このページでは、過量販売や次々商法などの悪質商法を行っている訪問販売業者について、主務大臣(又は地方経済産業局長・都道府県知事)に対し特定商取引法60条に規定された行政処分の申出(告発・申告)を行う場合の申出書の記載例を公開しています。
※なお、過量販売に関する特定商取引法第60条に基づく申出制度の利用方法についてはこちらのページを参考にしてください。
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過量販売を行っている訪問販売業者について主務大臣等に行政処分の申出を行う場合の申出書の記載例
① 過量販売の場合の申出書の記載例
申出書
平成〇年〇月○日
消費者庁長官 殿 ← ※”地方経済産業局長”や”都道府県知事”でもよい
氏名 琴和礼奈伊代 ㊞
住所 大阪市東淀川区〇〇1丁目-〇 〇号室
電話番号 080-****-****
下記のとおり、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、適当な措置を取られるよう、特定商取引に関する法律第60条に基づき、申し出ます。
記
1.申出に係る事業者
所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
名 称:株式会社オシツケ布団販売(以下、「事業者」という)
2.申出に係る取引の態様
訪問販売
3.申出の趣旨
申出人は○月上旬、自宅アパートにおいて事業者から派遣された訪問販売員(以下「販売員」という)より布団の訪問販売の勧誘を受け、羽毛布団セット(掛け布団1枚、敷布団1枚、シーツ2枚、枕1個)を3セット購入した。
しかしながら、申出人は1ルームのアパートに単身で居住する経済的に余裕のない生活状況であるから、常識的に考えれば1セット50万円ほどするような高級羽毛布団を購入しなければならない正当な理由は存在しない。
また、単身者が布団を購入する場合、その通常必要とされる数量は一人が使用するものとして1組(1セット)と考えるのが通常であるし、申出人の住居は1ルームの広さしかないのであるから複数の布団を敷くことは物理的に不可能なのであって、それを大幅に上回る3セットという数量を購入した契約は、日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約であったといえる。
したがって、このような事業者の行為は、特定商取引法第7条第3項に規定されたいわゆる過量販売の禁止に該当するものとして違法性のあるものであるといえる。
以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。
4.その他参考となる事項
※参考資料として次の資料を添付いたします。
・契約書の控えの写し 3通
・日本訪問販売協会発行の『通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安について』 1通
以上
② 次々商法の場合の申出書の記載例
申出書
平成〇年〇月○日
消費者庁長官 殿 ← ※”地方経済産業局長”や”都道府県知事”でもよい
氏名 琴和礼奈伊代 ㊞
住所 大阪市東淀川区〇〇1丁目-〇 〇号室
電話番号 080-****-****
下記のとおり、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、適当な措置を取られるよう、特定商取引に関する法律第60条に基づき、申し出ます。
記
1.申出に係る事業者
所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
名 称:株式会社オシツケ着物販売(以下、「事業者」という)
2.申出に係る取引の態様
訪問販売
3.申出の趣旨
申出人は○月上旬、自宅アパートにおいて事業者から派遣された訪問販売員(以下「販売員」という)より呉服の訪問販売の勧誘を受け、呉服セット(着物・帯・襦袢・羽織・草履が各1)を1セット購入した。
ところが、その後も事業者の販売員が毎月のように申出人の自宅を訪れるようになり、勧誘を断り切れない申出人は以後半年間で呉服セットを5セット購入してしまった。
しかしながら、申出人は1ルームのアパートに単身住まいで、かつ、年金の収入のみによって生活しているのであるから、常識的に考えれば1セット50万円ほどするような高級呉服を購入しなければならない正当な理由は存在しない。
また、単身者が着物等を購入する場合、その通常必要とされる数量は一人が使用するものとして1着(1セット)が限度と考えられるから、それを大幅に上回る6セットという数量を半年間という極めて短期間で購入した契約は、日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約であったといえる。
したがって、このような事業者の行為は、特定商取引法第7条第3項に規定されたいわゆる過量販売の禁止に該当するものとして違法性のあるものであるといえる。
以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。
4.その他参考となる事項
※参考資料として次の資料を添付いたします。
・契約書の控えの写し 6通
・日本訪問販売協会発行の『通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安について』 1通
以上
③ 購入者の近親者等が申出を行う場合
申出書
平成〇年〇月○日
〇〇都道府県知事 殿 ← ※”消費者庁長官”や”都道府県知事”でもよい
氏名 尾谷尾守 ㊞
住所 大阪市東淀川区〇〇1丁目-〇 〇号室
電話番号 080-****-****
下記のとおり、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、適当な措置を取られるよう、特定商取引に関する法律第60条に基づき、申し出ます。
記
1.申出に係る事業者
所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
名 称:株式会社オシツケ・リフォーム(以下、「事業者」という)
2.申出に係る取引の態様
訪問販売
3.申出の趣旨
申出人の母親は○月上旬、一人で暮らす自宅家屋において、事業者から派遣された訪問販売員(以下「販売員」という)の勧誘を受ける形で自宅家屋の床板のリフォーム工事を契約し、工事をおこなった。
ところが、その後も事業者の販売員が毎月のように申出人の自宅を訪れるようになり、勧誘を断り切れない申出人は以後半年間で、更に外壁の耐熱工事、屋根瓦の交換工事、風呂場のリフォーム工事を次々と契約してしまった。
しかしながら、申出人の母親が居住する家屋は築20年にも満たない物件であって、床板や外壁、屋根瓦、風呂場のリフォームが必要な状態ではなかったし、かつ、申出人の母親は年金の収入のみによって生活しているのであるから、常識的に考えれば1回の工事が100万円を超えるようなリフォーム工事を半年間で立て続けに行わなければならない正当な理由は存在しない。
また、住宅のリフォーム工事で通常必要とされる分量を著しく越えないものと考えられるのは原則として築年数10年以上の住宅1戸につき1工事が限度といえるから、それを大幅に上回る4回のリフォーム工事を半年という短期間で行った契約は、日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える契約であったといえる。
したがって、このような事業者の行為は、特定商取引法第7条第3項に規定されたいわゆる過量販売の禁止に該当するものとして違法性のあるものであるといえる。
以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。
4.その他参考となる事項
※参考資料として次の資料を添付いたします。
・契約書の控えの写し 4通
・日本訪問販売協会発行の『通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安について』 1通
以上
申出書の記載の要点
申出書の根拠法令
上記の申出書は特定商取引法第60条に基づく主務大臣等への申出に関する申出書の記載例となります。
なお、過量販売業者に対する特定商取引法第60条の申出手続の詳細についてはこちらのページを参考にしてください。
申出書の様式について
特定商取引法第60条に基づく申出で使用する申出書は法律で様式が定められています(特定商取引法施行規則第57条第2項)。
申出書の雛型は消費者庁のサイトからダウンロードすることが可能です。
▶ 特定商取引法の申出制度|消費者庁
▶ 特定商取引法第60条に基づく申出書(様式第五)pdf|消費者庁
申出書の提出先
特定商取引法第60条に基づく申出書は「消費者庁長官」もしくは「地方経済産業局長」または「都道府県知事」に対して提出することが必要になります。
なお、申出書の送付先(消費者庁・各地域の経済産業局・都道府県の担当部署)の具体的な住所についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
申出書記載の要領
特定商取引法第60条に基づく申出書には、法令で「申出人の氏名又は名称及び住所」「申出に係る取引の態様」「申出の趣旨」「その他参考となる事項」の4項目を記載することが義務付けられていますので(特定商取引法施行規則第57条)、この4項目については必ず申出書に記載しておく必要がありますが、申出書の様式(様式第五)ではこの4項目に加えて「申出に係る事業者」を記載する欄が設けられていますので、以上の5つの項目について申出書に記載する必要があります。
【特定商取引法施行規則第57条】
第1項 法第60条第1項 の規定により主務大臣に対して申出をしようとする者は、次の事項を記載した申出書を提出しなければならない。
一 申出人の氏名又は名称及び住所
二 申出に係る取引の態様
三 申出の趣旨
四 その他参考となる事項
第2項 前項の規定により提出する申出書は、様式第五によること。
①「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄の書き方
「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄には、申出を行う人の氏名と住所を記載します。
前述したように特定商取引法第60条に基づいて行政処分を促す申出をする場合は「申出人の氏名又は名称及び住所」を記載することが法律で義務付けられていますので(特定商取引法施行規則第57条)、匿名で申出することは基本的にできないと考えた方が良いでしょう。
なお、自分の氏名や住所を伏せて申出を提出することも不可能ではありませんが、その場合は申出の要件を満たさないため役所の方でも法律上”特定商取引法第60条に基づく申出”として受理することはできず、”単なる情報提供”として処理されることになるのではないかと思います。
なお、特定商取引法第60条の申出は「何人も」申出を行うことができますので、悪質商法の被害に遭った被害者だけでなく、上記の③の事例のように、その家族等から申出を行うことも可能です。
②「申出に係る事業者」の欄の書き方
「申出に係る事業者」の欄には、違法行為を行っている事業者の名称と住所を記載します。
この場合、事業者が法人(会社)の場合は登記簿上に記載されている業者の「名称」を、事業者が個人事業主の場合は「屋号」か「代表者の氏名」を記載します。
例えば、業者が株式会社の場合は「株式会社〇〇」と、業者が会社ではなく「悪質太郎」という人が個人事業主として営業しているものである場合には「悪質太郎」と、その悪質太郎が「悪質ファクトリー」と言う屋号で営業している場合は「悪質ファクトリー」と記載します。
③「申出に係る取引の態様」の欄の書き方
「申出に係る取引の態様」の欄には、違法行為を行っている業者がどのような態様で顧客と取引を行っているかという点を記載します。
特定商取引法で規制の対象となる過量販売はその販売の態様が”訪問販売”であることが必要となりますので、上記の事例では全て「訪問販売」と記載しています。
④ 「申出の趣旨」の欄の書き方
「申出の趣旨」の欄には、業者がどのような法律違反行為を行っているか(業者のどのような法律違反行為で被害を受けているか)を具体的に記載します。
上記の事例では、正当な理由がないにもかかわらず日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約を勧誘することが過量販売(次々商法)として禁止されている特定商取引法第7条第3項に違反している事実を理由として事業主に行政処分を求める文章にしています。
具体的には、上記の①②③の記載例の「しかしながら・・・」の段落でその契約を結ぶ「正当な理由がないこと」を説明し、「また・・・」の段落で通常必要とされる分量を著しく超えていること」を説明する文章構成にしています。
なお、どのような商品の分量が「通常必要とされる分量を著しく超えているか」といった目安については公益社団法人日本訪問販売協会のウェブサイトで解説させれいますので、上記の事例ではその目安に基づいて「通常必要とされる分量を著しく超えているか」という点を判断しいます。
※参考→過量に当たらない分量の目安 | 公益社団法人日本訪問販売協会公式WEBサイト
⑤ 「その他参考となる事項」の欄の書き方
「その他参考となる事項」の欄には、上記①~④の他に被害の事実を説明できるような事項を記載します。
基本的には被害の事実を説明できる事項であれば何を書いてもいいのではないかと思いますが、一般的には被害事実を証明できるような資料を箇条書きにしてその資料を申出書に添付することが多いようです。
上記の事例では、過量販売(次々商法)の具体的な契約内容と契約日等を明らかにするため業者から交付された契約書の控えの写しを、また過量販売の要件となる「通常必要とされる分量」の目安を説明するために公益社団法人日本訪問販売協会の作成した「通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安」について」を添付するということにしています。
なお、公益社団法人日本訪問販売協会の作成した「通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安」について」は同法人のウェブサイトからPDFファイルでダウンロードすることができますので適宜プリントアウトするなどして提出すれがよいでしょう。
※参考→http://jdsa.or.jp/wp-content/uploads/2015/03/quantity-guideline.pdf
ちなみに、後日業者を相手取って裁判などを提起する必要が生じた場合には、その証拠が必要となりますので、この申出書に添付する資料は”原本”ではなく”コピー”したもの(写し)を提出するようにしてください。
特定商取引法第60条に基づく申出制度はあくまでも同様の被害が拡大することを防止することが目的であって、行政機関が個別の被害者の救済のため代金の返還や契約の解除などを代行してくれるわけではありませんから、被害の損害回復については各被害者が個別に(多くの場合は弁護士などに依頼して)裁判などで対応するほかありませんので、証拠となるような資料の”原本”は手元に残しておく方が良いでしょう。