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業者が契約書の年齢・職業等の欄に嘘を記載させるのは違法

訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスにより、商品や役務(リフォーム工事やシロアリ駆除など)、権利(エステやゴルフクラブの利用権など)の勧誘を行う業者は、顧客との間で契約を結ぶ際、契約書に「年齢」「職業」「その他の事項」について虚偽の記載をさせることが法律で禁止されています(訪問販売等の場合→特定商取引法施行規則第7条4号、電話勧誘販売の場合→特定商取引法施行規則第23条4号)。

【特定商取引法第7条】

主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が(省略)次に掲げる行為をした場合において、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。
 1号~3号(省略)
 4号 前3号に掲げるもののほか、訪問販売に関する行為であって、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの

【特定商取引法施行規則第7条】

法第7条第4号の主務省令で定める行為は、次の各号に掲げるものとする。
 1号~3号(省略)
 4号 訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結するに際し、当該契約に係る書面に年齢、職業その他の事項について虚偽の記載をさせること
 5号~7号(省略)

これは、例えば代金の支払いにクレジット契約を利用する場合などに、そのクレジットの審査を通りやすくするために契約書や申込書に事実とは異なる記載をさせるような事例が代表的です。

このようなウソの記載を認めてしまうと、クレジット会社などはその嘘の内容の記載された契約書を資料として信用情報の審査をしなければならなくなりますから、クレジット会社その他の関係者に大きな損失が発生する可能性があるため、このような虚偽の記載をさせることが禁止されているのです。

そこで今回は、この訪問販売(キャッチセールス・アポイントメント含む)や電話勧誘販売の業者が禁止されている「年齢、職業その他の事項について虚偽の記載をさせる」行為には具体的にどのような態様のものがあるか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

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「契約に係る書面に年齢、職業その他の事項について虚偽の記載をさせること」の具体例

訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスやアポイトメントセールスの業者が契約書の「年齢」「職業」「その他の事項」の欄に事実とは異なる記載をさせる場合としては、前述したように代金の支払いをクレジット契約にしている場合に、そのクレジットの審査を通りやすくするために業者の担当者がウソの記載をするよう勧めるような事例が多く見受けられます。

例えば、訪問販売(キャッチセールス・アポイントメント含む)や電話勧誘販売の業者が、女子大生に高額な宝石の購入に関する契約を営業する場合に、

「女子大生って書いたらクレジットの審査が通らないかもしれないから職業の欄は”正社員”って書いておいた方がいいですよ」

などと言ってウソの記述をさせるような事例が代表的です。

なお、このようにクレジット契約の審査を通りやすくするためにウソの記述をさせる事例としては次のようなものが挙げられます。

※訪問販売(キャッチセールス・アポイントメント含む)や電話勧誘販売で代金の支払いをクレジット払いにする場合には、その業者との契約書(申込書)とは別にクレジット契約に関する契約を作成する場合がありますが、この「虚偽の記載」をさせる場合というのはクレジット契約に関する書面に虚偽の記載をさせるばあいだけでなく、業者との契約書(申込書)に虚偽の記載をさせる場合も含まれます。

そのため、クレジット契約の書類には事実を記載しても、業者との間の契約書(申込書)に虚偽の事実を記載するよう勧められた場合には、その業者は法律違反を犯しているということになります。

(1)”年齢”について虚偽の記載をさせる場合

・未成年者なのに年齢の欄に20歳以上と記載させる場合

・60歳以上なのに50歳代の年齢を記載させる場合

(2)”職業”について虚偽の記載をさせる場合

・アルバイト(又はパート)なのに「正社員」と記載させる場合

・年金生活者なのに「正社員」と記載させる場合

・夫がアルバイトなのに、配偶者の職業の欄に「正社員」と記載させる場合

・失業中なのに「正社員」や「アルバイト」と記載させる場合

(3)”その他の事項”について虚偽の記載をさせる場合

「その他の事項」とは、「顧客の信用能力についての情報」で前述の「年齢」「職業」以外に関する事項を指すというのが一般的な解釈ですが、「顧客の信用能力についての情報」に関係しない事項であっても、契約書に何らかの虚偽の記載をするよう求められた場合には、その業者の行為は法律に違反するものとなります。

「その他の事項」とは、顧客の信用能力についての情報(持家の有無、勤続年数、収入等)が中心であるが、特にこれに限定するものではない。

(経済産業省通達「特定商取引に関する法律等の施行について」平成25年2月20日14頁より引用)

例えば「持家の有無」や「勤続年数」「収入」などが挙げられますが、これらに限定されるものではありませんので、たとえば「スリーサイズ」などについても業者から虚偽の記載をするよう迫られた場合には、その業者は法律違反を犯しているということになるでしょう。

「顧客の信用能力についての情報」に虚偽の記載をさせる場合の具体例

・実際は賃貸に住んでいるのに契約書の「持家の有無」の欄に「持家」と記載させる場合

・入社して1年しか経っていないのに「勤続年数」の欄に3年以上などと記載させる場合

・年収が300万円しかないのに契約書の収入の欄に年収500万円と記載させる場合

・親がすでに亡くなっているのに、親が存命であることを前提とした記載をさせる場合

「顧客の信用能力についての情報」以外の情報について虚偽の記載をさせる場合の具体例

・実際は「B85/W75/H90」なのに3サイズの欄に「B80/W60/83」と記載させる場合

・高卒なのに「大卒」と記載させる場合

・持病があるのに「健康状態」の欄に「特になし」と記載させる場合

 

「契約に係る書面に年齢、職業その他の事項について虚偽の記載」をするよう勧められた場合の対処法

前述したように、訪問販売(キャッチセールス・アポイントメント含む)や電話勧誘販売で勧誘を受けた際に、契約書や申込書に事実とは異なる記載をするよう販売員から勧められた場合には、その業者は法律違反を犯しているということになります。

このような業者から勧誘を受けた場合に一番気を付けなければならないのは、このような業者との間では絶対に契約を結ぶべきではないということです。

このような法律違反を犯す業者は、契約書にウソの記載をさせても契約を結びたいと考えている会社ですし、仮にその契約がクレジット契約を伴うものであった場合には、本来であればクレジットの審査を通らない人にまで無理に契約をさせているということになります。

そのため、このような会社は自身の会社が利益を出せれば顧客やクレジット会社が損失を受けても構わないと考えていることになりますから悪質業者であることは明白ですし、何らかのトラブルが発生する可能性は極めて高く、仮にトラブルが発生した場合には絶対に交渉には応じないでしょう。

なので、契約書や申込書にこのようなウソの記載をさせる業者とは絶対に契約しないように注意してください。

なお、万が一このような業者と契約してしまった場合には、8日以内であればクーリングオフで契約を解除するか、それ以降であれば何らかの理由を付けて契約を取消す方が良いのではないかと思います。

▶ 訪問販売・電話勧誘販売による契約をクーリングオフする方法

▶ 訪問販売等でクーリングオフできない場合に契約を取消す方法

 

「契約に係る書面に年齢、職業その他の事項について虚偽の記載」をするよう勧めた業者に行政処分を与えたい場合

前述したように、訪問販売やキャッチセールス、アポイントメントセールスで契約をさせる場合や、電話による勧誘のあとに契約書にサインさせる際に、「年齢」「職業」「その他の事項」の欄に真実(事実)とは異なる記載をするよう業者が勧めた様な場合には、その業者は法律違反を犯していることになりますから、監督官庁にその違法行為を申出ることによって行政処分を与えることが可能です。

この場合には、業者の違法行為を記載した申出書を作成して監督官庁である都道府県や消費者庁に提出することが必要ですが、その場合の手続きの詳細についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 悪質な訪問販売・電話勧誘等の業者に行政処分を与える方法

▶ 契約書に嘘の記載を勧める業者の行政処分申出書の記載例