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宅建業者の不実告知を理由に行政処分を求める際の申出書の記載例

このページでは、宅建業者(不動産業者)から不動産(土地・建物等)を購入した場合に、業者側の説明に不実告知(事実とは異なる説明)があったことを理由として、都道府県知事に違法行為の情報提供(告発・申告)を行う場合の申出書の記載例を公開しています。

※なお、悪質な宅建業者(不動産業者)に対して監督官庁の行政処分を促す具体的な手段や方法などについてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

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宅地建物取引業者(不動産業者)から不動産を購入した場合に、業者側の説明に不実告知(事実とは異なる説明)があったことを理由に、都道府県知事に対して違法行為の情報提供を行う場合の申出書の記載例


申出書

平成〇年〇月○日

東京都知事 殿

氏名 打田江留造  ㊞         
 住所 神奈川県〇市〇〇1丁目-〇 〇号室
 電話番号 080-****-****      

 下記のとおり、不動産取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、宅地建物取引業法第65条に基づき適切な指示を取られるよう、申出(情報提供)いたします。

1.申出に係る事業者

 所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
 名称:株式会社悪徳デベロップメント(以下、「事業者」という)
 登録番号:東京都知事免許(1)第〇〇〇〇〇号

2.申出に係る取引の態様

 事業者の営業所における対面取引

3.申出の趣旨

 申出人は○月上旬、以前から購入を検討していた土地について、家屋を建築する部分が崖に接近しているため、「特別な工事を施さないと住宅の建設が難しいのではないか」と感じていたことから、事業者の担当者(以下「担当者」という)に対して、建築に支障はないかという点の説明を求めたが、担当者から「近くに崖がありますが、この土地なら大丈夫です」という回答を受けたため、申出人はそれを信じて当該宅地の購入を申し込み、手付金〇〇万円を支払った。
 しかし、その後建築業者と家屋の建築についての打ち合わせを始めてみると、当該土地に住宅を建築する場合は崖の部分の崩落防止工事を行われなければ建築は不可能であることが判明した。
 これに対し事業者は、「目的の土地のすぐ横に崩落の恐れがあることの説明は事前に行っているから問題ない」と回答するのみで、手付金を放棄することによる手付解除には応じるが契約の取消には応じられないと主張して手付金を返還しようとしない。
 しかしながら、このような事業者の説明は「崩落工事を施さないと家屋の建築ができない土地である」という重要事項について「不実のことを告げる行為」があったものというべきであって、宅地建物取引業法第47条に違反するものである。
 以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。

4.その他参考となる事項

※参考資料として次の資料を添付いたします。
・契約書の写し   1通

以上


※業者の登録番号(免許の番号)がわからない場合は「業者の登録番号」は記載しなくても構いません。

 

申出書の記載の要点

申出書の根拠法令

上記の申出書は、悪質な宅建業者(不動産業者)に関して、監督官庁である都道府県知事に対して、行政指導などを行うよう情報提供をする場合の記載例となります。

宅建業者(不動産業者)の違法行為の場合、一般の訪問販売業者の違法行為のように違法行為の申出制度(特定商取引法第60条所定の申出制度)は存在しないため、あくまでも宅建業者(不動産業者)が違法行為を行っているということを「情報提供」するだけの書面となります。

なお、悪質な宅建業者(不動産業者)に対して監督官庁の行政処分を促す具体的な手段や方法などについてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

 

申出書の提出先

宅建業者(不動産業者)の違法行為を情報提供する相手先は、宅建業者(不動産業者)の監督官庁となっている「国土交通大臣」または「都道府県知事」となります。

上記の事例では「東京都知事免許(1)第〇〇〇〇〇号」という業者の違法行為を情報提供するものですので、その監督官庁である「東京都知事」を名宛人として作成しています。

もっとも、法律上、特定の都道府県の区域内で営業している宅建業者(不動産業者)についてはその都道府県以外の都道府県や国土交通大臣から免許を受けた業者であっても、その実際に営業を行っている都道府県知事が調査や行政処分を行うことが認められていますので(宅地建物取引業法第65条第3項及び第4項)、悪質な宅建業者(不動産業者)から法律違反行為を含む営業を受けたのが消費者の住所地である場合には、消費者の住所地の都道府県の都道府県庁に宛てて情報提供しても問題ないと思われます。

なお、この点についても詳細はこちらのページで解説していますので参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

 

申出書記載の要領

上記の申出書は法律の規定に基づいたものではなく単なる情報提供に過ぎませんので、記載要領に決まりはありません。

もっとも、上記で例示したような監督官庁に対する情報提供は、特定商取引法第60条に基づく申出と同じ趣旨のものとなりますので、特定商取引法第60条の申出の際に使用する申出書と同じように「申出人の氏名又は名称及び住所」「申出に係る取引の態様」「申出の趣旨」「その他参考となる事項」の4項目を記載するものとして作成しています(特定商取引法施行規則第57条)。

 

①「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄の書き方

「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄には、申出を行う人の氏名と住所を記載します。

前述したようにこの申出書は法令に基づかない単なる情報提供に過ぎませんので、申出人の氏名と住所を記載することが必ずしも必要というわけではありません。

しかし、匿名で情報提供を行うよりも、氏名を公にして申し出る方が監督官庁としても違法行為の信ぴょう性は高いと判断するでしょうし、調査を行うに際しても事実関係の聴取などができると考えましたので、上記の記載例では申出人の氏名と住所を記載するものとして作成しています(※勿論単なる情報提供に過ぎませんので名前を知られたくない場合は匿名で提出しても構いません)。

なお、上記の申出書は単なる情報提供に過ぎませんので、悪質な宅建業者(不動産業者)の違法行為で直接被害を受けた被害者本人だけでなく、その家族や友人、親戚等被害者以外の人が申出書を作成して申出を行うことも可能です。

 

②「申出に係る取引の態様」の欄の書き方

「申出に係る取引の態様」の欄には、違法行為を行っている業者がどのような態様で顧客と取引を行っているかという点を記載します。

上記の事例では業者の店舗で説明を受けたことを想定して作成したので「事業者の営業所における対面取引」と記載していますが、その相手先業者の態様に応じて適宜書き換えてください(※電話で勧誘を受けた場合は「電話勧誘販売」など)。

 

③ 「申出の趣旨」の欄の書き方

「申出の趣旨」の欄には、業者がどのような法律違反行為を行っているか(業者のどのような法律違反行為で被害を受けているか)を具体的に記載します。

上記の事例では、宅地建物取引業法第47条で「宅地の利用の制限、環境等に関する事項で購入者の判断に重要な影響を及ぼす事項」について不実のことを告げる行為をすることが禁止されているにもかかわらず、「近くに崖がありますが、この土地なら大丈夫です」と回答して販売したことを事業主側の法律違反行為として行政処分を求める文章にしています。

【宅地建物取引業法第47条】

第1項 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
 1号 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
 イ~ハ(省略)
 ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
第2項~第3項(省略)

④ 「その他参考となる事項」の欄の書き方

「その他参考となる事項」の欄には、上記①②③の他に宅建業者(不動産業者)が違法行為を行っている事実を説明できるような事項を記載します。

基本的には業者の違法行為を説明できる事項であれば何を書いてもいいのではないかと思いますが、上記のように業者の違法行為を証明できる(又は推認できる)ような資料を箇条書きに記載すると良いのではないかと思います。

なお、”写し”を提出するのは、後日業者を相手取って裁判などを提起する必要が生じた場合に原本を提出してしまうと裁判の証拠として裁判所に提出することができなくなってしまうからです。

上記の情報提供はあくまでも同様の被害が拡大することを防止し、業者に対して行政処分が出されることを促すことが目的であって、行政機関が個別の被害者の救済のため代金の返還などを代行してくれるわけではありませんから、被害の損害回復については各被害者が個別に(多くの場合は弁護士などに依頼して)裁判などで対応するほかありませんので、証拠となるような資料の”原本”は手元に残しておく方が良いでしょう。

なお、業者の違法行為を証明したり推認させるような資料がない場合は添付書類を付ける必要はありませんし、その場合にはこの④の欄は削除しても構いません。