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悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

突然電話を掛けてきて「絶対に儲かります」などといいかげんな説明をして投資用マンションを売り付けるデベロッパーや、訪問販売で長時間居座って不動産の購入を迫る不動産業者など、悪質な業者の不動産販売の勧誘は誰しも一度は経験したことがあるのではないかと思います。

私も以前、名簿業者から不正に私の携帯番号を購入した大阪のデベロッパーから投資用マンションの購入に関する電話が頻繁に掛けられて大変迷惑した経験がありますので、このような悪質業者はこの世から1社残らず消滅してほしいと心の底から思っています。

このような宅地建物取引業者(不動産業者)を市場から締め出すにはどうしたらよいかというと、それはもう行政機関から業務停止などの行政処分を与えてもらうのが一番の近道と思われます。

国土交通大臣や都道府県知事は悪質な宅地建物取引業者(不動産業者)に対して業務停止や免許の取り消しなど必要な行政処分を行いその業務を取り締まることができます。

そのため、悪質な宅建業者(不動産業者)から勧誘を受けて迷惑していたり、悪質な宅建業者(不動産業者)から不動産を購入してトラブルに巻き込まれてしまった場合には、その旨を監督官庁である国土交通省や都道府県庁に情報提供し、行政機関による調査や処分を促すのも悪質な宅建業者(不動産業者)を市場から締め出す一つの方法として有効だと考えられます。

そこで今回は、悪質な宅建業者(不動産業者)に対して行政処分を与えたい場合の具体的な手順などについて考えてみることにいたしましょう。

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悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

悪質な宅建業者(不動産業者)から勧誘を受けて迷惑していたり、悪徳な宅建業者(不動産業者)から不動産を購入してトラブルに巻き込まれてしまった場合に、その悪質な宅建業者(不動産業者)の行為を報告する相手先としては、「宅地建物取引業保証協会」と「行政官庁」の2つがありますので、この2つの報告先への情報提供方法をそれぞれ別に解説することにいたします。

(1)宅地建物取引業保証協会に苦情の申出を行う場合

宅地建物取引業保証協会とは、宅建業者(不動産業者)だけが会員(社員)となることのできる団体で、協会に所属する会員(社員※宅建業者(不動産業者))の行った取引に関する苦情の解決や会員への研修などを行うことを主な業務としている一般社団法人のことを言います(宅地建物取引業法第64条の2ないし同条の3)。

不動産業者の店頭の窓などに「ハトのマーク」が貼られているのを見たことがあると思いますが、あれはそのシールを張っている宅建業者(不動産業者)が宅地建物取引業保証協会の中の一つである”全国宅地建物取引業保証協会”という団体に所属していることを示しています。

ちなみに、宅建業者(不動産業者)が宅地建物取引業保証協会に所属するか(会員となるか)は各宅建業者(不動産業者)の自由ですが、ほぼ99.9%の宅建業者(不動産業者)はいずれか宅地建物取引業保証協会に所属しているのが現状です(※ちなみに全国の宅建業者の約80%は前述のハトのマークの宅建協会に所属しています)。

この宅地建物取引業保証協会では、その所属する会員(宅建業者)と顧客との間でトラブルが発生し、その顧客からの申出を受けた場合には、必要な助言を行うとともにトラブルを発生させた宅建業者(不動産業者)に対して調査(説明や資料の提出を求めるなど)を行うことが義務付けられています(宅地建物取引業法第64条の5)。

【宅地建物取引業法第64条の5】

第1項 宅地建物取引業保証協会は、宅地建物取引業者の相手方等から社員の取り扱った宅地建物取引業に係る取引に関する苦情について解決の申出があったときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するとともに、当該社員に対し当該苦情の内容を通知してその迅速な処理を求めなければならない。
第2項 宅地建物取引業保証協会は、前項の申出に係る苦情の解決について必要があると認めるときは、当該社員に対し、文書若しくは口頭による説明を求め、又は資料の提出を求めることができる。
第3項 社員は、宅地建物取引業保証協会から前項の規定による求めがあったときは、正当な理由がある場合でなければ、これを拒んではならない。
第4項 宅地建物取引業保証協会は、第一項の申出及びその解決の結果について社員に周知させなければならない。

(注)※この条文で使われている「社員」という文言は一般社会で「会社の社員」を指す際に使用する「社員」ではなく、「宅建業協会に加盟する不動産業者(宅建業者)」という意味で使用されていますので誤解しないようにしてください。

そのため、悪質な宅建業者(不動産業者)から勧誘を受けて迷惑していたり、悪徳な宅建業者(不動産業者)から不動産を購入してトラブルに巻き込まれてしまった場合には、この宅地建物取引業保証協会に対する「苦情の申出」の制度を利用することも、トラブル解決方法の一つとして有効です。

勿論、宅地建物取引業保証協会は行政機関ではありませんので「トラブル解決の助言や調査」を行うことしかできません。

しかし、法令に違反する悪質な宅建業者(不動産業者)については、宅地建物取引業保証協会から監督官庁である国土交通大臣や都道府県知事に違法行為の報告(告発)がなされることも期待できますので、間接的ではありますが宅地建物取引業保証協会に苦情の申出(トラブル解決の申出)を行うことも悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法として有効ではないかと思われます。

なお、宅地建物取引業保証協会に対する苦情解決の申出に法定の方法はありませんので、電話で行っても書面でおこなっても問題ありません。

ちなみに、国内に設立されている宅地建物取引業保証協会のうち、前述した「ハトのマーク」の全国宅地建物取引業保証協会に所属する宅建業者(不動産業者)に対する苦情解決の申出先は、こちらのサイトに掲載されていますので、苦情の申出を行いたい場合は参考にしてください。

▶ 苦情の解決業務窓口一覧|公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会

 

(2)国土交通大臣または都道府県知事に違法行為の情報提供を行う場合

国内で土地や建物の販売業務を行う場合は、国土交通大臣や都道府県知事から免許を受けることが義務付けられていますので、国内で営業している宅建業者(不動産業者)は全て国土交通省や各都道府県の監督下に置かれていることになっています。

そして、この監督官庁である国土交通大臣や都道府県知事は、その宅建業の免許を与えた宅建業者(不動産業者)に法律に違反する行為がある場合には、その宅建業者(不動産業者)に対して業務の全部又は一部の停止や免許の取り消しなど必要な行政処分を与えることが可能とされています(宅地建物取引業法第65条及び66条)。

ただし、法律上は国土交通大臣や都道府県知事が行政処分をできると規定されているだけあって、その宅建業者(不動産業者)と取引を行った消費者が直接行政機関に違法行為の申出(告発)を行う手続きは法定されていません。

そのため、仮に消費者が特定の宅建業者(不動産業者)から違法な行為を受けた場合に、その消費者が国土交通大臣や都道府県知事に対して直接「〇〇という業者に対して行政処分を出してください!」と申し出たとしても、申出を受けた国土交通大臣や都道府県知事が調査や行政処分を行うかどうかはあくまでもその申し出(申告)を受けた国土交通大臣や都道府県知事の判断次第となります。

※この点、訪問販売業者や電話勧誘販売業者、内職商法やモニター商法などを行う業務提供誘引販売取引業者などが法律に違反する行為を行っている場合には、特定商取引法という法律において違法行為を行った業者については消費者(購入者)が直接監督官庁である主務大臣(消費者庁長官)などに”違法行為の申出”を行うことが認められており、申出を受けた主務大臣等は必要な調査や措置を必ず行わなければならないことになっています(特定商取引法第60条)。

そのため、訪問販売等で商品等を購入した消費者が業者の違法行為によって迷惑をこうむった場合には行政機関に対して直接「〇〇という業者に行政処分を出してください」というように申出を行い行政処分を行うことを求めることが可能ですが(特定商取引法第60条)、宅建業者(不動産業者)が法律に違反している場合については、このような”違法行為の申出”の制度が法定されていませんから、違法な宅建業者(不動産業者)について行政機関に直接行政処分を出すように求めても、行政機関が調査や処分を行うかは行政機関の任意となります。

もっとも、一般の消費者が特定の宅建業者(不動産業者)に関して違法行為の申出(申告)を行う場合には、それなりの理由があってのことになりますから、その申出の理由が法律に照らして正当なものであり、その宅建業者(不動産業者)が違法行為を行っていることが推定できるような事実がある場合には、申出を受けた国土交通大臣や都道府県知事の方としても貴重な情報提供として受け止め、必要な調査を行うのではないかと考えられます。

そのため、仮に悪質な宅建業者(不動産業者)から悪質な勧誘を受けて迷惑をこうむったり、悪徳業者と取引してしまったために経済的な損失を受けてしまった場合には、国土交通大臣や都道府県知事に対して直接、違法な行為を行っている宅建業者(不動産業者)について情報提供を行うというのも、悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法として有効ではないかと思われます。

国土交通大臣や都道府県知事に違法な宅建業者(不動産業者)の情報提供をする場合は、申出書を作成して提出するか、電話で情報提供するかになると思われますが、法定の手続きではありませんので適宜の方法で行って構わないでしょう。

具体的な情報提供先は、国土交通大臣から免許を受けた業者については国土交通省に、都道府県知事から免許を受けた業者についてはその免許を出している各都道府県庁に、ということになるのが基本です。

ただし、法律上、特定の都道府県の区域内で営業している宅建業者(不動産業者)についてはその都道府県以外の都道府県や国土交通大臣から免許を受けた業者であっても、その実際に営業を行っている都道府県知事が調査や行政処分を行うことが認められていますので(宅地建物取引業法第65条第3項及び第4項)、悪質な宅建業者(不動産業者)から違法な営業を受けたのが消費者の住所地である場合には、被害を受けている消費者の住所のある都道府県の都道府県庁に宛てて情報提供しても問題ないと思われます。

【国土交通省と都道府県のどちらに情報提供するか】

宅建業者(不動産業者)が国土交通大臣と都道府県知事のどちらから免許を受けているか、また都道府県知事の場合に具体的にどの都道府県知事から免許を受けているかという点は、その宅建業者(不動産業者)の登録番号を確認すると分かります。

宅建業者(不動産業者)の担当者の名刺などに「国土交通大臣免許(〇)〇〇号」とか「東京都知事免許(〇)〇〇号」などといった番号が記載されているのを見たことがあると思いますが、これが宅建業の登録番号となりますので、基本的にはその番号に記されている行政庁が違法業者の情報提供を行う申出先となります。

たとえば「国土交通大臣免許(〇)〇〇号」といった番号を与えられている業者から違法な行為を受けた場合には国土交通省が、「東京都知事免許(〇)〇〇号」という番号の業者については東京都庁、「大阪府知事免許(〇)〇〇号」という番号の業者については大阪府庁が情報提供を行う相手先となります。

もっとも、宅建業者(不動産業者)に対する調査や行政処分は、その宅建業者(不動産業者)が実際に営業を行っている都道府県の都道府県知事にも調査や行政処分を行うことが認められていますので(宅地建物取引業法第65条第3項及び第4項)、悪質な宅建業者(不動産業者)から被害を受けている消費者の住所のある都道府県の都道府県庁に宛てて情報提供すれば問題ないと思われます

例えば、鹿児島県に在住しているAさんが、宮城県知事から宅建業の免許を受けた「宮城県知事(1)******」という登録番号で営業するXという業者から電話による勧誘を執拗に受けて迷惑している場合(又は実際に不動産を購入してトラブルに巻き込まれている場合)には、宮城県庁に違法行為の情報提供を行って宮城県知事が調査や行政処分を行うよう促すこともできますが、鹿児島県庁に違法行為の情報提供を行って鹿児島県知事から調査や行政処分を行ってくれるよう求めることもできるということになります。

なお、具体的な情報提供先については国土交通省のサイトに掲載されていますので、実際に情報提供を行う場合にはそちらをご確認ください。

▶ 建設産業・不動産業:都道府県に関する窓口 – 国土交通省

 

※監督官庁に行政処分を出すよう促す場合の申出書の作成方法について

上記のように、悪質な宅建業者(不動産業者)の被害にあっていたり、トラブルに巻き込まれている場合には、監督官庁である都道府県知事(又は国土交通大臣)に対して違法業者の違法行為を情報提供することにより行政処分を行うよう働きかけることも業者にペナルティーを与える方法として有効と考えられます。

この場合、実際に都道府県知事(又は国土交通大臣)に悪質業者の情報提供を行う際は、業者がどのような法令違反行為を行っているかを書面にしたためて文書で都道府県庁(または国土交通省)に告発するのが適当と思われます。

その宅建業者(不動産業者)が過去に行政処分を受けているか確認したい場合

国土交通省のサイトでは、全国の宅建業者(不動産業者)について過去に行政処分が出されているか確認することができる「国土交通省ネガティブ情報等検索システム」を公開しています。

このシステムで検索を掛ければ、自分が取引していたり、勧誘を受けている業者が過去に行政処分を受けているか確認することができますので、悪質な業者か判断に迷う場合には使用してみるのも良いかもしれません。

▶ 国土交通省ネガティブ情報等検索システム

※ただし、検索を掛けて過去の行政処分が表示されないからといってその業者が悪質業者ではないという保証はありません。悪質な業者は行政処分を受けるたびに廃業、再登録を繰り返しているケースもありますのでご注意ください。あくまでもこの検索システムは参考までにとどめておくほうが無難かもしれません。