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宅建業者の勧誘で禁止される”威迫”と一般的な脅迫の違い

宅建業者(不動産業者)が不動産の売買や賃貸物件の説明を行う際、顧客に対して「威迫」を用いて勧誘をしたり契約の解除等を妨げることは法律で禁止されています(宅地建物取引業法第47条の2第2項)。

【宅地建物取引業法第47条の2】

第2項 宅地建物取引業者等は、宅地建物取引業に係る契約を締結させ、又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない。

仮に、宅建業者(不動産業者)の従業員が顧客に対して「威迫」ととられるような言動を取った場合には、その宅建業者は法律違反として行政処分の対象となりますから(宅地建物取引業法第65条第2項)、そのような「威迫」を受けた場合には、監督官庁である都道府県庁に苦情の申入れや違法行為の情報提供を行うことによって、その宅建業者(不動産業者)に対し行政処分を与えるよう促すことも可能です。

▶ 詳細は→悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

ところで、この宅建業者(不動産業者)が勧誘したり、契約の解除を妨げる手段として行うことが禁止される「威迫」とは、具体的にどのような行為を言うのか、皆さん理解していますでしょうか?

この宅地建物取引業法における「威迫」は、一般的に言う「脅迫」と同じように受け取られがちですが、刑法の脅迫罪(脅迫罪 – Wikipedia)などにいう「脅迫」とは若干異なり、少しでも不安や動揺を覚える言動があれば全て「威迫」となります。

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宅地建物取引業法第47条の2第2項にいう「威迫」とは?

宅地建物取引業法第47条の2第2項に規定される「相手方等を威迫してはならない」という文章の「威迫」とは、刑法犯罪などにいう「脅迫」とは意味合いが若干異なります。

宅地建物取引業法第47条の2第2項にいう「威迫」がどのような言動を意味するのか、という点については国土交通省が各都道府県に出している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」という文書にその解釈の指針が記載されています。

この点、この国土交通省の指針によれば、「相手方に不安の念を抱かせる行為」であれば全て「威迫」となり、その言動は「相手方に恐怖心を生じさせるまで」のものである必要はないとされています。

具体的には、不動産業者の従業員が「なぜ会わないのか」とか「契約しないと帰さない」などと大声を出したり、面会を強要したり、拘束するなどして顧客が”動揺”するような行為があれば、たとえそれによって顧客が”恐怖心”を抱かなかったとしても、全て「威迫」となり行政処分の対象となると考えられているようです(※国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成27年7月19日以降)」)。

第47条の2第2項関係
威迫行為の禁止について
契約を締結させるため、又は契約の解除若しくは申込みの撤回を妨げるため、相手方を威迫する行為の禁止である。相手方を威迫する行為とは、脅迫とは異なり、相手方に恐怖心を生じさせるまでは要しないが、相手方に不安の念を抱かせる行為が該当する。例えば、相手方に対して、「なぜ会わないのか」、「契約しないと帰さない」などと声を荒げ、面会を強要したり、拘束するなどして相手方を動揺させるような行為が該当する。

(※国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成27年7月19日以降)」34頁より引用)

顧客が”不安の念”を抱いたり”動揺”するような言動があれば、その顧客が”恐怖心”を抱かなくても「威迫」となり得るのですから、これら以外にも例えば「不動産屋で数人の従業員に取り囲まれた」とか「不動産屋から出ようとすると出口に立ち塞がれた」とかでも顧客としては”不安の念”を抱いたり”動揺”したりするため「威迫」となり行政処分の対象となるでしょう。

また、電話による勧誘で「今からそっち行くわ」とか「あんたの勤務先(学校)知ってるよ」とか「子供の学校〇〇だってね」とかいう言動も、顧客としては”不安の念”を抱いたり”動揺”したりするため「威迫」となり行政処分の対象となると考えられます。

このように、宅地建物取引業法第47条の2にいう「威迫」とは、一般的に言う「強迫」よりもその射程はかなり広く、顧客側が少しでも”不安”を感じたり、”動揺”したりするような言動があれば、それは全て「威迫」と判断されて行政処分の対象となります。

ですので、電話で宅建業者から不動産の勧誘を受けたり、賃貸マンションやアパートの物件探しに不動産屋の店舗を訪れた際に、このような少しでも「不安」を感じたり「動揺」するような言動を受けた場合は、その業者は100%悪質業者と断定できますので、絶対にそのような業者と契約しないように注意が必要です。

 

実際に宅建業者(不動産業者)から「威迫」を受けた場合は?

宅建業者(不動産業者)から実際に上記のような「威迫」を受けた場合には、可能な限り監督官庁である都道府県知事に苦情の申入れや違法行為の情報提供を行う方が良いでしょう。

そこまですると「”モンスタークレイマー”の仲間入りになるのでは?」と思うかもしれませんが、そのような悪質業者を放置しておくと、その後にその業者を利用した顧客が必ず悪質業者のトラブルに巻き込まれ、大きな経済的損失を受けてしまう可能性が高いです。

また、不動産取引はその他の商品より取引に要する金額が高額になるのが通常ですから、このような悪質業者には積極的に行政処分を出してもらい、市場から退場してもらうのが社会の為と言えますので、出来る限り監督官庁である都道府県知事に情報提供を行うべきではないかと思います。

なお、実際に都道府県知事に違法業者の情報提供をする場合はこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法