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訪問販売等の業者の「迷惑を覚えさせる仕方」での勧誘の具体例

訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスにより、商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステやゴルフクラブの利用権など)の勧誘を行う業者が、「迷惑を覚えさせる仕方」で契約を迫ったり、契約の解除(クーリングオフなど)を妨げることは法律で禁止されています(訪問販売等の場合→特定商取引法施行規則第7条、電話勧誘販売の場合→特定商取引法施行規則第23条)。

そのため、これらの勧誘を行う業者が「迷惑を覚えさせる仕方」で契約を迫ったり、契約の解除(クーリングオフ)を妨害したような場合には、その業者は法令違反を犯したということになりますから、監督官庁に申し出ることによりその業者に対して行政処分を与えるよう求めることも可能となります。

もっとも、条文上は単に「迷惑を覚えさせる仕方」としか規定されていませんので、具体的にどのような業者の言動が「迷惑を覚えさせる仕方」に該当するか明確ではありません。

そこで今回は、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者から、具体的にどのような言動による勧誘(又はクーリングオフの妨害)を受けた場合に「迷惑を覚えさせる仕方」で勧誘(又はクーリングオフの妨害)を受けたと判断されるのか、言い換えれば、これらの業者からどのような言動で勧誘(又はクーリングオフの妨害)を受けた場合に「迷惑を覚えさせる仕方」による勧誘(又はクーリングオフ妨害)を受けたとして行政処分を求めることができるのか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

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「迷惑を覚えさせる仕方」の判断基準

前述したように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスによって商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステやゴルフクラブの利用権など)の勧誘を行う業者が、「迷惑を覚えさせる仕方」で契約を迫ったり、契約の解除(クーリングオフなど)を妨げたりした場合には、その業者は法律違反として行政処分の対象となります(訪問販売等の場合→特定商取引法施行規則第7条、電話勧誘販売の場合→特定商取引法施行規則第23条)。

この「迷惑を覚えさせる仕方」が具体的にどのような言動をいうのかが問題となりますが、この点については経済産業省の出している通達にその解釈の基準が記載されていますので参考までに引用しておきます。

「迷惑を覚えさせるような仕方」とは、客観的にみて相手方が迷惑を覚えるような言動であれば良く、実際に迷惑と感じることは必要ではない。具体的には、正当な理由なく不適当な時間帯に(例えば午後9時から午前8時まで等)勧誘をすること、長時間にわたり勧誘をすること、執ように何度も勧誘をすること等はこれに該当することが多いと考えられる。」

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日(http://www.caa.go.jp/trade/pdf/130711legal_1.pdf)13頁より引用)

このように、経済産業省の通達では「迷惑を覚えさせる仕方」とは、世間一般の感覚で考えて消費者側が迷惑を覚えるような言動であれば良く、その消費者が実際に迷惑を受けたか(迷惑と感じたか)は必要ではないと考えられていますので、勧誘やクーリングオフの妨害を受けた消費者が実際に「迷惑を覚えたか」は問題ではなく、第三者的な立場から見て客観的にその業者の言動が「迷惑を覚えさせる仕方」であったかどうかがその判断基準として重要ということになります。

「迷惑を覚えさせる仕方」の具体例

①「午後9時~午前8時」の時間帯に訪問又は電話された場合

たとえば、前述の経済産業省の通達では「午後9時~午前8時」の時間帯は電話や訪問するのに”不適切な時間帯”と考えられていますから、業者が正当な理由がないのに「午後9時から午前8時まで」の時間帯に自宅を訪問したり、消費者の自宅や携帯に電話を掛けて勧誘やクーリングオフの妨害などを行った場合には、その業者の言動は「迷惑を覚えさせる仕方」と判断されて法律違反となります。

この場合、前述したように訪問や電話を受ける消費者の側が「実際に迷惑を受けたか」は問題ではなく、第三者的な立場から見て客観的にその時間帯が”不適切な時間帯”であったかが重要となりますので、たとえば午前10時から夕方の5時までの時間帯に就寝するような昼夜逆転の生活を送っている人が業者から「午後9時~午前8時」の時間帯に業者から訪問や電話を受けた場合であっても、客観的に第三者的視点から見れば「午後9時~午前8時」の時間帯は”不適切な時間帯”といえますから、そのような時間帯に訪問したり電話を掛けた業者は法令違反として行政処分の対象となります。

② 「長時間」の勧誘(又はクーリングオフ妨害)を受けた場合

前述の経済産業省の通達では「長時間にわたり勧誘をすること」も「迷惑を覚えさせる仕方」と考えられていますので、訪問販売の販売員から長時間にわたって勧誘を受けたり、電話を掛けてきた業者から長電話で勧誘されたりした場合には、その業者は「迷惑を覚えさせる仕方」で勧誘を行ったことになり、行政処分の対象となると考えられます。

また、クーリングオフ(契約解除)の通知書を送付したところ、販売員が自宅に押しかけてきて長時間にわたってクーリングオフを撤回するよう説得したような場合や、電話を掛けて長時間にわたってクーリングオフを撤回するよう説得したような場合にも、その業者は「迷惑を覚えさせる仕方」があったとして行政処分の対象となると思われます。

そして、この場合にも前述したように訪問や電話を受ける消費者の側が「実際に迷惑を受けたか」は問題とならず、単に業者の訪問や電話の長さが「客観的にみて相手方が迷惑を覚えるような時間」であったか否かで判断されますから、仮に勧誘やクーリングオフの妨害を受けた消費者がその「長時間」の勧誘や説得に「迷惑」を感じていなかったとしても、第三者的視点から見れば「長時間」と判断されるのであれば、その業者は行政処分の対象となります。

(※第三者的視点から見て具体的に何十分(何時間)以上であれば「長時間」と判断されるかはケースバイケースで判断されると思いますが、30分以上であれば客観的に「長時間」と判断されるのではないかと思われます(※ただしあくまでも私見です)。)

③「執拗に何度も」勧誘(又はクーリングオフ妨害)を受けた場合

前述の経済産業省の通達では「執拗に何度も」勧誘やクーリングオフの妨害を受けた場合には”客観的にみて相手方が迷惑を覚えるような言動”があったと判断されると考えられていますので、業者から「執拗に何度も」勧誘やクーリングオフの妨害を受けた場合には、その業者は「迷惑を覚えさせる仕方」で勧誘を行ったことになり、行政処分の対象になると考えられます。

この点、「具体的に何回」勧誘やクーリングオフを思いとどまるよう説得させられた場合に「執拗に何度も」に該当するかは明らかではありませんが、法律ではいったん契約を締結しない旨を意思表示した消費者に勧誘を継続することが禁じられていますから(※訪問販売につき特定商取引法第3条の2第2項、電話勧誘販売につき特定商取引法第17条※この点については『以後の勧誘が禁止される「契約を締結しない旨の意思表示」とは?』のページも参照)、2回以上勧誘(又はクーリングオフの妨害)のために自宅を訪れたり、2回以上電話を掛けるような業者は、「執拗に何度も」勧誘やクーリングオフの妨害を行ったものとして「迷惑を覚えさせる仕方」による言動を行ったとして行政処分の対象となるのではないかと考えられます。

④ その他の場合

上記以外にも、例えば電話による勧誘の場合には、電話の会話の中で行われる「迷惑を覚えさせるような仕方での勧誘(例えば、深夜や早朝の電話勧誘や長時間の電話勧誘、職場に電話を掛けてきて勧誘する場合など)」だけでなく、業者が電話の後に契約を迫るため(または契約の解除を思いとどまらせるため)自宅や職場まで押しかけて来るなどの行為に至った場合には、「迷惑を覚えさせる仕方」で勧誘をしたものと判断されます。

具体的には、深夜早朝や長時間の電話勧誘及び職場への電話勧誘については、相手方がそれを承諾しているケース等を除いて、「迷惑を覚えさせるような仕方での勧誘」に該当する場合が多いと考えられる。また、必ずしも電話の中で行われる行為に限られるものではなく、例えば電話勧誘販売に係る契約の解除を妨げるために職場に押しかけたりする行為はこれに該当し得る。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日(http://www.caa.go.jp/trade/pdf/130711legal_1.pdf)38頁より引用)

また、このほかにも、例えば訪問販売の説明を受けた数日後、勤務先の会社にまで訪れて契約を迫るような業者は「迷惑を覚えさせるような仕方」をとっていると判断できるでしょうし、契約を勧誘するため(又はクーリングオフを思いとどまらせる為)に顧客の実家を訪れたり顧客の実家にまで電話を入れるような業者も「迷惑を覚えさせるような仕方」をとっていると判断できると考えられます。

「迷惑を覚えさせるような仕方」で勧誘やクーリングオフの妨害を受けた場合

上記のように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者から「迷惑を覚えさせるような仕方」で勧誘やクーリングオフの妨害を受けた場合には、その業者は法律違反として行政処分の対象となりますから、監督官庁である消費者庁や都道府県に違法行為の申出を行うことにより、その業者に行政処分を与えるよう求めることが可能です。

業者に業務停止などの行政処分が出されれば、その業者からの勧誘は止むでしょうし、クーリングオフの妨害行為もなくなると考えられますから、監督官庁に違法行為の申出を行うこともトラブル解決方法の一つとして有効と考えられます。

なお、違法行為の申出を行う場合の具体的な方法や手順についてはこちらのページを

▶ 悪質な訪問販売・電話勧誘等の業者に行政処分を与える方法

また、上記のような「迷惑を覚えさせる仕方」での勧誘(又はクーリングオフ妨害)を受けたことを理由として行政処分を求める場合の申出書の記載例についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 夜中や早朝に訪問・電話する業者への行政処分申出書の記載例

▶ 長時間の勧誘等を受けた場合の行政処分申出書の記載例

▶ 執拗に何度も勧誘を行う業者への行政処分申出書の記載例

▶ 業者が勤務先まで押しかけてきた場合の行政処分申出書の記載例