が発生するかというと、契約を解除ないしは取り消した後は当然その契約した登録料やレッスン料、プロフィール作成料等を支払わなければならない義務も消滅することになりますので、そのような高額な支払を拒否することが可能となります。

また、仮にその契約解除又は取り消しまでの期間にすでに支払っている金銭がある場合にはその支払った金銭の返還を求めることも可能となりますので、そのプロダクションや芸能事務所に対して「支払ったお金を返せ」と請求できることになります。

ときどき、地下アイドルなどが「学生の時にプロダクションに騙されて高額な登録料やレッスン料の契約をさせられて〇百万円の借金を背負わされたことがある」などという貧乏話がネットや週刊誌で披露されることがありますが、そのような契約は前述したようなクーリングオフや未成年者の法律行為を理由に契約の解除や取消ができますので、今からでもクーリングオフや取消を行えば「お金を返せ」と請求できることになります。

 

悪質なプロダクションや芸能事務所に対しては積極的に返還請求を行うことが必要

以上で説明したように、たとえアイドルやモデルになりたいと希望する人が応募したプロダクションや芸能事務所との間で高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等の契約をした場合であっても、その契約はクーリングオフを利用して解除(解約)することもできますし、契約者が未成年だった場合には未成年者の法律行為として契約を取消すことが可能です。

もっとも、このような事実は法律は複雑で一般の方にはあまり知られていませんし、特にアイドルやモデルになりたい人のほとんどは未成年者でしょうから、被害に遭ったとしてもこのような解決方法があることに気付かずに泣き寝入りして高額な借金を受け入れたり、親に内緒にしていることを負い目にして成人後も苦労して借金の返済のためにバイトを掛け持ちするような人が多いのが現状でしょう。

しかし、そのような悪質業者に言われるままに高額な高額な登録料やレッスン料、プロフィール作成料等を支払い、もしくクーリングオフや取消をしないままにしておけば、今後もその業者に騙されて高額な費用を請求される被害を受ける人は増え続けていくことになるでしょう。

そうであれば、このような被害に遭った人は積極的にクーリングオフで契約を解除したり未成年者の法律行為に基づく取消権を利用して契約を取消すなどし、支払ったお金がある場合には徹底的にその返還を業者に求めるべきでしょう。

前述したように、クーリングオフの場合は契約書を受け取った日から20日以内にすることが必要ですが、そのような契約をする悪質なプロダクションや芸能事務所は契約書自体を交付しない場合が多く交付してもその内容に不備があることがほとんどですから、「契約書を受け取った日」が到来していないことになり、契約から20日が経過した後でも理論上はいつまででも契約をクーリングオフすることが可能ですし、未成年者の取消の場合も20歳になってから5年を経過するまでであれば取消すことは可能です。

ですから、次の被害をなくすためにも、そのような被害に遭った人は積極的にクーリングオフや取消を行い、業者に対して積極的に責任を追及していくことが必要ではないかと思います。