このページでは、訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールス含む)や電話勧誘販売において、業者が勧誘を受ける顧客の知識や経験、財産の状況に照らして不適当と認められる契約を勧めたことを理由として、監督官庁に違法行為の申出(告発・申告)を行う場合の申出書の記載例を公開しています。
※なお、具体的にどのような勧誘が「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘」に該当するかという点についてはこちらのページで解説しています。
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「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘」を受けたことを理由として行政機関に違法行為の申出を行う場合の申出書の記載例
(1)「商品等に関する知識や経験の不足」に付け込んで勧誘された場合
申出書
平成〇年〇月○日
東京都知事 殿 ← ※”消費者庁長官”や”地方経済産業局長”でもよい
氏名 珠佐蓮太郎 ㊞
住所 東京都八王子市〇〇1丁目 〇‐〇
電話番号 080-****-****
下記のとおり、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、適当な措置を取られるよう、特定商取引に関する法律第60条に基づき、申し出ます。
記
1.申出に係る事業者
所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
名 称:株式会社カモネギ害虫駆除(以下、「事業者」という)
2.申出に係る取引の態様
訪問販売
3.申出の趣旨
申出人は○月上旬、自宅において、事業者の販売担当者(以下「販売員」という)から訪問販売の態様によりシロアリ駆除に関する勧誘を受け、自宅家屋のシロアリ駆除のための薬剤散布及びダニ・ノミ駆除のための薬剤散布、その他蟻などの害虫の侵入を予防する薬剤の散布を依頼したが、その契約日の2日後にクーリングオフ通知書を送付する方法により契約の解除を行なった。
申出人がこの契約をクーリングオフした理由は、もともと申出人の自宅ではシロアリやダニ・ノミ等の害虫の被害に遭っていたわけでは無かったからである。
ところで、このようなシロアリやダニ・ノミ等の害虫に特別な知識がない顧客に対して、差し迫った害虫の被害があるわけでもないのに大規模な害虫駆除を契約させる行為は、「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘」として特定商取引法第7条第4号及び同法施行規則第7条第3号に違反するものであると思われる。
以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。
4.その他参考となる事項
特になし
以上
(2)「財産や収入に照らして不相応・不必要な支出」を強いるような勧誘をされた場合
申出書
平成〇年〇月○日
東京都知事 殿 ← ※”消費者庁長官”や”地方経済産業局長”でもよい
氏名 川佐連麻衣 ㊞
住所 東京都八王子市〇〇1丁目-〇 〇号室
電話番号 080-****-****
下記のとおり、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害される恐れがありますので、適当な措置を取られるよう、特定商取引に関する法律第60条に基づき、申し出ます。
記
1.申出に係る事業者
所在地:東京都江東区〇〇1丁目 〇番〇号 〇〇ビル〇F
名 称:株式会社カモネギジュエリー(以下、「事業者」という)
2.申出に係る取引の態様
訪問販売
3.申出の趣旨
申出人は○月上旬、自宅アパートにおいて、事業者の販売担当者(以下「販売員」という)から訪問販売の態様によりダイヤのネックレスその他の宝石類の購入に関する勧誘を受けた。
この勧誘に際しては、販売員が勧める宝石類はどれも1つ40万円を超える高額な品物ばかりであったため申出人は「そんな高いものとても買う余裕はありません」と告知して勧誘を断ったが、販売員は「ローンを組めるから大丈夫ですよ」「金やプラチナの相場は上昇していますから今購入しておかないと損しますよ」などと告知して購入を熱心に勧めた事実がある。
また、申出人が居住しているのは家賃4万円程度の公営団地であり、その世帯が低所得者であることは外見上明白であるから、この販売員はその世帯が高額な貴金属を購入する余裕がないことをあらかじめ認識したうえで勧誘に訪れているという事実も存在する。
しかしながら、顧客の財産や収入に照らして不相応・不必要な支出を強いる勧誘を行うことは特定商取引法第7条第4号及び同法施行規則第7条第3号で禁止されているものであって、このような事業者の販売員の勧誘は法律に違反する違法なものであると思われる。
以上のような状況であるため、事業者による同様の被害が拡大しないよう貴庁においてしかるべく対応されたい。
4.その他参考となる事項
特になし
以上
申出書の記載の要点
申出書の根拠法令
上記の申出書は特定商取引法第60条に基づく申出に関する申出書の記載例となります。
なお、特定商取引法第60条に関する申出制度の詳細についてはこちらのページを参考にしてください。
申出書の様式について
特定商取引法第60条に基づく申出で使用する申出書は法律で様式が定められています(特定商取引法施行規則第57条第2項)。
申出書の雛型は消費者庁のサイトからダウンロードすることが可能です。
▶ 特定商取引法の申出制度|消費者庁
▶ 特定商取引法第60条に基づく申出書(様式第五)pdf|消費者庁
申出書の提出先
特定商取引法第60条に基づく申出書は「消費者庁長官」もしくは「地方経済産業局長」または「都道府県知事」に対して提出することが必要になります。
「消費者庁長官」「経済産業局長」「都道府県知事」のどこに提出すればよいかという点や具体的な送付先(消費者庁・各地域の経済産業局・都道府県の担当部署)についてもこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
申出書記載の要領
特定商取引法第60条に基づく申出書には、法令で「申出人の氏名又は名称及び住所」「申出に係る取引の態様」「申出の趣旨」「その他参考となる事項」の4項目を記載することが義務付けられており(特定商取引法施行規則第57条)、また申出書の様式(様式第五)ではこの4項目に加えて「申出に係る事業者」を記載する欄が設けられていることから、以上の5つの項目について申出書に記載する必要があります。
①「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄の書き方
「申出人の氏名又は名称及び住所」の欄には、申出を行う人の氏名と住所を記載します。
前述したように特定商取引法第60条に基づいて行政処分を促す申出をする場合は「申出人の氏名又は名称及び住所」を記載することが法律で義務付けられていますので(特定商取引法施行規則第57条)、匿名で申出することは基本的にできないと考えた方が良いでしょう。
仮に「申出人の氏名又は名称及び住所」を記載しないで申出書を作成した場合(匿名で申出書を提出した場合)には、”特定商取引法第60条の申出”の要件を満たさないことになりますので、役所の方でも法律上”特定商取引法第60条に基づく申出”として受理することはできず、”単なる情報提供”として処理されることになります。
”特定商取引法第60条に基づく申出”として受理された場合には、申出を受けた行政庁には調査や必要な措置をすることが義務付けられますので必ず何らかの処分が出されることが期待できますが、”単なる情報提供”として処理される場合には行政庁に調査や措置を行う義務は発生しませんので、申出を受け取った行政庁が調査等を行うかはその申出書を受け取った役人の判断次第となります。
なお、特定商取引法第60条の申出は「何人も」申出を行うことができますので、悪質商法の被害に遭った被害者本人だけでなく、その家族や友人、親戚等被害者以外の人が申出書を作成して申出を行うことも可能です。
②「申出に係る事業者」の欄の書き方
「申出に係る事業者」の欄には、違法行為を行っている事業者の名称と住所を記載します。
この場合、事業者が法人(会社)の場合は登記簿上に記載されている業者の「名称」を、事業者が個人事業主の場合は「屋号」か「代表者の氏名」を記載します。
例えば、業者が株式会社の場合は「株式会社〇〇」と、業者が会社ではなく「悪質太郎」という人が個人事業主として営業しているものである場合には「悪質太郎」と、その悪質太郎が「悪質リフォームサービス」と言う屋号で営業している場合は「悪質リフォームサービス」と記載します。
③「申出に係る取引の態様」の欄の書き方
「申出に係る取引の態様」の欄には、違法行為を行っている業者がどのような態様で顧客と取引を行っているかという点を記載します。
上記の記載例では訪問販売による勧誘を受けた事案を例として挙げていますので「訪問販売」と記載していますが、その勧誘の態様に応じて適宜書き換えてください(※例えば電話による勧誘の場合は「電話勧誘販売」など)。
④ 「申出の趣旨」の欄の書き方
「申出の趣旨」の欄には、業者がどのような法律違反行為を行っているか(業者のどのような法律違反行為で被害を受けているか)を具体的に記載します。
上記の(1)の事例では、訪問販売(又はキャッチセールス、アポイントメントセールス)または電話勧誘販売においては、顧客の財産や収入に照らして不相応・不必要な支出を強いる勧誘をすることが禁止されているにもかかわらず(訪問販売等の場合→特定商取引法施行規則第7条3号、電話勧誘販売の場合→特定商取引法施行規則第23条3号)、団地住まいの主婦に高額な宝石類を販売しようと勧誘していることから「顧客の財産や収入に照らして不相応・不必要な支出を強いる勧誘」を行ったものとして監督官庁に行政処分を求める文章にしています。
※なお、具体的にどのような業者の態様が「顧客の財産や収入に照らして不相応・不必要な支出を強いる勧誘」に該当するかはこちらのページで詳細に解説しています。
▶ 顧客の知識・経験・財産の状況から不適当となる勧誘の具体例
⑤ 「その他参考となる事項」の欄の書き方
「その他参考となる事項」の欄には、上記①~④の他に被害の事実を説明できるような事項を記載します。
基本的には被害の事実を説明できる事項であれば何を書いてもいいのではないかと思いますが、一般的には被害事実を証明できるような資料を箇条書きにしてその資料を申出書に添付することが多いようです。
もっとも、業者の違法性を明らかとするような証拠がない場合には上記の記載例のように「特になし」と記載しても構いません。
(※特定商取引法第60条の申出は単に監督官庁に違法行為があったことを申出るものであって裁判とはことなりますから、業者の違法性を証明する証拠を提出しなくても全く問題ありません)。