このページでは、宅建業者(不動産業者)から不動産(土地・建物等)の購入についての説明(勧誘)を受けた際に、宅建業者の担当者から威迫(脅迫等)を受けたことを理由に、都道府県知事に違法行為の情報提供(告発・申告)を行う場合の申出書の記載例(ひな型・書式・文例)を公開しています。
※なお、悪質な宅建業者(不動産業者)に対して監督官庁の行政処分を促す具体的な手段や方法などについてはこちらのページを参考にしてください。
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宅地建物取引業者(不動産業者)から威迫(強迫)を受けたことを理由に、都道府県知事に対して違法行為の情報提供を行う場合の申出書の記載例
申出書
平成〇年〇月○日
広島県知事 殿
氏名 打田江留造 ㊞
住所 山口県岩国市〇〇1丁目-〇 〇号室
電話番号 080-****-****
下記のとおり、不動産取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、宅地建物取引業法第65条に基づき適切な指示を取られるよう、申出(情報提供)いたします。
記
1.申出に係る事業者
所在地:広島市中区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
名称:株式会社強引デベロップメント(以下、「事業者」という)
登録番号:広島県知事免許(1)第〇〇〇〇〇号
2.申出に係る取引の態様
店舗における対面取引
3.申出の趣旨
申出人は○月上旬、事業者のウェブサイトに掲載されていた投資用マンションの広告に興味があったことから、事業者の〇〇駅前支店に赴き、事業者の販売担当者である加江羅仙蔵(以下「担当者」という)から投資用マンションの購入に関する説明を受けた。
しかし、1時間ほど説明を受けたものの、修繕積立金や管理費用などの維持費に関する事項についての明確な説明がなかったことから、購入する意思がなくなったため、その旨を告げて退去しようと席を立った。
ところが、担当者は他の2人の従業員と3人で申出人を取り囲み、「ここまで説明したのに帰るとはどういうことだ」「買うつもりがあるからここまで来たんだろう」「買う気もないのに1時間も説明させたのか」などと大きな声で申出人に契約書にサインする執拗に勧誘を継続した。
しかしながら、宅建業者が威迫を用いて勧誘を行うことは宅地建物取引業法第47条の2第2項に、また顧客が購入する意思がないこと(又は勧誘を受けることを望まないこと)を明確に告知しているにもかからわず勧誘を継続することは、宅地建物取引業法施行規則第16条の12第1号(二)に該当し、宅地建物取引業法第47条の2第3項で禁止されている行為であるといえる。
以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。
4.その他参考となる事項
※参考資料として次の資料を添付いたします。
・事業者の担当者の名刺の写し 1枚
・担当者から執拗に勧誘を受けた際の会話を録音した音声記録 DVD-R 1枚
以上
※業者の登録番号(免許の番号)がわからない場合は「業者の登録番号」は記載しなくても構いません。
申出書の記載の要点
申出書の根拠法令
上記の申出書は、悪質な宅建業者(不動産業者)の法律違反行為について、監督官庁である都道府県知事に対し、行政指導を行うよう情報提供をする場合の申出書の記載例となります。
宅建業者(不動産業者)が違法行為を行っている場合、一般の訪問販売業者の違法行為のように違法行為の申出制度(特定商取引法第60条所定の申出制度)は存在しないため、あくまでも宅建業者(不動産業者)が違法行為を行っているということを監督官庁に「情報提供」するだけの書面となります。
なお、悪質な宅建業者(不動産業者)に対して監督官庁の行政処分を促す具体的な手段や方法などについてはこちらのページを参考にしてください。
申出書の提出先
宅建業者(不動産業者)の違法行為を情報提供する相手先は、宅建業者(不動産業者)の監督官庁となっている「国土交通大臣」または「都道府県知事」となります。
上記の事例では「広島県知事免許(1)第〇〇〇〇〇号」という業者の違法行為を情報提供するものですので、その監督官庁である「広島県知事」を名宛人として作成しています。
もっとも、法律上、特定の都道府県の区域内で営業している宅建業者(不動産業者)についてはその都道府県以外の都道府県や国土交通大臣から免許を受けた業者であっても、その実際に営業を行っている都道府県知事が調査や行政処分を行うことが認められていますので(宅地建物取引業法第65条第3項及び第4項)、悪質な宅建業者(不動産業者)から法律違反行為を含む営業を受けたのが消費者の住所地である場合には、消費者の住所地の都道府県の都道府県庁に宛てて情報提供しても問題ないと思われます。
なお、各都道府県庁の具体的な送付先や、監督官庁からの行政処分を促す手順などについても詳細はこちらのページで解説していますので参考にしてください。
申出書記載の要領
上記の申出書は法律の規定に基づいたものではなく単なる情報提供に過ぎませんので、記載要領に特定の決まりはありません。
もっとも、上記で例示した監督官庁に対する情報提供は、特定商取引法第60条に基づく申出と同じ趣旨のものとなりますので、特定商取引法第60条の申出の際に使用する申出書と同じように「申出人の氏名又は名称及び住所」「申出に係る取引の態様」「申出の趣旨」「その他参考となる事項」の4項目を記載するものとして作成しています(特定商取引法施行規則第57条)。
①「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄の書き方
「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄には、申出を行う人の氏名と住所を記載します。
前述したようにこの申出書は”情報提供”に過ぎませんので、必ずしも申出人の氏名と住所を記載しなければならないわけではありません。
しかし、匿名で情報提供を行った場合、監督官庁の方でも「いたずら」の可能性が否定できませんし、監督官庁が調査を行うに際しても、匿名の情報提供ではその事実関係の聴取などができず、調査にとりかかるのに躊躇する場合も考えられますので、氏名を公にして情報提供する方が監督官庁が調査や行政指導を行う確率は高くなると思います(※もちろん、単なる情報提供に過ぎませんので名前を知られたくない場合は匿名で提出しても構いません)。
なお、上記の申出書は単なる情報提供の域を出ませんので、悪徳宅建業者(不動産業者)の違法行為で直接被害を受けた被害者本人だけでなく、その家族や友人、親戚等被害者以外の人が申出書を作成し提出しても問題ありません。
②「申出に係る取引の態様」の欄の書き方
「申出に係る取引の態様」の欄には、違法行為を行っている業者がどのような態様で顧客と取引を行っているかという点を記載します。
上記の事例では”事業者の支店”に自ら赴いて投資用マンションの説明を受けた場合を想定していますので「店舗における対面取引」と記載していますが、その事案に応じて不動産業者の取引の態様ごとに適宜書き換えてください(※たとえば電話で勧誘を受けた場合は「電話勧誘販売取引」など)。
③ 「申出の趣旨」の欄の書き方
「申出の趣旨」の欄には、業者がどのような法律違反行為を行っているか(業者のどのような法律違反行為で被害を受けているか)を具体的に記載します。
上記の事例では、宅地建物取引業法第47条の2第2項で「威迫を用いて契約を締結させること」が禁止されているにも関わらず、他の従業員と取り囲んで契約を迫ったこと、また、宅地建物取引業法第47条の2で適用する宅地建物取引業法施行規則第16条の12第1号(二)で「契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること」が禁止されているにもかかわらず、申出人が契約をしない旨告知した後も勧誘を継続したことを理由として、事業者側の法律違反行為について行政処分を求める文章にしています。
【宅地建物取引業法第47条の2】
第1項(省略)
第2項 宅地建物取引業者等は、宅地建物取引業に係る契約を締結させ、又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない。
第3項 宅地建物取引業者等は、前2項に定めるもののほか、宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であつて、第35条第1項第14号イに規定する宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令・内閣府令で定めるもの及びその他の宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない。
【宅地建物取引業法施行規則第16条の12】
法第47条の2第3項の国土交通省令・内閣府令及び同項の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
1号 宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をすること。
イ~ハ(省略)
ニ 宅地建物取引業者の相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること。
ホ~ (省略)
なお、宅建業者(不動産業者)がこのような威迫(強迫)を用いて勧誘を続けた結果契約をしてしまった場合にはその契約は取り消すことができますが、その場合の取消方法などはこちらのページで解説していますので参考にしてください。
▶ 不動産の購入をクーリングオフできない場合に契約を取消す方法
※なお、宅建業法にいう「威迫」と一般的に言う「脅迫」は若干異なります。
④ 「その他参考となる事項」の欄の書き方
「その他参考となる事項」の欄には、上記①②③の他に宅建業者(不動産業者)が違法行為を行っている事実を説明できるような事項を記載します。
基本的には業者の違法行為を明らかとするために参考となる事項であれば何を書いても良いと思いますが、上記のように業者の違法行為を証明できる(又は推認できる)ような資料を箇条書きに記載すると良いのではないかと思います。
上記の記載例では、実際に威迫(強迫)を行った宅建業者の販売員が”誰”であったのかを明らかにするため「名刺の写し」を、また、宅建業者の販売員が「乱暴な言葉で執拗に勧誘を迫ったこと」、また「長時間の勧誘や申出人を困惑させる方法で勧誘を続けたこと」を明らかにするために、「販売員から執拗に勧誘を受けた際の会話を録音した音声記録」をそれぞれ添付することにしています。
なお、”写し”を提出するのは、後日業者を相手取って裁判などを提起する必要が生じた場合に原本を提出してしまうと裁判の証拠として裁判所に提出することができなくなってしまうからです。
上記の情報提供はあくまでも同様の被害が拡大することを防止し、業者に対して行政処分が出されることを促すことが目的であって、行政機関が個別の被害者の救済のため代金の返還などを代行してくれるわけではありませんから、被害の損害回復については各被害者が個別に(多くの場合は弁護士などに依頼して)裁判などで対応するほかありませんので、証拠となるような資料の”原本”は手元に残しておく方が良いでしょう。
なお、業者の違法行為を証明したり推認させるような資料がない場合は添付書類を付ける必要はありませんし、その場合にはこの④の欄は削除しても構いません。