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求人・内職に応募して登録料を取られた場合に契約を解除する方法

悪質商法の一種で、求人広告に応募ししてきた人に「この仕事の紹介(あっせん)を受けるためには登録料(または保証料・手数料など)が必要です」などと告知して登録料(または保証料・手数料など)を支払わせたりするものがあります。

このような悪質商法は、求人の態様が内職や在宅ワークを募るものである場合には「内職商法(在宅ワーク商法)」と、その他の仕事の紹介やあっせんなどを行うものである場合には「求人広告商法」と、商品のモニター契約を進める形態の場合は「モニター商法」などと様々な呼称で呼ばれることが多いですが、「仕事がほしい!」という切迫した事情で求人活動をしている弱い立場の人に対して、その弱みに付け込んで高額な登録料や保証料、手数料などを請求するという極めて悪質性の高い取引形態といえます。

そのため、このような取引態様は特定商取引法という法律で「業務提供誘因販売取引」として規制の対象となっており、一定の場合にはその登録を解除して登録料(または保証料・手数料など)の返還を求めることが可能です(特定商取引法第51条~)。

しかし、多くの人はそのような法律による規制など知りませんので、悪質業者に言われるまま高額な登録料(または保証料・手数料など)を支払い、その契約を解除できることを知らないまま泣き寝入りしてしまうのが通常なのではないかと思います。

そこで今回は、このような「内職商法(在宅ワーク商法)」、「求人広告商法」、「モニター商法」といった悪質商法(業務提供誘因販売取引)に巻き込まれて高額な登録料(または保証料・手数料など)を支払わされてしまった場合に具体的にどのような対応を取れば良いか、という点について考えてみることにいたしましょう。

※なお、契約に際して「契約をする場合はこの商品を買い取ることが必要」などと言われて高額な商品を売りつけられたような場合についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 仕事紹介の条件として購入させられた商品の契約を解除する方法

▶ モニター商法における商品の購入契約をクーリングオフする方法

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内職や仕事の紹介(あっせん)の登録契約を解除する方法

前述したように「この仕事の紹介(あっせん)を受けるためには登録料が必要です」などと告知して登録料(または保証料・手数料など)を支払わせたりする悪質商法はその取引態様に応じて一般に「内職商法(在宅ワーク商法)」や「求人広告商法」、「モニター商法」などと呼ばれることがありますが、法律的には「業務提供誘因販売取引」として規制の対象とされています(特定商取引法第51条~)。

※なお、どのような態様がこの業務提供誘引販売取引にあたるかという点についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ モニター商法・内職商法など業務提供誘因販売取引の要件と具体例

具体的には、仮にそのような業者から「仕事の紹介(あっせん)のために必要」などと言われて登録料を請求されてしまった場合であっても、その契約に基づく契約書を受け取ってから20日が経過するまでであれば、契約解除の書面を発送することによって無条件に契約を解除することが可能と定められています(特定商取引法第58条1項)。

【特定商取引法第58条】

第1項 業務提供誘引販売業を行う者がその業務提供誘引販売業に係る業務提供誘引販売契約を締結した場合におけるその業務提供誘引販売契約の相手方(省略)は、第55条第2項の書面を受領した日から起算して20日を経過したとき(省略)を除き、書面によりその業務提供誘引販売契約の解除を行うことができる。(省略)
第2項 (省略)
第3項 (省略)

これは訪問販売などで利用されている「クーリングオフ」と同様の手続きであり、契約の解除に業者側の承諾や同意など一切必要なく、消費者側の一方的な通知で解約することができるという制度になります。

そのため、このような「仕事の紹介(あっせん)を受けたいなら登録料を払え」と言われて契約書にサインした場合であっても、その契約書を受け取ってから20日が経過するまでの間であれば、業者に対して一方的に契約解除の通知書(クーリングオフ通知書)を送付することで解約することができるということになります。

なお、この場合の”登録料”の名目は「保証料」や「手数料」などでも同じですので、例えば「仕事の紹介(あっせん)を受けるためには保証料が必要」とか「仕事の紹介(あっせん)を受けるには手数料が必要」などと言われた場合も同様にクーリングオフによって契約を解除することが可能です(特定商取引法第51条2項)。

「業務提供誘引販売取引」のクーリングオフ(契約解除)の方法

① 必ず書面で解約すること

「業務提供誘因販売取引」のクーリングオフ(契約解除)は「書面により~契約の解除を行うことができる」と法律で規定されていますので、必ず書面で行う必要があります(特定商取引法第58条1項)。

これは、口頭で通知することを認めてしまうと「言った、言わない」の水掛け論になってしまうため、それをあらかじめ防止するために書面で通知することを要件としているものです。

なお、後日裁判などに発展した場合には、このクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を「業者側に送付した」ということを照明しなければなりませんので、その証拠として残しておくために普通郵便ではなく内容証明郵便で送付するように注意が必要です。

なお、クーリングオフ通知書(契約解除通知書)の記載例(ひな型・書式例)はこちらのページを参考にしてください。

▶ 業務提供誘引販売のクーリングオフ(契約解除)通知書の記載例

②「書面を受領」してから起算して「20日が経過」しない間にクーリング通知書を「発送」すること

「書面を受領」してからとは?

上記のクーリングオフ(契約の解除)は商品購入の書面(契約書)を受け取ってから起算して20日以内にクーリングの通知(契約解除の書面)を送付することが必要となります。

この「書面を受領してから」とは、「業者から仕事や内職(在宅ワーク)の紹介(あっせん)に関する”契約書”を受領した時から」という意味になりますので、仮に業者側が契約書を交付していなかった(契約書をもらっていなかった)場合には、「書面を受領」したことにならず「書面を受領した日から起算して20日」という期限が永遠に到来しないことになりますので、理論上はいつまででも永遠に契約を解除することができるということになります。

また、仮に契約書をもらっていたとしても、その契約書に法律で定められた項目が記載されていなかったような場合にも「書面を受領」したことにならず「書面を受領した日から起算して20日」という期限が永遠に到来しないことになりますから、業者側から法律で定められている事項が記載された契約書が改めて交付されない限り、理論上いつまででも契約を解除することが可能となります。

そのため、もしも仕事を紹介する条件として登録料を支払ってしまったり、登録料を支払うよう請求されている場合には、契約から20日以内にクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付することを忘れないようにするのとともに、仮に20日が経過した場合であっても「業者が契約書を交付しているか」や「業者から交付された書面(契約書)は法律で定められて事項が全て記載されているか」という点をチェックしてみることも必要です。

もし契約書をもらっていなかったり契約書に不備がある場合には20日が経過した場合であってもすぐにクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付して契約を解除(解約)することができますので、「20日過ぎてしまったからどうしようもない」と簡単にあきらめたりしないようにする必要があるでしょう。

「・・・から起算して20日を経過」するまでとは?

前述したように業務提供誘引販売取引におけるクーリングオフ通知書(契約解除通知書)については、業者から書面(契約書)を受領してから起算して20日が経過するまでの間に発送することが必要となります。

この「・・・から起算して20日」を数える場合には初日を参入することになりますので、例えば6月1日に業者から仕事や内職の紹介(あっせん)の契約書を受け取ったような場合には、6月1日を含めて20日を経過しない間ということになりますから、6月20日の夜12時まで(24時まで)にクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を業者に発送しなければならないことになります。

クーリング通知書は20日以内に「発送」すればよい

前述したように、業務提供誘引販売取引におけるクーリングオフ(契約の解除)は、業者から商品購入の書面(契約書)を受け取ってから起算して20日が経過するまでの間にクーリング通知(契約解除通知書)を送付することが必要となります。

そして、このクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付したことによる契約解除の効力は、クーリングオフ通知書(契約解除通知書)が業者に「到着」した時ではなく「発送」したときに生じることになりますので、「発送」するのが20日以内であればよく、業者に「到達」するのが20日を超えていたとしても発送したのが20日以内であればクーリングオフ(契約解除)の効力は発生することになります(特定商取引法第58条2項)。

【特定商取引法第58条】

第1項 (省略)
第2項 前項の業務提供誘引販売契約の解除は、その業務提供誘引販売契約の解除を行う旨の書面を発した時に、その効力を生ずる。
第3項 (省略)

例えば前述の例で、6月1日に業者から仕事や内職の紹介(あっせん)の契約書を受け取ったような場合には、6月1日を含めて20日を経過しない間にクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を「発送」すればよいことになります。

そのため、このような場合は6月20日の夜12時まで(24時まで)にクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を郵便局に提出すれば「20日を経過するまでの間」に「発送」したことになりますので、たとえそのクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を業者が受け取ったのが20日を経過した6月21日以降であったとしてもクーリングオフ(契約解除)の効力は有効に発生することになります。

もっとも、現実的には夜の12時まで郵便局は営業していませんので、このような場合は6月20日の夕方の郵便局が閉まる時刻までにクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を作成して郵便局に持参し内容証明郵便で送付するようにしなければならないでしょう。

(※もし20日が経過する日の夕方の郵便局の閉局に間に合わない場合は、その日の夜12時までに郵便局のサイトを利用してオンラインの内容証明郵便で送付するしかありません)

▶ e内容証明 – 日本郵便

返金手数料は業者の負担となる

以上のように、「この仕事(内職・在宅ワークを含む)の紹介を受けるためには登録料の支払いが必要となります」などと言われて高額な登録料その他の手数料等を請求される契約は”業務提供誘引販売取引”としてクーリングオフによって契約を解除することが可能です。

そして、このクーリングオフ制度では、仮に契約解除に伴って業者側に損害が発生した場合であっても、業者側は消費者にその損害賠償を請求することはできず、また、登録料の返金手数料などもすべて業者側の負担とされていますから、クーリングオフする消費者の方としては金銭的な負担をせずに契約を解除することができます(特定商取引法第58条1項後段および3項)。

【特定商取引法第58条】

第1項 (省略)この場合において、その業務提供誘引販売業を行う者は、その業務提供誘引販売契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
第2項 (省略)
第3項 第2項の業務提供誘引販売契約の解除があつた場合において、その業務提供誘引販売契約に係る商品の引渡しが既にされているときは、その引取りに要する費用は、その業務提供誘引販売業を行う者の負担とする。

なお、悪質な業者によっては「解約するなら違約金を払え」などと言って解約を妨害するところもあるようですが、クーリングオフを利用した場合はそのような賠償をしなければならない義務は一切ありませんので、業者の口車に乗せられて無駄なお金を支払ったりしないように注意することが必要です。

登録料等の支払いをクレジットカード払いにしている場合

以上のように、内職商法や在宅、モニター商法などによって登録料(その他保証料や手数料)を支払っている(または請求されている)場合にはクーリングオフによって契約を解除することができますが、その登録料等の支払いをクレジットカード払いにしている場合にはクレジットカード会社に対して”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”と呼ばれる手続をしなければクレジットカード会社からの請求を拒むことができません。

この”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”の手続きについての詳細はこちらのページでレポートしていますので、支払いにクレジットカードを利用している場合には参考にしてください。

▶ 求人広告商法でクレジットカード会社からの請求を拒否する方法