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勧誘前に業者名等を告知しない業者の行政処分申出書の記載例

このページでは、訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売による商品・役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)・権利(エステの利用権やゴルフクラブの利用権など)の勧誘を受けた場合、および宅建業者(不動産業者)から不動産の購入等(賃貸契約も含む)の勧誘を受けた場合に、業者が勧誘に先立って「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」を告知しない場合に、その告知しなかったことを理由として、行政機関(主務大臣・地方経済産業局長・都道府県知事)に行政処分の申出(告発・申告)を行う場合の申出書の記載例を公開しています。

※なお、業者が勧誘前に告知しなければならない事項及び告知の際に必要な態様等などの詳細についてはこちらのページを参考にしてください。

訪問販売等の場合 → 勧誘前に業者名・勧誘する事・商品の種類を告げない業者は違法?

宅建業者の場合 → 業者名・担当者名・勧誘する旨を事前告知しない宅建業者は違法?

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勧誘に先立って「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」を告知しない業者について監督官庁に行政処分を出してもらうよう求める申出書の記載例

① 訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)の場合


申出書

平成〇年〇月○日

消費者庁長官 殿 ← ※”地方経済産業局長”や”都道府県知事”でもよい

氏名 川佐連麻衣  ㊞          
 住所 大阪市東淀川区〇〇1丁目-〇 〇号室
 電話番号 080-****-****       

 下記のとおり、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、適当な措置を取られるよう、特定商取引に関する法律第60条に基づき、申し出ます。

1.申出に係る事業者

 所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
 名 称:株式会社テキトー販売(以下、「事業者」という)

2.申出に係る取引の態様

 訪問販売

3.申出の趣旨

 申出人は○月上旬、自宅マンションにおいて事業者から派遣された訪問販売員(以下「販売員」という)より浄水器の訪問販売の勧誘を受けた。
 この勧誘の際、販売員はインターフォン越しに「今回こちらの地域を担当させていただくことになりました水道会社の者ですがご挨拶に伺いました」と言ってドアを開けさせ、「水道の水質を無料でチェックさせていただいております」と告知して浄水器の勧誘を始めている。
 しかしながら、訪問販売の態様によって勧誘を行う業者は、その勧誘に先立ってその「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項について告知しなければならず(特定商取引法第3条)、また、この「勧誘に先立って」とは住居訪問販売の場合であれば基本的にインターホンで開口一番に告知すべきであるといえるから(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日)、これを怠っている事業者は特定商取引法第3条に明らかに違反している。
 したがって、このような事業者の行為は、訪問販売によって商品等の勧誘を受ける消費者がその契約内容について正確に判断する機会を損なうものであるといえる。
 以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。

4.その他参考となる事項

特になし

以上


② 電話勧誘販売の場合


申出書

平成〇年〇月○日

消費者庁長官 殿 ← ※”地方経済産業局長”や”都道府県知事”でもよい

氏名 川佐連麻衣  ㊞          
 住所 大阪市東淀川区〇〇1丁目-〇 〇号室
 電話番号 080-****-****       

 下記のとおり、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、適当な措置を取られるよう、特定商取引に関する法律第60条に基づき、申し出ます。

1.申出に係る事業者

 所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
 名 称:株式会社テキトー販売(以下、「事業者」という)

2.申出に係る取引の態様

 電話勧誘販売

3.申出の趣旨

 申出人は○月上旬、事業者に勤務する販売員(以下「販売員」という)から電話による健康食品の勧誘を受けた。
 この勧誘の際、販売員は申出人が電話に出た途端に「今回は特別な割引キャンペーンのご紹介のためお電話いたしました」と言って健康食品の勧誘を始めている。
 しかしながら、電話勧誘販売の態様によって勧誘を行う業者は、その勧誘に先立ってその「業者の名称および勧誘を行う者の氏名」「契約の締結について勧誘をするためのものであること」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項について告知しなければならず(特定商取引法第16条)、また、この「勧誘に先立って」とは電話勧誘販売の場合は顧客が電話口に出た瞬間、開口一番に告知すべきであるといえるから(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日)、これを怠っている事業者は特定商取引法第16条に明らかに違反している。
 したがって、このような事業者の行為は、電話勧誘販売によって商品等の勧誘を受ける消費者がその契約内容について正確に判断する機会を損なうものであるといえる。
 以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。

4.その他参考となる事項

特になし

以上


③ 不動産の勧誘の場合


申出書

平成〇年〇月○日

〇〇県知事 殿

氏名 打田江留造  ㊞         
 住所 山口県岩国市〇〇1丁目-〇 〇号室
 電話番号 080-****-****      

 下記のとおり、不動産取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、宅地建物取引業法第65条に基づき適切な指示を取られるよう、申出(情報提供)いたします。

1.申出に係る事業者

 所在地:〇〇市〇区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
 名称:株式会社強引デベロップメント(以下、「事業者」という)
 登録番号:〇〇県知事免許(1)第〇〇〇〇〇号

2.申出に係る取引の態様

 店舗における対面取引

3.申出の趣旨

 申出人は○月上旬、事業者のウェブサイトに掲載されていた投資用マンションの広告に興味があったことから、事業者の〇〇駅前支店に赴き、事業者の販売担当者である◇◇(以下「担当者」という)から投資用マンションの購入に関する説明を受けた。
 しかしこの際、担当者は申出人が店内に入るとすぐにカウンターの席に座らせ、投資用マンションの資料を提示すると同時にすぐに勧誘を始めている。
 しかしながら、宅建業者が不動産に関する契約について勧誘する場合には、その勧誘に先立って「商号又は名称」「勧誘を行う者の氏名」「勧誘をする目的である旨」の3つの事項を告知する義務があり(宅地建物取引業法第47条の2第3項、宅地建物取引業法施行規則第16条の12第1号ハ)、この”勧誘に先立って”とは「物件の具体的な内容等について説明を開始する時点」すなわち、店舗における勧誘の場合には宅建業者の従業員が「物件の具体的な内容等について説明を開始する時点」を指すものと考えられるから(国土交通省の指針「平成23年9月16日国土動指第26号」、これを怠っている事業者は宅地建物取引業法に明らかに違反している。
 したがって、このような事業者の行為は、不動産の勧誘を受ける消費者がその契約内容について正確に判断する機会を損なうものであるといえる。
 以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。

4.その他参考となる事項

特になし

以上


※業者の登録番号(免許の番号)がわからない場合は「業者の登録番号」は記載しなくても構いません。

 

申出書の記載の要点

申出書の根拠法令

上記の①および②の申出書は特定商取引法第60条に基づく申出に関する申出書の記載例となります。

なお、特定商取引法第60条の申出手続の詳細についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な訪問販売・電話勧誘等の業者に行政処分を与える方法

不動産の勧誘について規制している宅地建物取引業法では、特定商取引法第60条に相当するような申出制度は法定されていませんので、宅建業者の勧誘に違法な点がある場合には③のような監督官庁に対する情報提供の申し出となります。

なお、宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える場合の具体的な方法や手順についてはこちらのページを参考にしてください。

悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

 

申出書の様式について

特定商取引法第60条に基づく申出で使用する申出書は法律で様式が定められています(特定商取引法施行規則第57条第2項)、上記の①と②の申出書はこの様式に沿って作成しています。

なお、特定商取引法第60条の申出書の雛型は消費者庁のサイトからダウンロードすることが可能です。

▶ 特定商取引法の申出制度|消費者庁

▶ 特定商取引法第60条に基づく申出書(様式第五)pdf|消費者庁

不動産の勧誘について規制している宅地建物取引業法では、前述したように特定商取引法第60条に相当するような申出制度は法定されていませんので③のような情報提供をする場合の申出書の様式も法定されていませんが、監督官庁に違法業者に行政処分を求めるという点では訪問販売などと違いはありませんので、上記の③の申出書も①②と同じような様式で作成しています。

 

申出書の提出先

訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)や電話勧誘販売による商品・役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)・権利(エステの利用権やゴルフクラブの利用権など)の勧誘を行う業者について特定商取引法第60条に基づく申出を行う場合は、申出書を「消費者庁長官」もしくは「地方経済産業局長」または「都道府県知事」に対して提出することが必要になります。

一方、土地や建物(不動産)の販売や賃貸契約に関する契約を勧誘する宅建業者について違法行為の情報提供を行う場合は、宅建業者の監督官庁である都道府県知事に申出を行うのが一般的です。

なお、具体的に監督官庁のどの部署に提出すればよいかという点や具体的な送付先についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 訪問販売等の場合 → 悪質な訪問販売・電話勧誘等の業者に行政処分を与える方法

▶ 宅建業者の場合 → 悪質な宅建業者(不動産業者)に行政処分を与える方法

 

申出書記載の要領

特定商取引法第60条に基づく申出書には、法令で「申出人の氏名又は名称及び住所」「申出に係る取引の態様」「申出の趣旨」「その他参考となる事項」の4項目を記載することが義務付けられていますので(特定商取引法施行規則第57条)、この4項目については必ず申出書に記載しておく必要があります。

【特定商取引法施行規則第57条】

第1項 法第60条第1項 の規定により主務大臣に対して申出をしようとする者は、次の事項を記載した申出書を提出しなければならない。
 一  申出人の氏名又は名称及び住所
 二  申出に係る取引の態様
 三  申出の趣旨
 四  その他参考となる事項
第2項  前項の規定により提出する申出書は、様式第五によること。

なお、申出書の法定されている様式(様式第五)では、これに加えて「申出に係る事業者」としてその違法行為を行っている業者の「所在地」と「名称」を記載することになっていますので、上記の記載例では「申出に係る事業者」の欄も記載することにしています

なお、宅建業者の違法性を情報提供する場合もこれと同様に考えられますので、上記の③についても「申出人の氏名又は名称及び住所」「申出に係る取引の態様」「申出の趣旨」「その他参考となる事項」の4点を記載するものとしています。

また、「申出に係る事業者」についても同様に記載するものとし、「業者の免許番号」も記載するものとしていますが、業者の免許番号が何番かわからない場合には免許番号は記載しなくても構いません。

①「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄の書き方

「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄には、申出を行う人の氏名と住所を記載します。

前述したように特定商取引法第60条に基づいて行政処分を促す申出をする場合は「申出人の氏名又は名称及び住所」を記載することが法律で義務付けられていますので(特定商取引法施行規則第57条)、匿名で申出することは基本的にできないと考えた方が良いでしょう。

自分の氏名や住所を伏せて申出を提出することも不可能ではありませんが、その場合は申出の要件を満たさないため役所の方でも法律上”特定商取引法第60条に基づく申出”として受理することはできず、”単なる情報提供”として処理されることになるのではないかと思います。

なお、宅建業者の違法性を情報提供する場合には単なる情報提供になりますから、申出人の氏名を記載しないで申し出ても良いと思いますが、匿名で申出を行うと「いたずら」と判断されて調査を行わない場合も有りますし、監督官庁が申出人に事実関係の確認をすることができませんから、支障がない限り申出人の氏名を記載しておいた方が良いのではないかと思います。

なお、特定商取引法第60条の申出は「何人も」申出を行うことができますので、悪質商法の被害に遭った被害者本人だけでなく、その家族や友人、親戚等被害者以外の人が申出書を作成して申出を行うことも可能です(宅建業者の違法性の情報提供も単なる”情報提供”に過ぎませんので、直接勧誘を受けた人以外の人でも情報提供の申し出をすることは差し支えありません)。

 

②「申出に係る事業者」の欄の書き方

「申出に係る事業者」の欄には、違法行為を行っている事業者の名称と住所を記載します。

この場合、事業者が法人(会社)の場合は登記簿上に記載されている業者の「名称」を、事業者が個人事業主の場合は「屋号」か「代表者の氏名」を記載します。

例えば、業者が株式会社の場合は「株式会社〇〇」と、業者が会社ではなく「悪質太郎」という人が個人事業主として営業しているものである場合には「悪質太郎」と、その悪質太郎が「悪質リフォームサービス」と言う屋号で営業している場合は「悪質リフォームサービス」と記載します。

 

③「申出に係る取引の態様」の欄の書き方

「申出に係る取引の態様」の欄には、違法行為を行っている業者がどのような態様で顧客と取引を行っているかという点を記載します。

上記の事例では①の記載例では訪問販売、②では電話勧誘販売、③では不動産屋の店頭で勧誘を受けた事案を例として挙げていますので「訪問販売」「電話勧誘販売」「店舗による対面取引」とそれぞれ記載していますが、その勧誘の態様に応じて適宜書き換えてください(※例えばキャッチセールスの場合は「キャッチセールス」など)。

 

④ 「申出の趣旨」の欄の書き方

「申出の趣旨」の欄には、業者がどのような法律違反行為を行っているか(業者のどのような法律違反行為で被害を受けているか)を具体的に記載します。

上記の事例では、訪問販売(又はキャッチセールス、アポイントメントセールス)においては「業者の名称」「勧誘をする目的である旨」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を、電話勧誘販売においては「業者の名称および勧誘を行う者の氏名」「契約の締結について勧誘をするためのものであること」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を、不動産の勧誘においては「商号又は名称」「勧誘を行う者の氏名」「勧誘をする目的である旨」の3つの事項を”勧誘に先立って”告知しなければならないにもかかわらず、それを告知せずに勧誘を始めたことを理由として事業主側の法律違反行為として行政処分を求める文章にしています。

なお、この勧誘に先立って告知しなければならない事項やその場合の告知する態様などについての詳細はこちらのページで解説しています。

▶ 訪問販売等の場合 → 勧誘前に業者名・勧誘する事・商品の種類を告げない業者は違法?

▶ 宅建業者の場合 → 業者名・担当者名・勧誘する旨を事前告知しない宅建業者は違法?

(※一般の商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステの利用権やゴルフクラブの利用権など)については訪問販売やキャッチセールス・アポイトメントセールス電話勧誘販売の態様による勧誘に限って上記の事項を告知する義務がありますが、不動産の勧誘の場合は訪問販売などだけでなく不動産業者の店舗での勧誘の場合にも上記の事項を告知する義務があります)

 

⑤ 「その他参考となる事項」の欄の書き方

「その他参考となる事項」の欄には、上記①~④の他に被害の事実を説明できるような事項を記載します。

基本的には被害の事実を説明できる事項であれば何を書いてもいいのではないかと思いますが、一般的には被害事実を証明できるような資料を箇条書きにしてその資料を申出書に添付することが多いようです。

 

もっとも、上記の記載例では「違法な(悪質な)勧誘を受けた」ことのみを理由に違法行為の申出や情報提供をする場合を例としていますので、特に業者の違法性を証明できる資料がない場合を想定し「特になし」と記載しています。

業者の勧誘を録音していたり動画で撮影している場合には「添付書類」として「業者の勧誘があった際の状況を録画した画像記録 DVD-R 1枚」などと記載して、その記録媒体を添付して提出しておけばよいでしょう。