広告
広告

悪質な訪問販売・電話勧誘等の業者に行政処分を与える方法

訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売によって商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステやゴルフクラブの利用権など)の販売を行う業者が法律に違反する勧誘行為等を行った場合には、その業者は行政処分の対象となります。

そのため、このような悪質業者(悪徳企業)から悪質な勧誘を受けたり、その勧誘の結果不当な契約を結ばされてしまった場合には、監督官庁である行政機関に違法行為の申出を行うことによって、その業者に行政処分を出すよう求めることができます。

そこで今回は、悪質な訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売に行政処分を与えるにはどのような手順をとればよいかといった点について考えてみることにいたしましょう。

広告

違法行為の申出制度

前述したように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスなど、特定商取引法で規制される手法で商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除などのサービス)、権利の販売(エステやゴルフクラブの利用権など)を勧誘する業者が違法な行為を行った場合には、その違法行為を行った業者は業務停止などの行政処分の対象となります。

※なお、具体的にどのような業者の行為が行政処分の対象となる違法行為と判断されるかについてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 訪問販売や電話勧誘業者等が行政処分を与えられる場合とは?

そしてこの場合、消費者が経済的な損害を受けるおそれがある場合には、その直接の被害者でなくても、誰でも「主務大臣」に対してその法律に違法する行為を行っている業者について適正な措置をとるよう申出(申告・告発)することができます(特定商取引法第60条第1項)。

【特定商取引法第60条第1項】

何人も、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害されるおそれがあると認めるときは、主務大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。

この特定商取引法第60条の申出を受けた主務大臣は、その申し出の対象となる業者について調査を行い、不正な点がある場合には必ず行政処分等(営業停止など)の必要な措置をとらなければなりませんので、この申出制度を利用して悪質業者に行政処分を与え、悪質な業者を社会の経済活動から締め出すことが可能となります(特定商取引法第60条第2項)。

【特定商取引法第60条第2項】

主務大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。

特定商取引法第60条の申出の手順

(1)申出書を作成する

特定商取引法第60条の申出を行う場合は、必ず書面で申し出ることが法律で義務付けられていますので(特定商取引法施行規則第57条)、悪質業者の違法行為を主務大臣に告発する場合には、まず”申出書”を作成して主務大臣に提出する必要があります。

【特定商取引法施行規則第57条】

第1項 法第60条第1項 の規定により主務大臣に対して申出をしようとする者は、次の事項を記載した申出書を提出しなければならない。
 一  申出人の氏名又は名称及び住所
 二  申出に係る取引の態様
 三  申出の趣旨
 四  その他参考となる事項
第2項  前項の規定により提出する申出書は、様式第五によること。

なお、この申出書の様式も法律で法定されていますので、その様式で作成した申出書をプリントアウトして作成する必要があります。

なお、この申出書の雛型は消費者庁の以下のサイトからダウンロードすることができます。

▶ 特定商取引法施行規則第57条第2項の申出書(様式第五)|消費者庁

なお、申出書の記載例はこちらで探してください。

▶ 【書式例】行政機関への申出書 | 消費者トラブルねっと!

 

(2)申出書の提出先

① 消費者庁長官

特定商取引法第60条の申出は、条文上「主務大臣」に対して申し出ると規定されていますので、同条に基づく申出書も「主務大臣」に対して提出することになりますが、この場合の主務大臣とは「消費者庁長官」になりますので、違法行為の申出書も「消費者庁長官」を名宛人として作成し、消費者庁に提出することになります。

② 地方経済産業局長

①で解説したように、特定商取引法第60条の申出は「消費者庁長官」に提出するのが原則ですが、その違法行為を行っている業者が特定の地域で営業を行っている業者である場合には、その地域を管轄している「経済産業省」の出先機関である「地方経済産業局」の「局長」を名宛人として申出書を作成し、地方経済産業局に提出することも可能です。

例えば、大阪に営業所があるXという業者が近畿圏内だけで訪問販売や電話勧誘販売を行っている場合には、「消費者庁長官」に申出書を提出しても構いませんが、「近畿経済産業局長」を内宛人として申出書を作成し「近畿経済産業局」の担当部署に申出書を提出することもできます。

③ 都道府県知事

①②で説明したとおり、特定商取引法第60条の申出は「消費者庁長官」または「経済産業局長」に行うのが基本となります。

ただし、その業者が特定の都道府県の区域内で営業を行っている場合には、その業者が営業している都道府県の「知事」に対して告発を行うことも可能です(特定商取引法施行令第19条第4項)。

【特定商取引法施令第19条第4項】

訪問販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引及び訪問購入に係る取引に関する法第60条に規定する主務大臣の権限に属する事務で、当該都道府県の区域内における販売業者、役務提供事業者、統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者、業務提供誘引販売業を行う者又は購入業者の業務(連鎖販売取引電子メール広告受託事業者又は業務提供誘引販売取引電子メール広告受託事業者が受託して行うものを含む。)に係るものは、都道府県知事が行うこととする。ただし、主務大臣が自らその事務を行うことを妨げない。

例えば、東京都内でのみ営業を行っている訪問販売業者について特定商取引法第60条の申出を行う場合には、「消費者庁長官」ではなく「東京都知事」を名宛人として申出書を作成し、「東京都庁」の担当部署に申出書を提出することができます。

④ 消費者庁長官・地方経済産業局長・都道府県知事のいずれに申出書を出すべきか?

上記の①②③で説明したとおり、特定商取引法第60条の申出は「消費者庁長官」「地方経済産業局長」「都道府県知事」のいずれかに提出することになります。

ではこの場合、この「消費者庁長官」「地方経済産業局長」「都道府県知事」のいずれに提出するべきかというと、法律上は主務大臣の権限が都道府県知事に移管されていることになっていますので、一般的にはその業者の被害に遭った人が居住している都道府県の「都道府県知事」に申し出るのが良いのではないかと思います。

前述したように、特定の都道府県で営業している業者については、その営業している都道府県の知事に対して申出ができますので、訪問販売であろうと電話勧誘販売であろうと、キャッチセールスであろうと、その被害に遭う場所は通常被害者の居住している自宅のある都道府県内であることが通常ですから、被害に遭った(又は迷惑行為を受けた)その場所である、自分の住所地の都道府県知事に対して申出書を提出すれば問題ないということになります。

 

(3)申出書の具体的な提出先(担当部署の住所)

以上のように、特定商取引法第60条の申出に関する申出書は、悪質な勧誘を受けたり契約を結ばされた都道府県の都道府県知事(または消費者庁長官・地方経済産業局長)に提出することが必要ですが、その場合、具体的に都道府県庁(または消費者庁・地方経済産業局)のどの部署に提出すればよいかという点が問題となります。

この点、この特定商取引法第60条の申出に係る申出書を提出するのが「都道府県知事」の場合は「各都道府県庁に設置されている特定商取引法担当課」が、「消費者庁長官」の場合には「消費者庁の取引対策課」が、「経済産業局長」の場合には「各地域を管轄する経済産業局の産業部消費経済課」が具体的な申出書の提出先となります。

違法行為の申出(告発)先具体的な告発(申告)場所
 都道府県知事 各都道府県庁に設置されている特定商取引法担当課
 消費者庁長官 消費者庁の取引対策課
 経済産業局長 各地域を管轄する経済産業局の産業部消費経済課

 

なお、このそれぞれの提出先の具体的な部署名や住所は以下のとおりです(※2016年現在)。

都道府県知事に申出する場合

担当部署名郵便番号申出書の送付先住所
各都道府県
特定商取引法担当課
日本産業協会のサイトに一覧表が掲載されています
申出制度のページ】【申出先(pdf)

消費者庁長官に申出する場合

担当部署名郵便番号申出書の送付先住所
消費者庁取引対策課100-8958東京都千代田区霞が関3-1-1中央合同庁舎第4号館7階

地方経済産業局長に申出する場合

担当部署名郵便番号申出書の送付先住所
北海道経済産業局
産業部消費経済課
060-0808北海道札幌市北区八条西2-1-1
東北経済産業局
産業部消費経済課
980-8403宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
関東経済産業局
産業部消費経済課
330-9715埼玉県さいたま市中央区新都心1-1
中部経済産業局
産業部消費経済課
460-8510愛知県名古屋市中区三の丸2-5-2
近畿経済産業局
産業部消費経済課
540-8535大阪市中央区大手前1-5-44
中国経済産業局
産業部消費経済課
730-8531広島市中区上八丁堀6-30
四国経済産業局
産業部消費経済課
760-8512香川県高松市サンポート3-33
九州経済産業局
産業部消費経済課
812-8546福岡市博多区博多駅東2-11-1
沖縄経済産業局
産業部消費経済課
900‐0006沖縄県那覇市おもろまち2‐1‐1

 

匿名で特定商取引法第60条の申出をすることができるか

以上のように、特定商取引法第60条の申出は、その法定された様式で作成した申出書を都道府県知事(又は消費者庁長官・地方経済産業局長)に提出して行うことが可能です。

この場合、申出を行う人の氏名を隠して(匿名で)申出を行うことができるか、という点が問題となりますが、前述したように特定商取引法施行規則第57条では、申出書に「申出人の氏名又は名称及び住所」を記載しなければならないと定められていますので(特定商取引法施行規則第57条)、仮に匿名で申出書を作成してしまった場合(申出書に申出する人の氏名を記載しなかった場合)には、この特定商取引法施行規則第57条の要件を満たさないことになります。

そのため特定商取引法第60条の申出の要件を満たしていないということになり、その申し出は「特定商取引法第60条の申出」とは認められないことになるでしょう。

この場合、その申出はどうなるかというと、特定商取引法第60条の申出の要件を満たさないため、単なる「情報提供」として処理されることになると思われます。

前述したように「特定商取引法第60条の申出」の場合には申出を受けた行政庁は”必ず”調査や必要な措置をとらなければなりませんが(特定商取引法第60条第2項)、「情報提供」として処理される場合は行政庁にそのような義務は生じませんので、調査や措置を行うかは行政庁の(もっと言えば申出書を受け取った県庁等の職員の)判断次第となります。

なので、悪質な業者に必ず何らかのペナルティーを与えたいと思う場合には、匿名で申し出るのではなく、申出人として自分の氏名・住所を記載して申出を行うことが必要といえるでしょう。