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勧誘前に業者名・勧誘する事・商品の種類を告げない業者は違法?

訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスにより、商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステやゴルフクラブの利用権など)の勧誘を行う業者は、その勧誘に先立って、「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を勧誘をしようとする消費者に対して告知することが義務付けられています(訪問販売の場合→特定商取引法第3条、電話勧誘販売の場合→特定商取引法第16条)。

【特定商取引法第3条】

販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立って、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない。

【特定商取引法第16条】

販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売をしようとするときは、その勧誘に先立って、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品若しくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げなければならない。

そのため、この規定に違反して、勧誘に先立って「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知しなかった場合には、その業者は法律に違反するものとして、行政処分の対象として処罰されることになります(特定商取引法第7条、特定商取引法第22条)。

【特定商取引法第7条】

主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第3条(省略)に違反(省略)した場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。

【特定商取引法第22条】

主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第16条(省略)に違反(省略)した場合において、電話勧誘販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。

ところで、この特定商取引法第3条と16条に規定された「勧誘に先立って」とは、具体的に”何時”のことを指しているか、皆さんお判りでしょうか?

また、業者に告知することが義務付けられている「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項とは、具体的にどのような内容を指すのか理解しているでしょうか?

この法律は業者の態様を規制するためのものですので、消費者である我々一般市民はそこまで理解する必要はないとも思えますが、どのような勧誘を行う業者が悪質業者であるかを見分けるためにも、消費者である我々がこの「勧誘に先立って」の意味や、業者に告知することが義務付けられている「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項の内容を理解しておくことは非常に重要です。

そこで今回は、この訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が勧誘を行う際に、業者に義務付けられる告知義務の内容について、詳しく解説していくことにいたしましょう。

※なお、勧誘を行う業者が宅建業者(不動産業者)の場合(土地や建物、賃貸物件などの勧誘の場合)については、こちらのページを参考にしてください。

▶ 業者名・担当者名・勧誘する旨を事前告知しない宅建業者は違法?

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「勧誘に先立って」とは?

前述したように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が勧誘を行う場合には、その”勧誘に先立って”、「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項について、勧誘をしようとしている顧客に告知しなければなりません。

この場合の”勧誘に先立って”が具体的に”何時”のことを指しているのかは法律の条文上は明確ではないため、条文だけでは判断することはできませんが、この点については経済産業省が出している通達にその解釈の指針が記載されていますので、その通達を参考に「勧誘に先立って」が具体的に”何時”のことを指すのか考えてみましょう。

経済産業省が出している通達では、この「勧誘に先立って」の解釈については、次のように考えられています。

【※訪問販売(キャッチセールスやアポイトメントセールスを含む)の場合】

商品もしくは権利の販売又は役務の提供の目的で、契約締結のための勧誘行為を始めるに先立って、の意味である。
ここでいう「勧誘行為を始めるに先立って」とは、相手方が勧誘を受けるか拒否するかを判断する最初の重要な機会を確保できる時点と解することとなり、少なくとも勧誘があったといえる「顧客の契約締結の意思の形成に影響を与える行為」を開始する前に所定の事項につき告げなければならない。
 具体的には、個々のケース毎に判断すべきであるが、住居訪問販売の場合であれば、基本的に、インターホンで開口一番告げなければならず、またキャッチセールス又はアポイントメントセールスの場合においては、当初から勧誘行為が始められる場合が多いことから、基本的に、呼び止めたり、電話を掛けるなど相手方と接触した際に告げることとなる。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日6頁より引用)

【※電話勧誘販売の場合】

販売業者が電話をかけて勧誘を行う電話勧誘販売の場合であれば、通常は相手方がその電話に出たら開口一番で告げなければならない。したがって、知人を装って長々と世間話をしたりアンケートと称して会話に引き込んだ後に売買契約等の勧誘を行うことは本条の違反となる。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日33頁より引用)

このように、経済産業省の通達によれば、訪問販売の場合には、勧誘しようとしている顧客の玄関のインターホンを通じて顧客と話す時点で、電話勧誘販売の場合には顧客が電話に出た瞬間に、キャッチセールスの場合には顧客を呼び止める時点で、”開口一番”に「業者の名称」「勧誘する目的があること」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知しないといけない法律に違反することになると考えられています。

そのため、例えば、浄水器の訪問販売業者がインターホン越しに「水道の点検にきました」と告知してドアを開けさせて勧誘を始めた場合には、”開口一番”に上記の3つの事項について告知していませんから、その業者は法律違反として行政処分の対象となります。

また、電話で健康食品の販売を行う業者が顧客に電話をした場合には、その勧誘電話に顧客が出て「もしもし」と言った時点ですぐに上記の3つの事項を告知しなければ法律違反となりますし、またアンケートや世間話などを装って会話を進めた後に勧誘を行う場合は、その業者は行政処分の対象になるということになります。

キャッチセールスの場合も同様で、ダイエット食品を販売する業者のキャッチセールス販売員が、表参道を歩いているギャルに声を掛けて勧誘する場合には「そこのお姉さん・・・」と声を掛けてそのギャルが振り向いた瞬間に上記の3つの事項について告知しなければ、「勧誘に先立って」告知したことにはならず、その業者は法律違反として行政処分の対象となるということになります。

 

「業者の氏名又は名称」とは?

前述したように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が勧誘を行う場合には、その”勧誘に先立って”、「業者の氏名又は名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知する必要がありますが、このうち、「業者の氏名又は名称」が具体的にどのような内容を指すのかという点についても、前に挙げた経済産業省の通達にその解釈の指針が記載されています。

なお、経済産業省が出している通達では、この「業者の氏名又は名称」の解釈については、次のように考えられています。

【※訪問販売(キャッチセールスやアポイトメントセールスを含む)の場合】

個人事業者の場合は、戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号、法人にあっては、登記簿上の名称であることを要する。例えば、会社の販売員が訪問した場合に当該販売員の氏名のみを告げることや、正規の名称が「㈱××商事」であるにもかかわらず、「〇〇公団住宅センター」や「〇〇アカデミー」等の架空の名称や通称のみを告げることは、本号にいう「氏名や名称」を告げたことにはならない。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日6頁より引用)

【※電話勧誘販売の場合】

電話勧誘販売においては、販売業者等が実際の勧誘を代行業者等他の者に委託する例が少なくないが、この場合に本条に基づき告げなければならないのは、販売業者等の氏名又は名称であって、代行業者の氏名又は名称ではない。

 「勧誘を行う者の氏名」とは、実際に電話による勧誘行為を行う者の氏名である

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日33頁より引用)

このように、経済産業省の通達によれば、個人事業主である場合にはその個人事業主を営む者の氏名を、その業者が法人(会社)の場合には「㈱〇〇」や「㈲◇◇」など正式名称を告知しなければなりません。

そのため、例えば浄水器の訪問販売業者が「管理会社さんの方からの紹介で来ました」などと告知して勧誘を始める場合には、開口一番に「業者の氏名又は名称」を告知したことにはなりませんから、その業者は法律違反として行政処分の対象となります。

なお、電話勧誘販売の場合には「業者の氏名又は名称」として『販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称』と『その勧誘を行う者の氏名』の2つを告知しないといけませんから、その業者の名称だけでなく、「その電話を掛けて勧誘する販売員の氏名」も告知しなければ法律違反となります。

例えば、健康食品を電話で勧誘する業者「株式会社X食品」に勤務している「押瓜太郎」と言う氏名の販売員が電話で勧誘を行う場合には、顧客が電話口に出て「もしもし」と言った瞬間に「わたくし株式会社X食品の押瓜太郎と申しますが・・・」と告知しなければならず、仮に「わたくし株式会社X食品の者ですが・・・」としか告知しなかった場合は”販売員の氏名”を告知していないため法律違反となります。

また、この場合、告知すべきは販売員の”氏名”とされていますので、「わたくし株式会社X食品の押瓜と申しますが・・・」としか告知しなかった場合には”氏名”のうち”氏(苗字)”しか告知していないことになりますので、この場合も法律違反として行政処分の対象となります。

 

「勧誘をする目的である旨」とは?

前述したように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が勧誘を行う場合には、その”勧誘に先立って”、「業者の氏名又は名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知する必要がありますが、このうち、「勧誘をする目的である旨」が具体的にどのような内容を指すのかという点についても、前に挙げた経済産業省の通達にその解釈の指針が記載されています。

この点、経済産業省が出している通達では、この「勧誘をする目的である旨」の解釈については、次のように考えられています。

【※訪問販売(キャッチセールスやアポイトメントセールスを含む)の場合】

「売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨」について具体的な告げ方としては、以下のような例が考えられる。
・「本日は、弊社の健康布団をお勧めにまいりました。」
・「水道管の無料点検にまいりました。損傷等があった場合には、有料になりますが、修理工事をおすすめしております。」

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日6~7頁より引用)

【※電話勧誘販売の場合】

「勧誘をするためのものであることを告げ」について、具体的な告げ方としては、以下のような例が考えられる。
・「本日は弊社の新型パソコンについてのご購入をお勧めするためお電話をさせて頂きました。」
・「行政書士講座の受講について勧誘のお電話をさせて頂きました。」

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日33~34頁より引用)

このように、経済産業省の通達によれば、勧誘する商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステの利用権やゴルフクラブの利用権など)などの種類を特定し、契約をすれば一定の経済的負担(費用・代金)が発生することを勧誘に先立って顧客に明確にする必要があります。

そのため、たとえば

「このたびこちらのエリアを担当させていただくことになり、あいさつに伺いました」
「近くで工事をやっているので、ついでに御宅の屋根も点検しましょうか」
「管理会社さんから紹介を受けて排水管の点検に来ました」
「前の施工業者から業務を引き継いだので、挨拶に来ました」

などと言った後にリフォームの勧誘を始めるような業者は法律に違反していることになりますし、「排水管の清掃をしませんか」などと勧誘して排水管の清掃のみを行った後に「念のため排水管に亀裂等がないか点検させてください」などと言って床下を点検し、その結果床下リフォームを勧誘する場合なども法律違反として行政処分の対象となることになります(※経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日7頁参照)

 

「商品もしくは役務・権利の種類」とは?

前述したように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が勧誘を行う場合には、その”勧誘に先立って”、「業者の氏名又は名称」「勧誘する目的があること」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知する必要がありますが、このうち、「勧誘する商品・役務・権利の種類」が具体的にどのような内容を指すのかという点についても、前に挙げた経済産業省の通達にその解釈の指針が記載されています。

この点、経済産業省が出している通達では、この「勧誘する商品・役務・権利の種類」の解釈については、次のように考えられています。

「商品若しくは権利又は役務の種類」について

例えば「化粧品」等商品等の具体的イメージがわかるものでなくてはならない。他方、個々の商品等の名前までを告げる必要はない。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日7頁より引用)

このように、経済産業省の通達においては、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が勧誘を行う場合には、その勧誘の目的である商品等の具体的なイメージが判然とするような表現でなければ「商品若しくは権利又は役務の種類」について告知したことにならないことになります。

そのため、例えば「化粧品」の勧誘をする業者の販売員が「アンチエイジング商品の勧誘なんですが」と告知したような場合には”アンチエイジングの商品”が具体的に何を指すのか(アンチエイジングといっても化粧品・サプリメント・健康器具・漢方薬など様々あるから)判然としませんから、そのような告知で勧誘を始める業者は違法業者として行政処分の対象となるでしょう。

 

その勧誘に先立って「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」を告知しない業者に行政処分を与えたい場合

以上のように、訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が勧誘を行う場合には、その勧誘に先立って「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知することが義務付けられていますから、仮に勧誘を受けた際に、その業者の販売員が勧誘に先立ってこれらの事項を告知しなかった場合には、その業者について行政処分を出すよう、監督官庁に申出を行うことが可能です。

仮にそのような業者に遭遇し、その業者に行政処分を与えてもらいたい場合は、書面で申出書を作成して監督官庁である主務大臣(消費者庁長官)や都道府県知事等に提出する必要があります。

なお、この申出の具体的な方法や手順、申出書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 悪質な訪問販売・電話勧誘等の業者に行政処分を与える方法

▶ 勧誘前に業者名等を告知しない宅建業者の行政処分申出書の記載例