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訪問販売等や電話勧誘で禁止される「威迫」の具体例

訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売によって商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステやゴルフクラブの利用権など)の勧誘を行う業者は、その勧誘に際して(又は顧客が契約を解除するに際して)「威迫」して顧客を「困惑」させることが禁じられています(訪問販売等の場合→特定商取引法第6条第3項、電話勧誘販売の場合→特定商取引法第21条第3項)。

【特定商取引法第6条第3項】

販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。

【特定商取引法第21条第3項】

販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。

業者が、このような「威迫」にあたる言動で勧誘をし又は顧客が契約を解除することを妨げて顧客を「困惑」させた場合(クーリングオフを妨げた場合)には、その業者は法律違反として行政処分の対象となります。

しかし、法律の条文上は単に「人を威迫して困惑させてはならない」と規定されているだけで、具体的にどのような言動を「威迫」といい、どのような顧客の反応を「困惑」というのか判然としません。

そこで今回は、訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売などの業者がどのような言動をとると「威迫」「困惑」と判断されるのか、言い換えればどのよう言動で勧誘を行った業者が法律違反として行政処分の対象となるのか、という点について考えてみることにいたしましょう。

※なお、土地や建物など不動産の売買や賃貸契約を勧誘する宅建業者(不動産業者)が威迫を行う場合についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 宅建業者の勧誘で禁止される”威迫”と一般的な脅迫の違い

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「人を威迫して困惑させてはならない」の判断基準

前述したように、訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売を行う業者は、その勧誘に際して人を「威迫」し「困惑」させてはなりません。

この場合、業者のどのような言動が「威迫」と判断され、顧客のどのような反応が「困惑」と判断されるかという点は明確でないため判然としませんが、一般的には「威迫」とは”脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為”をいい、「困惑」させるとは、相手方(顧客)を”困らせて戸惑わせる(不安にさせる)こと”をいうと解されています(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日12頁参照)。

 

「人を威迫し困惑させる行為」の具体例

前述したように、訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売を行う業者は「人を威迫して困惑させること」、すなわち「脅迫に至らない程度に人を不安に生ぜしめるような行為(威迫)」をして顧客を「困らせて戸惑わせ不安にさせること(困惑)」が禁止されていますが、この「威迫」「困惑」に該当する具体例としては以下のようなものが挙げられます。

(1)訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールスを含む)の場合

訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールスを含む)における「威迫」「困惑」については、経済産業省の通達「特定商取引に関する法律等の施行について(平成25年2月20日)」の12頁にその具体例が記載されていますので、以下に引用してあげておきます。

勧誘する際の「威迫」「困惑」の具体例

① 「買ってくれないと困る。」と声を荒らげられて、誰もいないのでどうしてよいかわからなくなり、早く帰ってもらいたくて契約してしまった。

② 勧誘の際に殊更に入墨を見せられ、怖くなって話を切り上げられなくなってしまった。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日12頁より引用)

①のような場合には、勧誘に来た販売員に「買ってくれないと困る」などと大声を挙げられると顧客としては”不安”を感じるでしょうから、その行為は「威迫」と判断されることになります。また、そのような大声で勧誘を迫られると、勧誘を受ける側の人間としては”困って戸惑いを覚える”のが通常でしょうから、そのような行為は「困惑」させる行為であると判断されるでしょう。

②のような場合には、入れ墨を見せられたら一般の人であれば怖いと感じ”不安”を覚えるのは当然と考えられますから「威迫」にあたり、入れ墨を見せられたら”困って不安を覚え”て断り切れなくなる場合も有ると考えられますから「困惑」と判断されることになります。

なお、これら以外にも例えば筋肉隆々の販売員に「買わないとどうなるかわかってるんだろうな」などと凄まれたり、女性の顧客が「買わないと付きまとっちゃおうかな」とか「明日から夜道は気を付けないといけなくなるかもしれませんね」などと男性の販売員に言われたような場合には、不安を感じて勧誘を断り切れなくなると考えられますから、このような場合にも「威迫」による「困惑」と判断され業者の勧誘行為は違法と判断されると考えられます。

クーリングオフ(契約の解除)を妨害する際の具体例

クーリング・オフしたいと思って電話したところ、「残金を支払わないと現住所に住めなくしてやる。」と言われ、不安になってクーリング・オフの行使を思いとどまった。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日12頁より引用)

訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールスを含む)によって購入した商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステの利用権やゴルフクラブの利用権など)の契約は、その契約書(又は申込書)を受け取ってから8日が経過するまでの期間であればクーリングオフによって自由に解約することが可能ですが、悪質な業者によってはクーリングオフしようとしている顧客を「威迫」して契約の解除を妨害する事例が多くみられます。

この点、上記のように、業者から「残金を支払わないと現住所に住めなくしてやる」などと言われた場合には、顧客としては”不安”を覚えるのは当然と考えられますから「威迫」にあたり、「嫌がらせをされて住めなくなったらどうしよう」と”困って不安を覚え”てクーリングオフを思いとどまる場合も有ると考えられますから「困惑」と判断されることになります。

また、上記の他にも、「クーリングオフしたらどうなるかわかってるんだろうな」とか言われた場合にも「威迫」にあたり「困惑」と判断されて業者の行為は違法と判断されるでしょう。

その他にも、他人に知られたくない商品(例えば”カツラ”や”セクシーな下着”、成人向け玩具など)を購入したもののクーリングオフしようとしたら「クーリングオフするなら勤務先の会社に言いふらすぞ」などと言われた場合には、勤務先で自分の秘密を知られることに不安を感じるのが通常ですから、そのような業者の言動は「威迫」と判断され、顧客を「困惑」させたものとして違法と判断されることになるでしょう。

 

(2)電話勧誘販売の場合

電話による勧誘(電話勧誘販売)における「威迫」「困惑」についても、経済産業省の通達「特定商取引に関する法律等の施行について(平成25年2月20日)」の37頁にその具体例が記載されていますので、以下に引用してあげておきます。

 

勧誘する際の「威迫」「困惑」の具体例

「申し込むと言うまで毎日職場に電話をかけてやるぞ。」

「申込みをしないなら上司に君がいい加減な奴だと言いつけるぞ。」

「(実際には契約が成立していないにもかかわらず、)もう契約は成立した。金を払わなければ法的手段に訴えるぞ。」

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日37頁より引用)

上記のように「職場に電話をするぞ」とか「上司に言いつけるぞ」などと言われた場合には、「職場に知れたらどうしよう」とか「上司に知られると査定に響くかも」などと”不安”を感じると思われますし、その結果として戸惑って契約をしてしまうこともあり得ますから、このような業者の言動は顧客を「威迫」し「困惑」させる行為と判断されることになります。

また、契約が成立していないのに「契約は成立した」と告知して「支払わないなら訴えるぞ」と言うような場合は、「訴えられたらどうしよう」と不安を感じ戸惑いを覚えて契約してしまうこともあり得ますから、このような業者の言動も「威迫」し「困惑」させる行為として違法と判断されると考えられます。

なお、これ以外にも、「契約しないなら実家の両親に電話するぞ」とか「契約しないなら近所に言いふらすぞ」とか「(勧誘を受けたのが大学生や専門学校生などである場合に)学校に電話するぞ」とか脅したりするのも「威迫」し「困惑」させる行為として違法と判断されるでしょう。

また、業者の販売員が「今からそっち行くわ」とか「お宅の住所わかってるんですよ」などと言うような場合も、顧客を「家まで来たらどうしよう」と困惑させることになりますから「威迫」し「困惑」させる行為として違法と判断されると考えられます。

 

クーリングオフ(契約の解除)を妨害する際の具体例

「この契約を解除すると後でどうなるかわかってるんだろうな。」

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日37頁より引用)

前述したように、悪質な業者によっては顧客がクーリングオフしようとすると、顧客を困惑させる言動でクーリングオフによる契約の解除を思いとどまらせようとする事例が多くみられます。

中でも、上記のように「クーリングオフしたらどうなるか分かってるんだろうな」などと言って脅す場合が代表的で、業者からこのように言われた場合は「クーリングオフしたら何か嫌がらせや暴力を与えられるんじゃないか」と不安を覚え、困惑してクーリングオフの行使を思いとどまることも考えられます。

そのため、このような言動があった場合にはその言動は顧客を「威迫」して「困惑」させる行為となり違法と判断されます。

なお、これ以外にも、「クーリングオフしたら勤務先の会社に電話するぞ」とか「解約したら実家に代金を請求するぞ」とか「クーリングオフしても裁判になったらうちが勝ちますよ」などと言うような場合も、顧客は不安を覚え戸惑うのが通常と考えられますから、このような言動も顧客を「威迫」し「困惑」させる行為として違法と判断されると考えられます。

 

業者から「威迫」を受けた場合

上記のように、訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売を行う業者の販売員から「威迫」を用いた勧誘を受け(又はクーリングオフを妨害され)た場合には、その業者は法令違反として行政処分の対象となりますから、監督官庁に申出を行うことによりその業者に対して行政処分を与えることが可能です。

なお、威迫を行った業者に対して行政処分を求める場合は申出書を監督官庁に提出して行いますが、具体的な申出方法(手順)や申出書の記載例についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な訪問販売・電話勧誘等の業者に行政処分を与える方法

▶ 威迫で困惑させる訪問販売業者等に行政処分を促す申出書の記載例