”PC〇ポ”に高額な解除料を請求された場合の対処法


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ネット上で、80歳を超える一人暮らしの男性が「PCデ〇」という業者で毎月15,000円のサポート料の契約を結ばされ、その契約を解除したら契約解除料として10万円を支払わせられた、という事案が報告されているようです。

仮にも”PC〇ポ”という名の知れた企業でこのような高額な契約と高額な解除料が請求させられていることに驚きを禁じ得ませんが、この事案ではこの男性の息子さんがツイッターに揚げたレシートの記載を見る限り、契約解除料の10万円を支払ってしまったようです。

しかし、「独居老人に月15,000円のサポート料の契約をさせること」や「解除料として10万円を請求すること」は、どう考えても明らかに”ボッタクリ”の域に達していると感じてしまうのが常識的な感覚でしょう。

そこで今回は、このような契約を結ばされてしまった場合、具体的にどのような法律に基づいて解決することができるのか、という点について考えてみることにいたしましょう。

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この契約の問題点は2つ

前述のツイートでは、ツイート主のお父さんが「毎月1万5千円の高額サポート契約を結ばされ」ていて、その契約を解除しようとすると「当初20万円の契約解除料を請求」されてしまい、「ゴネたら10万円にな」ったということらしく、「ファミリーワイドプランというのを軸に様々なオプションをセットされて」いた上に、「i pad air16g本体もセット」で契約されていたそうです。

このツイートだけでは、その契約が具体的に何のサポートに関する契約なのかという点が判然としませんが、この契約の問題点としては、(1)「独居老人に月15,000円のサポート料の契約をさせること」と、(2)「解除料として10万円を請求すること」の2つに大別することができると考えられますので、以下(1)と(2)の問題に分けてそれぞれ検討していくことにいたしましょう。

(1)「独居老人に月額15,000円のサポート契約を結ばされた」点が消費者契約法第4条第2項に該当する可能性

消費者契約表の第4条では、消費者が何らかの商品やサービスを購入した場合に、業者側の説明に一定の態様がある場合にはその契約を取消すことができる”契約の取消”制度について規定されています。

すなわち、事業者が消費者に商品やサービスを販売するに際して、「ある重要事項」について「消費者に不利益となるような事実」があるにもかかわらず、「その消費者に不利益な事実」を意図的に隠して勧誘(説明)を行い、消費者が「その消費者に不利益な事実」が”存在しない”と誤認して契約してしまった場合には、消費者はその契約を一方的に取り消すことができると規定されているのです(消費者契約法第4条第2項)。

【消費者契約法第4条第2項】

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

この規定によれば、「重要事項について消費者に利益があることを告げること」「重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったこと」「消費者がその不利益となる事実が存在しないと誤認したこと」の3つ要件が満たされた場合は、その契約は取り消すことができるといことになります。

【契約の取消ができる場合の要件】
事業者が重要事項について消費者に利益があることを告げること
事業者が重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったこと
消費者がその不利益となる事実が存在しないと誤認したこと

①「重要事項について消費者に利益があることを告げること」の有無

この点、前述のツイートでは、80歳の一人暮らしの老人がPC(あるいはスマホ?)関連のサービスに関して「何らかのサポート契約」を申し込んだことになっているようですが、この契約が「何らかのサポート契約」である以上、そのサポート契約で消費者に何らかの利益があることは当然と考えられますから、上記の①の要件は満たすことになるでしょう。

②「重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったこと」の有無

上記の②の「事業者が重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったこと」における「消費者の不利益となる事実」とは、

『消費者契約を締結する前の状態と後の状態を比較して、「当該消費者」(=個別具体的な消費者)に不利益(必ずしも財産上の不利益に限らない)を生じさせる恐れがある事実』

※逐条解説消費者契約法/補訂版(内閣府国民生活局消費者企画課編:商事法務)78~79頁より引用

のことを言います。

この点、前述のツイートでは、「何らかのサポート契約」を申し込んだことにより月額15,000円という高額なサポート料の請求を受けているにもかかわらず、その80歳の独居老人は「そのサポート契約が何のためのものなのか」といったことや「そのサポートが本当に必要なのか」などといった、その「何らかのサポート契約」の必要性について正確に理解していないことが容易に想定できます。

そのため、この事案では、「何らかのサポート契約」を申し込むことによって月額15,000円という高額なサポート料の支払いという”不利益”を生じさせる恐れがあることを、”PC〇ポ”の販売員が故意に告げずに契約を結ばせたと考えられますので、上記の②の要件も満たすことになるでしょう。

③「消費者がその不利益となる事実が存在しないと誤認したこと」の有無

また、前述のツイートでは、一人暮らしの老人であるにもかかわらず、「ファミリーワイドプラン」というオプションをセットされていた上に、「i pad air16g本体」もセットで購入させられていたそうですから、この老人は、本来その老人にとって必要のない商品まで契約させられていることは明らかであり、そのために月額15,000円の支払いが必要となる事実(消費者が不利益となる事実)が存在しないと誤認して契約させられているのは明らかといえるでしょう。

そのため、上記の③の要件も満たすことになると考えられます。

以上のように、このツイートの「独居老人に月額15,000円のサポート契約を結ばされた」件については、消費者契約法第4条第2項に基づいて契約を取消すことができるのではないか、と考えられます。

(2)「解除料として10万円を請求すること」が消費者契約法第9条によって無効と判断される可能性

前述のツイートでは、契約を解除しようとすると「当初20万円の契約解除料を請求」され「ゴネたら10万円になった」ということですが、これは法律的に考えると「契約の解除に際しての損害賠償額を予定する契約がされていた」ということになります。

契約を当事者の一方が解除した場合には原則的に契約違反ということになりますから、その違反に対して違約金を設定することは問題なく認められますし、その違約金の金額を前もって設定しておくこと自体も法律上は問題ありません。

この点、この事例では当初20万円の請求がなされていたようですから、「20万円の損害賠償額の予定」がなされていたものの「交渉によって10万円に減額してもらえた」ということになるのではないかと思われます。

(※ただし、そのような合意が契約時になされていた根拠はないので、この事例では”PC〇ポ”の販売員が勝手に違約金を請求しているという可能性もあり、その場合はそもそも10万円の違約金を請求できるかという問題が発生しますが、ここではあくまでも事前に違約金を予定する契約がなされていたという前提で考えていきます)

ところで、事業者がこの消費者が支払う違約金(損害賠償金)の金額をあらかじめ予定する契約を結ぶ場合には、その金額はその契約と同種の契約の解除に伴って事業者に生じる平均的な損害額を超えないことが求められており、その平均的な損害額を超える部分については無効と判断されることになります(消費者契約法第9条1号)。

【消費者契約法第9条】

次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
 1号 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
 2号(省略)

このツイートの事案では、その違約金の元となっているサポート契約が具体的にどのような契約なのか判然としないため「当該消費者契約と同種の消費者契約」が具体的にどのような契約が該当するのがという点も判然としません。

そのため、この「10万円(※当初は20万円)」という契約解除料が「平均的な損害額」を超えるか超えないか判断することは難しいですが、たとえばソフトバンクの場合、契約更新月以外に解約する場合の契約解除料は「9,500円」と設定されているようですので、これを「契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」と考えると、実に9万円以上も高額な違約金を支払わせられていることになります(※ソフトバンクの9,500円の違約金が正当な金額だという意味ではありません)。

▶ 参考 → 解約する際の契約解除料はいくらですか? | モバイル | ソフトバンク

したがって、仮に”PC〇ポ”の主張するように、この契約の解除に際して違約金を支払わなければならないと考えたとしても、その平均的な損害額が1万円と仮定すれば、支払う必要があったのは1万円だけでよかったということになりますし、この事案ではすでに10万円を支払っているというのですから、”PC〇ポ”に対し支払った10万円のうち9万円を「返せ」と言うことができる、ということになろうかと思われます。


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