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過量販売・次々商法でクレジット契約をクーリングオフする方法

訪問販売において、日常生活で通常必要とされる分量を著しく超える商品やサービス(工事等)を購入させる悪質商法は一般に”過量販売”と呼ばれていますが、このような過量販売によって契約をさせられてしまった場合には、契約から1年を経過するまでの間であればその契約を無条件に一方的に解除することが可能です(特定商取引法第9条の2)。

たとえば一人暮らしの高齢者の自宅で羽毛布団を2セット以上購入させられたり、リフォームの必要がないにもかかわらず同じ住宅に何回もリフォーム工事を契約させられるといった被害については、その契約か1以内であれば購入者側で無条件に一方的に契約を解除することができるのです。

▶ 詳しくはこちら→ 過量販売・次々商法を理由として契約を解除する方法

ところで、この過量販売をクーリングオフによって解除した場合、代金を支払う義務は消滅しますから、この事例であれば羽毛布団の代金やリフォーム工事の費用を支払う必要はなくなりますし、仮に代金や費用を支払っている場合でも、その全額を業者から返還してもらうことが可能です。

しかし、これはあくまでも代金や費用の支払いを現金払い(一括払い)にしている場合の話であって、その支払いをクレジット会社の分割払いにしているような場合は異なります。

なぜなら、代金の支払いをクレジット払いにしている場合は「消費者と販売業者」との間の”売買契約(工事の場合は請負契約等)”と「消費者とクレジット会社」の間の”クレジット契約”の2つの契約が同時に結ばれることになるからです。

この2つの契約は法律上全く別個の契約として効力が発生しますから、販売業者との契約をクーリングオフによって解除(解約)したとしても、その契約解除(クーリングオフ)の効果は当然にはクレジット会社とのクレジット契約に影響を及ぼさないと考えられます。

その結果どうなるかというと、販売会社との間の契約をクーリングオフで解除(解約)したにもかかわらず、クレジット会社から解除したはず商品やサービス(工事)の代金の支払い請求がなされてしまうという不都合な問題が生じてしまうのです。

このような問題を回避するために設けられたのが”クレジット契約”自体を解約するクレジット契約のクーリングオフ制度です。

割賦販売法という法律では、過量販売で購入した商品やサービス(工事等)の代金・費用の支払いをクレジット払いにしている場合には、販売会社との間で発生した”過量販売”という事由をもって、その過量販売に基づいて結ばれた”クレジット契約”をクーリングオフ(契約解除)できるとする制度が設けられているのです。

そこで今回は、訪問販売における過量販売の代金や費用の支払いをクレジット払いにしている場合(クレジット契約を利用している場合)において利用することができる「クレジット契約のクーリングオフ」の手続きについて解説していくことにしましょう。

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過量販売を理由にクレジット契約をクーリングオフする方法

前述したとおり、過量販売において商品の購入やサービス(工事等)を契約してしまった場合において、その代金や費用の支払いをクレジット払いにしている場合には、その”クレジット契約”をクーリングオフ(契約解除)することが可能です(割賦販売法第35条の3の12)。

【割賦販売法第35条の3の12】

第1項 第35条の3の10第1項第1号、第2号、第4号又は第5号に掲げる場合において、当該各号に定める者(以下この条において「申込者等」という。)は、当該各号の個別信用購入あっせん関係販売契約又は個別信用購入あっせん関係役務提供契約であって特定商取引に関する法律第9条の2第1項各号に掲げる契約に該当するもの(以下この条において「特定契約」という。)に係る個別信用購入あっせん関係受領契約の申込みの撤回又は特定契約に係る個別信用購入あっせん関係受領契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等に当該特定契約の締結を必要とする特別の事情があつたときは、この限りでない。
第2項 前項の規定による権利は、当該個別信用購入あっせん関係受領契約の締結の時から一年以内に行使しなければならない。

この条文は一般の人には理解し難いと思いますが、「個別信用購入あっせん関係販売契約」とは業者から商品を購入した場合の契約を、「個別信用購入あっせん関係役務提供契約」とは業者にリフォーム工事などのサービスを依頼した場合の契約をいい、「個別信用購入あっせん関係受領契約」とはクレジット会社とのクレジット契約のことを指しています。

そして「第35条の3の10第1項第1号、第2号、第4号又は第5号に掲げる場合」とは訪問販売等におけるクレジット契約のクーリングオフの規定であり、「特定商取引に関する法律第9条の2第1項各号に掲げる契約」とは過量販売に関する契約のことをいいますから、この割賦販売法第35条の3の12の規定は過量販売でクレジット契約を利用している場合にはそのクレジット契約を解除することができるという条文になります。

 

① クレジット会社にクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付する

過量販売を理由にクレジット契約を解除(クーリングオフ)する場合は、クレジット会社に対してクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付します。

過量販売で「販売業者との契約」を解除(クーリングオフ)する場合において代金や費用の支払いをクレジット払いに”していない”場合には、”販売業者”にクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付する必要がありましたが(※詳細は『過量販売・次々商法を理由として契約を解除する方法』のページを参照)、支払いをクレジット払いにしている場合にその「クレジット契約」を解除(クーリングオフ)する場合には、”クレジット会社”に対してクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付しなければなりません。

なお、過量販売でクレジット会社に送付するクーリングオフ通知書(契約解除通知書)のひな型(記載例)はこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 過量販売を理由にクレジット契約を解除する場合の通知書の記載例

 

② 契約から1年以内に通知することが必要

過量販売におけるクレジット契約のクーリングオフ(契約解除)で通常のクーリングオフ(契約解除)と異なるのは、「契約から1年以内」に契約解除(クーリングオフ)の通知をしなければならない点です。

過量販売・次々商法を理由として契約を解除する方法』のページでも解説していますが、通常の訪問販売におけるクーリングオフ(契約解除)では契約書(又は申込書)を受け取ってから8日が経過するまでの間に契約解除(クーリングオフ)の通知を行う必要がありますが、過量販売においてはその契約から「契約から1年以内」に行えば有効に契約を解除(解約)することが可能となります。

③ 契約書を受け取った日ではなく、”契約日”から1年以内に通知する必要がある

なお、通常のクーリングオフ期間が「”契約書を受け取ってから”8日が経過するまで」と規定されている一方、過量販売のクレジット契約の解除の場合は「”契約の締結の時から”1年以内」と規定されていますので、過量販売に関するクレジット契約の場合は仮に契約書を受け取っていなくても1年が経過すると”過量販売”を理由とした契約の解除はできなくなりますので注意が必要です。

なお、この「契約日」とはあくまでもクレジット契約の契約日のことをいいます。

過量販売の代金の支払いをクレジット払いにする場合には、前述したように「販売会社との契約」と「クレジット会社との契約」の2つの契約が別個に結ばれることになりますが、クレジット契約をクーリングオフできるのは「クレジット会社とのクレジット契約」を結んだ日から1年以内ということです。

たとえば、過量販売に関する販売会社との契約が8月1日に結ばれていて、クレジット払いに関する契約を行ったのが8月5日であったとすると、販売会社との契約をクーリングオフ(契約解除)することができるのは翌年の7月31日の夜12時までとなりますが、クレジット会社とのクレジット契約については翌年の8月4日の夜12時までであればクーリングオフ(契約解除)することができるということになります。

なお、通常の訪問販売におけるクレジット会社に対するクーリングオフ通知書(契約解除通知書)は通知書を”発送”したときにその効力が生じるという規定がありますが(割賦販売法第35条の3の10第2項)(※詳細は→『訪問販売等でクレジット契約をクーリングオフ(解約)する方法』のページを参照)、過量販売の場合にはそのような発想の時点で効力が生じるという規定が設けられていませんので、契約日から1年が経過するまでの間にクレジット会社に”到達”していなければなりませんので注意が必要です。

⑤ 販売業者との契約を解除する場合はクレジット会社にクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付した後に別個に販売業者に対してクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付する

前述したように、過量販売に関する「販売会社との売買契約(又は工事等の契約)」と「クレジット会社とのクレジット契約」は全く別の契約となりますので、クレジット会社とのクレジット契約をクーリングオフ(契約解除)しても販売業者との契約は自動的にはクーリングオフ(契約解除)されません。

※この点、過量販売に該当しない通常の訪問販売に関するクレジット契約のクーリングオフ(契約解除)ではクレジット会社にクーリングオフ通知を送付するとそれに連動して自動的に販売業者との契約もクーリングオフ(契約解除)される”みなし規定”が存在していますが、過量販売の場合にはそのような”みなし規定”がないのでクレジット契約をクーリングオフしても販売業者との契約は自動的には解除されません。

▶ 参考 → 訪問販売等でクレジット契約をクーリングオフ(解約)する方法

そのため、過量販売に関する販売業者との間の商品の売買契約やリフォーム工事等のサービスに関する契約を解除(クーリングオフ)したい場合には、クレジット契約のクーリングオフ(契約解除)通知書とは別個に販売業者に対するクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を作成し販売業者に対して送付しなければならないので注意が必要です。

なお、この場合の順序としては、まず「クレジット会社」に対してクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付し、その後に「販売業者」に対してクーリングオフ通知書(契約解除通知書)を送付するというようにするのが原則的な手順となります。

後述するように、割賦販売法の第35条の3の12第4項~第6項の規定では、クレジット会社が立替金を販売業者に支払っていたりクレジット代金を購入者から受け取っているような場合における返金手続きを、クレジット会社とのクレジット契約が先に解除(クーリングオフ)された場合を前提に規定していますので、クレジット会社とのクレジット契約より先に販売業者との契約を解除(クーリングオフ)してしまうとお金の返金手続きが複雑化したり返金が受けられなくなったりする可能性があるので注意が必要です。

(※ただし前述したように契約日から1年以内という点に注意が必要なので、業者との契約がクレジット会社との契約より先になされている場合で1年が経過する直前にクーリングオフする場合はクレジット会社へのクーリングオフの前に販売業者へのクーリングオフを行う必要があることもあると思われます。)

クレジット契約をクーリングオフ(契約解除)した場合の効果

過量販売においてクレジット契約をクーリングオフ(契約解除)した場合には次のような効果が生じます。

① クレジット会社からのクレジット代金の請求がストップする

クレジット契約をクーリングオフ(契約解除)すると、クレジット会社は過量販売に関するクレジットの契約を行った購入者(消費者)に対して、そのクレジット代金の請求をすることができなくなります(割賦販売法第35条の3の12第4項)。

【割賦販売法第35条の3の12第4項】

個別信用購入あっせん業者は、申込みの撤回等があった場合には、既に商品若しくは権利の代金又は役務の対価の全部又は一部に相当する金額の個別信用購入あっせん関係販売業者又は個別信用購入あっせん関係役務提供事業者への交付をしたときにおいても、申込者等に対し、当該個別信用購入あっせん関係販売業者又は当該個別信用購入あっせん関係役務提供事業者に対して交付をした当該商品若しくは権利の代金又は役務の対価の全部又は一部に相当する金額その他当該個別信用購入あっせんにより得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない。ただし、申込みの撤回等があつた時前に特定商取引に関する法律第9条第1項又は第9条の2第1項の規定により当該特定契約の申込みが撤回され、又は当該特定契約が解除された場合は、この限りでない。

この場合、クーリングオフする時期によってはすでにクレジット会社から過量販売を行った業者に対して購入代金等の立替がなされている場合がありますが、たとえ販売業者に対して立て替え金を交付している場合であってもクレジット会社は購入者に対して「クレジット代金を支払え!」と請求することができなくなります。

クレジット代金の支払いを銀行引き落としにしている場合には、クレジット会社は引き落としの手続きを直ちに停止しなければならないことになります。

このように、クレジット会社に対してクーリングオフ(契約解除)の通知を行えば、悪質な業者の過量販売を原因としてお金を請求されることを防ぐことが可能となります。

※ただし、クレジット会社に対してクーリングオフ通知書を送る前に販売業者に対してクーリングオフ通知書を送付している場合(クレジット契約を解除する前に販売業者との契約を解除している場合)にはクレジット会社からクレジット代金の請求がなされることがあります(割賦販売法第35条の3の12第4項ただし書き)。

② 過量販売を行った業者がクレジット会社から立替金を受け取っている場合には、販売業者はクレジット会社に速やかにその受け取った立替金を返還しなければならない

過量販売を行った業者がすでにクレジット会社から立替金を受領している場合にクレジット会社とのクレジット契約がクーリングオフ(契約解除)された場合には、販売業者はクレジット会社に対してその受領した立替金を返還しなければなりません(割賦販売法第35条の3の12第5項)。

【割賦販売法第35条の3の12第5項】

個別信用購入あっせん関係販売業者又は個別信用購入あっせん関係役務提供事業者は、申込みの撤回等があった場合において、個別信用購入あっせん業者から既に商品若しくは権利の代金又は役務の対価の全部又は一部に相当する金額の交付を受けたときは、当該個別信用購入あっせん業者に対し、当該交付を受けた商品若しくは権利の代金又は役務の対価の全部又は一部に相当する金額を返還しなければならない。ただし、申込みの撤回等があった時前に特定商取引に関する法律第9条第1項又は第9条の2第1項の規定により当該特定契約の申込みが撤回され、又は当該特定契約が解除された場合は、この限りでない。

前述したように、クレジット契約がクーリングオフされるとクレジット会社は購入者(消費者)に対してクレジット代金の請求ができなくなりますが、この規定によってクレジット会社は販売業者から立替代金の返還を受けることができるのでクレジット会社が損失を受けることはなく、販売業者が不当な利益を受けるということもなくなることになります。

※ただし、クレジット会社に対してクーリングオフ通知書を送る前に販売業者に対してクーリングオフ通知書を送付している場合(クレジット契約を解除する前に販売業者との契約を解除している場合)にはクレジット会社からクレジット代金の請求がなされることがあります(割賦販売法第35条の3の12第5項ただし書き)

③ クレジット会社に支払い済みのお金がある場合は返還してもらえる

過量販売に関するクレジット契約をクーリングオフ(契約解除)した場合において、クーリングオフ(契約解除)するまでの間にクレジット会社に支払っているクレジット代金等がある場合には、クレジット会社からその全額の返金を受けることができます(割賦販売法第35条の3の12第6項)。

【割賦販売法第35条の3の12第6項】

個別信用購入あっせん業者は、申込みの撤回等があった場合において、申込者等から当該個別信用購入あっせん関係受領契約に関連して金銭を受領しているときは、当該申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。

前述したように、クレジット会社に対するクーリングオフによってクレジット契約がクーリングオフ(契約解除)された場合、販売業者は受領した立替金をクレジット会社に返還しなければなりませんが、販売業者がクレジット会社に受領した立替金を返還するかしないかに拘わらず、クレジット会社は購入者(消費者)に対して支払いを受けたクレジット代金を返金しなければなりません。

この規定によって、仮に悪質な業者が返金を拒んだ場合であってもそのリスクはクレジット会社が負い、購入者(消費者)が経済的な損失を受けないことになっているのです。

④ 販売業者に対して何らかのお金を支払っている場合には販売業者に対して返金を求めることができる

前述したように、過量販売に関するクレジット契約をクーリングオフ(契約解除)した後に、販売業者との契約(リフォーム工事などの契約)をクーリングオフ(契約解除)した場合には、販売業者に対して過量販売の契約に関して支払った金銭の全額を返還するよう請求することが可能となります(割賦販売法第35条の3の12第7項)。

【割賦販売法第35条の3の12第7項】

申込みの撤回等があった時以後、特定商取引に関する法律第9条第1項又は第9条の2第1項の規定により当該特定契約の申込みが撤回され又は当該特定契約が解除された場合においては、同法第9条第6項(同法第9条の2第3項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、同法第9条第6項中「金銭」とあるのは、「金銭(割賦販売法第35条の3の2第1項に規定する個別信用購入あっせん業者から交付されたものを除く。)」とする。

【特定商取引法第9条第6項】

役務提供事業者は、役務提供契約につき申込みの撤回等があった場合において、当該役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。

代金の支払いにクレジット契約を利用する場合、通常は代金の支払いはクレジット会社対して行うことになりますが、悪質な業者によっては代金の他に手数料や保証料などといった名目でクレジット代金とは別に金銭の支払いを求める場合があります。

そのため、そのような金銭の支払いがあるような場合に、販売業者に対してクーリングオフ(契約解除)することによりその金銭の返還を受けることができるとしたものです。

過量販売を行った業者に対して行政処分を与えたい場合

上記のようにクーリングオフできるような分量の過量販売を行った業者については、主務大臣に申出を行うことによって行政処分を与えるよう働きかけることが可能です。

業者に行政処分が出されたとしても行政機関が業者とのトラブルを積極的に解決してくれるわけではありませんが、業者に行政処分が出されることで業者側が代金の返金などに応じる場合もあるかもしれません。

そのため、業者との契約をクーリングオフしても代金の返還がなされないような場合には、行政機関に違法行為の申出を行うことも解決方法の一つとして有効といえるのではないかと思います。

なお、過量販売業者に対する違法行為の申出についてはこちらのページで詳しく解説していますので、過量販売を行った業者に何らかの行政処分を与えたいと考えている場合は参考にしてください。

▶ 過量販売・次々商法を行った業者に行政処分を与える方法