ネット通販詐欺でクレジットカード会社からの請求を拒否する方法


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インターネット通販でクレジットカードを利用して商品を購入した場合に、その商品の販売業者が詐欺業者であった場合、一番困るのがクレジットカード会社からの請求をどうするかという点です。

インターネット通販における契約の場合、購入の申込みをした時点でクレジット会社から商品の販売業者に代金の支払いが行われ決済が終わってしまうのが通常ですから、仮にネット通販で取引した業者が詐欺業者で購入した商品が送られてこない場合であっても、商品の到着の有無にかかわらずクレジット会社は商品の購入者に商品代金の請求を行うことになります。

これは、クレジットカードを利用して商品を購入する場合は、「購入者と販売業者」の間における”売買契約”と、「購入者とカード会社」の間における”クレジット契約(割賦販売契約)”が法律上別個の法律行為となることによるものです。

「購入者と販売業者」の間で行われる『「商品を買います」×「商品を売ります」』という契約と、「購入者とカード会社」の間で行われる『「買った用品の代金を立て替えてください」×「その商品の代金を立て替えてあげます」』という契約は法律上それぞれ別個の契約として扱われますから、仮に「購入者と販売業者」の間で行われる商品の売買契約にトラブルが生じても、そのトラブルは「購入者とカード会社」の間で行われるカード契約(クレジット契約※割賦販売契約)に影響を及ぼさないため、商品の受け取りの有無にかかわらずカード会社から代金の請求がなされてしまうことになるのです。

しかし、これをそのまま現実の取引で運用してしまうと、仮に販売業者が詐欺業者であった場合に消費者側の保護が図れなくなってしまいますから、クレジットカードを利用して購入した商品が届かない場合など消費者(購入者)が詐欺に遭った場合に消費者(購入者)側を保護する何らかの手続きが必要となってきます。

そこで制定されたのが”割賦販売法第30条の4”および”割賦販売法第30条の5”に規定された、いわゆる「抗弁権の接続(抗弁の対抗)」と呼ばれる手続です。

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「抗弁権の接続(抗弁の対抗)」とは?

「抗弁権の接続(抗弁の対抗)」とは、商品などの購入者が、商品などの販売業者との間で生じている事由をもって、その代金を立て替えたことを理由に代金の請求をしてくるカード会社(クレジット会社)に対抗することができるという制度のことを言います(割賦販売法第30条の4)。

【割賦販売法第30条の4】

第1項 購入者(省略)は、(省略)包括信用購入あつせんに係る購入又は受領の方法により購入した商品(省略)の支払分の支払の請求を受けたときは、当該商品(省略)を販売した包括信用購入あつせん関係販売業者(省略)に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる。
第2項 前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なものは、無効とする。
第3項 (省略)
第4項 (省略)

前述したように、クレジットカードを利用して商品を購入する場合、「購入者と販売業者」の間における”売買契約”と、「購入者とカード会社」の間における”クレジット契約(割賦販売契約)”は法律上別個の法律行為となりますから、たとえ「購入者と販売業者」の間に”商品が送付されてこない”という事由が生じていたとしても、その”商品が送付されてこない”という事由を理由とした『商品を送付しないなら代金は支払わないぞ!』という”抗弁”は、カード会社(クレジット会社)には通用しません。

しかし、「抗弁権の接続(抗弁の対抗)」の制度を利用すると、「購入者と販売業者」の間における”売買契約”で発生した、その”商品が送付されてこない”という事由を理由とする『商品を送付しないなら代金は支払わないぞ!』という”抗弁”を、本来は法律上別個の法律行為である「購入者とカード会社」の間における”クレジット契約(割賦販売契約)”に”接続”することができるようになります。

この”抗弁”を”接続”するとどうなるかというと、カード会社(クレジット会社)から代金の請求が来たとしても『商品が届いていないから代金は支払いません』という販売業者に対する”抗弁”をカード会社(クレジット会社)に対しても主張することができるようになり、その結果としてカード会社(クレジット会社)からの代金の請求を拒否することが出来るようになります(※この抗弁権の接続が有効に行われた場合、カード会社(クレジット会社)は利用者の口座からの代金引き落しができなくなります)。

なお、この割賦販売法第30条の4で規定された”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の制度は、割賦販売法第30条の5でいわゆる「リボルビング払い」のクレジット契約の場合でも適用されることになりますので、カードの支払いが通常の一括払いや分割払いではなくリボルビング方式による支払いになっている場合であっても利用することができます(割賦販売法第30条の5)。

抗弁権の接続(抗弁の対抗)の制度の利用手順

① 販売業者に契約の解除(取消)通知書を発送する

抗弁権の接続(抗弁の対抗)の制度を利用するには、ネット通販などの販売業者に対する「代金を支払わない」という”抗弁権”が発生していることが前提となりますので、まずその”抗弁権”を発生させることが必要となります。

では、この”抗弁権”を発生させるにはどうすれば良いかというと、販売業者に契約の解除(取消)通知書を発送し、商品の購入契約(売買契約)を解除(取り消し)してしまうのが通常の抗弁権発生方法となります。

代金支払いの前提となる”商品購入”の売買契約を解除(取り消し)してしまえば、販売業者側は代金の支払いを請求するという法律上の根拠を失うことになりますから、販売業者に対して「代金を支払わないぞ!」という”抗弁権”を発生させることができます。

なお、通信販売の契約では、商品を受け取った日から起算して8日が経過していない間であれば、購入者は自由に(業者側の承諾なしに)契約を解除することが法律上認められていますので(特定商取引法第15条の2第1項)、ネット通販で購入した商品が送付されてこない場合には「商品を受け取った日から起算して8日」という期限が永遠に続くことになりますから、購入者側はいつでも自由に一方的に契約を解除することが可能です。

▶ ネット通販で商品が送られてこない場合の対処法

また、仮に販売業者から商品が送られてきた場合であっても、その送付された商品がサイトに掲載されていたものと異なっていたり粗悪品であるような場合は民法や消費者契約法などの法律に基づいて契約の解除や取消を行うことができます。

▶ ネット通販でサイトの画像と違う商品が送られてきた場合の対処法

▶ ネット通販で商品受取から8日経過後に契約を解除・取消す方法

このように、ネット通販などの通信販売では、商品が送付されてこないといった場合だけでなく、送られてきた商品に何らかの問題がある場合であっても契約の解除や取消を行うことができますから、販売業者に対して契約の解除(取り消し)通知書を送付することで契約を解除(取り消し)し、「代金を支払わないぞ!」という”抗弁権”を発生させることが可能となります。

なお、③で後述するように、”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”をした後、カード会社(クレジット会社)から”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の根拠となる書面の提出を求められた場合には、この販売業者に送付した契約の解除(取消)通知書を提出しなければなりませんので、この販売業者に対する契約の解除(取消)通知書は普通郵便ではなく内容証明郵便で送付するようにし、その写し(コピー)を大切に保管することを忘れないようにしてください。

ちなみに、販売業者に対する契約の解除(取消)通知書の記載例についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ ネット通販で商品が届かない場合の契約解除・取消通知書の記載例

▶ ネット通販の商品が画像と異なる場合の契約解除通知書の記載例

② カード会社(クレジット会社)に”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の通知書を送付する

上記の①の要領で販売会社(ネット通販会社など)に契約解除(取消)通知書を送付したら、今度はカード会社(クレジット会社)に対して”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の通知書を送付します。

この”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の通知書をカード会社(クレジット会社)に送付することによって、販売業者に対する『契約を解除したから代金は支払わない!」という”抗弁”を、カード会社(クレジット会社)との間のクレジット契約に”接続”することができるようになりますので、カード会社(クレジット会社)から代金の請求がなされた場合であってもその請求を拒否することができるようになります。

(※カード会社(クレジット会社)からの請求を拒否できるということは、カード会社(クレジット会社)からの請求を拒否しても法律上は支払いの滞納(延滞)にならないということを意味します)

なお、この割賦販売法第30条の4(または同条の5)に基づく抗弁権の接続(抗弁の対抗)の通知書の記載例(ひな型)についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ ネット通販のクレジットカード会社の請求拒否通知書の記載例

③ カード会社(クレジット会社)から”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の根拠となる書面の提出を求められた場合

以上のように、まず①の要領で販売業者(ネット通販業者など)に契約解除(取消)通知書を発送し、②の要領でカード会社(クレジット会社)に抗弁権の接続通知書を送付すれば、カード会社(クレジット会社)からの請求を合法的に拒否できるようになります。

ただし、カード会社(クレジット会社)に抗弁権の接続(抗弁の対抗)通知書を送付した後、カード会社(クレジット会社)から「販売会社に代金支払いを拒絶できる事由の根拠となる書面を提出してください」と依頼された場合は、①で販売会社に送付した契約解除(取消)通知書をカード会社(クレジット会社)にも提出しなければなりません(割賦販売法第30条の4第3項)。

【割賦販売法第30条の4】

第1項 (省略)
第2項 (省略)
第3項 第1項の規定による対抗をする購入者(省略)は、その対抗を受けた包括信用購入あつせん業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならない。
第4項 (省略)

これは、カード会社(クレジット会社)側としては、商品の購入者と販売業者(ネット通販業者など)の間でどのような紛争が発生し、どのような法律上の根拠で抗弁権が発生したのか(どのような事由で契約が解除されたのか)という点が判然としないため、その法律上の根拠を確認しておく必要があるからです。

そのため、カード会社(クレジット会社)に抗弁権の接続をした後にカード会社(クレジット会社)から書類の提出を求められる場合に備えて、①で販売業者(ネット通販業者)に送付する契約解除(取消)通知書は普通郵便ではなく内容証明郵便で送付しておき、そのコピー(写し)をカード会社(クレジット会社)に提出できるよう準備しておくことが重要となりますので契約解除(取消)通知書の控え(写し)は絶対に捨てたりしないようにしないように注意が必要となります。

※販売業者(ネット通販業者)に送付した契約解除(取消)通知書の控えは、後日裁判などに発展した場合に証拠として使用することができるよう自分の手元にも残しておかなければなりませんので、カード会社(クレジット会社)には”写しの写し”※内容証明郵便の控えをコピーしたもの)を提出するようにし、契約解除(取消)通知書の控え(写し)の原本は手元に残しておくようにしてください。

抗弁権の接続(抗弁の対抗)の手続きが制限される場合

以上のように、インターネット通販でクレジットカードを利用して商品を購入した場合に、その購入した商品が送られてこない場合には、”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”という手続きをとることでクレジット会社からの請求を拒否することが可能となります。

しかし、この”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の手続きには金額による適用除外が設けてあり、クレジットカードの支払いが一括払いや通常の分割払いである場合には商品の価格が40,000円、リボルビング払いの場合には38,000円を超える場合でなければ”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の手続きは利用できないことになっています(割賦販売法施行令第18条割賦販売法第30条の4第4項)。

【割賦販売法第30条の4】

第1項 (省略)
第2項 (省略)
第3項 (省略)
第4項 前三項の規定は、第一項の支払分の支払であつて政令で定める金額に満たない支払総額に係るものについては、適用しない。

【割賦販売法施行令第18条】

第1項 法第29条の4第2項において準用する法第30条の4第4項の政令で定める金額は、4万円とする。
第2項 法第29条の4第3項 において準用する法第30条の5第1項において準用する法第29条の4第2項において準用する法第30条の4第4項の政令で定める金額は、3万8千円とする。

これは、あまりにも金額の少ない取引にまで前述した”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”を認めてしまうと、”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の手続きが比較的小さな取引にまで幅広く利用されることになってしまい、そうなるとクレジットカード会社に多大な事実関係の調査にかかる負担が生じてしまうことになることから、一定の金額を下回る取引については適用を排除したものと考えられています。

そのため、インターネット通販で購入した商品で、クレジットカードの支払いが一括払いであったり通常の分割払いであるものに関しては4万円、リボルビング払いのものに関しては3万8千円を下回る商品については、上記でご紹介した”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の手続きは使うことができませんので注意が必要となります。

なお、この4万円(リボ払いの場合は3万8千円)を下回る商品をクレジットカード払いで購入した場合にはどのようにすれば良いかというと、クレジットカード会社からの請求は拒むことができないのでいったんクレジットカード会社に支払いをし、そのあとで(またはそれと並行して)商品を販売したインターネット通販業者に対して(又はインターネット通販業者とクレジットカード会社両方を相手取って)代金の返還請求を行うしかないと思われます。

もっとも、このような場合の代金の返還請求については弁護士または司法書士に相談して裁判などを通じて回収するしかありませんので、そのような場合は早めに弁護士または司法書士に相談に行くことをお勧めいたします。


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