インターネット通販で商品を購入したにもかかわらず、購入した商品が送付されてこない場合、どのような対応を取れば良いでしょうか?
一般の店舗で商品を購入する場合は代金の支払いと引き換えに商品を受け取ることになりますから、「お金を払ったのに商品が受け取れない」といった問題は通常は発生しません。
しかし、インターネット通販に代表される通信販売の取引では、商品購入の申し込み時点で代金を支払ってしまうのが通常で、代金支払いが確認できた時点で業者から商品が郵送されるのが一般的です。
そのため、仮にその通販業者(販売業者)が詐欺業者であった場合、「お金を払ったのに商品が受け取れない」ということも発生する可能性があるのです。
そこで今回は、インターネット通販で商品を購入したにもかかわらず購入した商品が送付されてこない場合には、具体的にどのような対処を取れば良いか、といった点について考えてみることにいたしましょう。
商品を受け取っていない限りいつでも自由に契約を解除できる
インターネット通販など通信販売における取引を規定した特定商取引法では、インターネット通販などで商品を購入した消費者が、その商品を受け取ってから8日が経過するまでの間においては、業者側の承諾なく自由に契約を解除できる旨規定されています(特定商取引法第15条の2第1項※ただし特約で制限している場合を除く※同条但し書き)。
【特定商取引法第15条の2】
第1項 通信販売をする場合の商品(省略)について広告をした販売業者が当該商品(省略)の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(省略)は、その売買契約に係る商品の引渡し(省略)を受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(省略)を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合(省略)には、この限りでない。
第2項 (省略)
この点、インターネット通販で購入した商品が送付されてこない場合には「商品を受け取った日から起算して8日」という期限が永遠に続くことになりますから、購入者側はいつでも自由に一方的に契約を解除することが可能となります。
契約を解除すれば、商品の代金を受け取った通販業者は代金を受領する法律的な根拠を失うことになりますから、購入者は通販業者(販売業者)に対して「支払った代金を返せ!」と代金の返還請求をすることが可能となります。
なお、この場合の業者に対する契約解除通知書の記載例(ひな型)はこちらのページに掲載していますので興味がある方はそちらでご確認ください。
▶ ネット通販で商品が届かない場合の契約解除・取消通知書の記載例
クレジットカードを利用して商品を購入している場合
インターネット通販で購入した商品が送付されてこない場合に、その契約をクレジットカードを利用して購入している場合には、前述した特定商取引法第15条の2その他の法律に基づく解約を行っても、クレジットカード会社から割賦販売代金の支払い請求が来てしまうのが通常です。
そのため、クレジットカードを利用してインターネット通販で商品を購入したにもかかわらずその商品が送られてこない場合には、通販業者への解約通知とは別にクレジットカード会社に対する”抗弁権の接続”という手続きをとる必要があります。
なお、この”抗弁権の接続”の手続きは、クレジットカード会社に”抗弁権の接続(抗弁の対抗)”通知書を送付することで行うことができますが、この手続きの詳細についてはこちらのページでレポートしていますので気になる方はご一読ください。
▶ ネット通販詐欺でクレジットカード会社からの請求を拒否する方法
その他の方法で契約を解除または取り消す場合
上記のように、インターネット通販で商品を購入したにもかかわらず商品が送付されてこない場合は、特定商取引法第15条の2に基づいて契約を解除し、支払った代金の返還請求をすることが可能です。
しかし、この特定商取引法第15条の2に基づいて契約を解除することは特約で制限することができますから、業者によっては契約の時点で特定商取引法第15条の2に基づく契約の解除はできないとしているところもあるかもしれません。
そのため、通販サイトによってはこの特定商取引法第15条の2に基づく解約ができない場合がありますので、そのような場合は民法上の詐欺(民法第96条)を理由とする取消や錯誤(民法第95条)を原因とした無効を主張したり、債務不履行による契約の解除(民法第541条)などを検討する必要があるでしょう。
もっとも、これらの検討は弁護士または司法書士といった法律の専門家でないと判断が難しい点がありますので、業者のサイトに明確に「申し込み後の解約はできません」などと契約解除を制限する特約が表示されている場合には早めに弁護士や司法書士の事務所に相談に行く方が良いでしょう。